平馬の隠し技
平馬を脇に置いて、
綺の機嫌がすこぶるいいのは、三本の尻尾がそれぞれに絡み巻き合って、太い
なかなかに、相手の
その日。
いつものように一人で出かける
「御免、御免」
と、大声を張り上げている人物が現れた。すばやく短刀を左手に納め、腰を落とした。
突然の攻撃にも柔軟に対処できる
〈始針の構え〉
であった。
おのれの
平馬は腰を落としたまま土間を伝い、引き戸の前でぼそりと一声を発した。
「あい、どなた様でございましょうや」
なんと平馬の口から出たのは、やや年輪を感じさせる
「・・・・ご主人様はご不在でございますのよ」
平馬得意の
童女、少女、娘、人妻、婆、老婆、少年、青年、壮年、隠居など、十数通りの声色をものにしている。人間嫌いの平馬だからこそ可能であったひたむきともいえる人間観察の賜物である・・・・。
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