第14話
『それでどうしますか? 弩門さんが望むのでしたら、今からでもご奉仕をさせてもらいますけど』
ロロアはそう言うと頬を赤くしながら、それでもどこか期待するような表情で、自分の頭部くらいはある乳房を揺らして弩門に近づこうとする。それを見て彼女の言う「ご奉仕」の意味を完全に正しく理解した弩門もまた顔を赤くして慌てて手を振った。
『いえ! その話はまた今度にしましょう! とりあえず今は朝食を買いに行きませんか?』
『……分かりました』
弩門の言葉にロロアが残念そうな表情で頷くと、弩門は胸を撫で下ろすのと同時に、大きなチャンスを逃したような複雑な表情を浮かべるのだった。
それから数分後。服に着替えた弩門は先程ロロアに言ったように外へ朝食を買いに行こうとするが、丁度その時にスマートフォンから電話の呼び出し音が聞こえてきた。
「この番号は……もしもし?」
『おはようございます、黒栖さん』
電話に出るとスマートフォンから昨日、弩門とロロアの取り調べを担当していたスーツ姿の女性の声が聞こえてきた。
「貴女は昨日の……ええっと……?」
『そう言えば昨日は急な取り調べで名乗っていませんでしたね。私の名前は三嶋愛子と言います』
弩門がスーツ姿の女性の名前を知らないことに気づくとスーツ姿の女性、三嶋愛子は電話の向こうで苦笑をして自己紹介をする。
「失礼しました、三嶋さん。……それで今日は一体どの様な用件ですか?」
『はい。今日は極めて急で重要な案件でお電話をさせてもらいました』
弩門が質問をすると三嶋は顔が見えなくても分かるくらい真剣な声で言い、それを聞いた彼は思わず息をのんだ。
「極めて急で重要な案件? それって何ですか?」
『……単刀直入に言います。実は昨日、私達は黒栖さんの
「えっ!? マジで?」
三嶋の言葉に弩門は思わず驚きの声を上げる。外で星門を出した以上、封院のことを調べられるのは覚悟していたが、まさか自分もまだ詳しいことが分かっていない秘宝の事が知られるとは予想外であった。
「俺の秘宝って、もしかしてあの黄金の鎧のことですか?」
『黄金の鎧……! ええ、そうです。黒栖さんの秘宝の名は厄病呪毒千眼金鎧。第十三級D種に分類される秘宝です』
「だっ! 第十三級D種……!?」
スマートフォンから聞こえてくる三嶋の言葉に弩門は絶句する。
『その様子だと、第十三級D種という言葉がどんな意味を持つか知っているようですね』
「は、はい。その秘宝が世界に与える影響力とそれが発揮される条件のことですよね?」
一から説明をする手間が省けたと安堵する三嶋の言葉に弩門は頷き、以前インターネットで調べた知識を思い出す。
秘宝は全てが世界に何らかの影響を与える強力な力を持ち、その力は一番下の第一級から一番上の第十三級の十三段階に分類され、更に秘宝の力が発揮される条件は大きく四つに分けられる。
使用者が手に持って使う事で初めて力が発揮される「A種」。
秘宝自体が意思を持っているが、使用者の協力がなくては力が発揮されない「B種」。
秘宝自体が意思を持ち、使用者の協力がなくても力を発揮できる「C種」。
秘宝の意思の有無は関係無く、ただそこにあるだけで力が発揮される「D種」。
「そ、それで確か、第十三級D種といえば……」
秘宝の力に関する知識を思い出した弩門の声は僅かに震えており、三嶋は電話の向こうで頷き答えた。
『はい。ただそこにあるだけで世界を七度滅ぼす、あるいは新創する力を持った秘宝のことです』
「………!」
三嶋から告げられた事実に弩門は何も言えなかった。まさか昨日自分に宿った封院がそんなとんでもない秘宝を守っているだなんて夢にも思わなかったからだ。
『それで今日は黒栖さんの秘宝に関することでご相談があってお電話をしました』
「……一体何ですか?」
突然告げられた衝撃の事実に、弩門は朝から疲れ切った表情となって三嶋の言葉に返事をした。
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