爺の機転
天井に近い道沿いの壁には格子細工の
かりに大曾根道之介に落ち度があったとすれば、その造りの一つひとつに嘆息していたからで、突然目の前に現れた老侍の
すなわち、みずからの
(なんと、おのれを犠牲にしてまで、この少年を
一度そう思念してしまうと、道之介は動けない。つまりは、興味をおぼえてしまったからである。この場での死闘は、道之介にとっては死地でもなんでもない。ほぼ難なく切り抜けることはできよう。
けれども。
戸口の老侍こそまさに難敵、と道之介は迷っていた。
しかも。
平馬も
驚いたのは三人の若侍たちであった。
機先を制するつもりが、いきなり相手の戦意が
そのとき、
「コホン」
と、
すると、若侍らは互いに目配せしてから、するりするりと土間に降り立ち、奥へと姿を消した。
ふいに左京衛門が平馬の隣に座った。
「竹沢左京衛門でござる」
ぼそりと道之介に向かって名を告げると、いきなり平馬の肩を両の掌で
「あ!」
「
「や!」
「その、や、あ、は、もうおやめなされ。・・・・おお、そうじゃ、
左京衛門が言うと、道之介は顔面に含羞の笑みをたたえつつ喋り出した。
「いえ、まことに、浪々の身なのです。・・・・お手前のほうこそ、失礼ながら、並々ならぬご器量の持ち主とお見受けつかまつりました。はてさて、そちらの杉森平馬どのは、一体、いかなる・・・・」
すると掌を道之介にかざした左京衛門が、待てとばかりに
「・・・・
意外な申し出に道之介はとまどい、つい平馬の顔をみた。
平馬は平馬で、左京衛門の意図ぐらいは見抜いている。大曾根道之介というあやしき者は、むしろこちらの手の
やみくもに
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます