第4話
「ん? あれは?」
「……つまり
弩門の言葉の通り、封院所有者はダンジョンアイランドから外へ出ようとしなければ、基本的に何をするのも自由であった。それでもいくつかの規則は当然存在しているが。
書類を一通り読んだ弩門は、次に封筒と一緒に床に置かれていた小さな箱を手に取って開ける。箱の中身はシンプルなデザインのスマートフォンであった。
先程読んだ書類にはスマートフォンの説明も書かれており、このスマートフォンは単なる連絡手段ではなく、ダンジョンアイランドでのみ使用できる電子マネーを扱う為の機器であった。すでにスマートフォンには十万円相当の電子マネーが振り込まれており、電子マネーは毎月十万円振り込まれるだけでなく、更に追加されることもある。
追加の電子マネーを得る主な方法はダンジョンアイランド内にある研究施設で封院の研究に協力することで、他にも自分の封院内で得られた物を他の封院所有者に売ったり、自分の封院を観光客に開放して入場料を取る封院所有者もいるらしい。
「ダンジョンアイランドで暮らすだけで毎月十万も貰えるって……。封院所有者って凄いんだな。……まあ、とりあえず」
弩門はそう呟くと早速スマートフォンを起動させ、すぐに通販サイトで自分が着る服を三着程注文した。いつまでも今の囚人服のような服を着ているわけにもいかないし、この格好のまま外へ服を買いに行くのも抵抗があったからだ。
通販サイトの店はダンジョンアイランドの中にあり、三時間以内に配達されるというメッセージを確認した弩門はスマートフォンの電源を切る。
「さて、と。それじゃあ、服が来るまでにいよいよ封院所有者の力を確認するか」
自分の中にある封院所有者の力を確認しようとする弩門の声は心なしかワクワクしているように聞こえた。
「まずは……っ!」
弩門が大きく息を吸ってから意識を集中させると次の瞬間、彼の身体から光が放たれた。そして光がおさまるとそこには先程の囚人服のような服とは別の格好をした弩門の姿があった。
「おおっ……!? 本当に姿が変わった。まるで変身ヒーローになった気分だ」
弩門は自分の格好が変わった事を確認して思わず感動の声を出す。
「これが俺の
霊服。
封院所有者の身を守る為の
着用すれば常人を遥かに超える身体能力だけでなく、霊服ごとに異なる特殊能力が得られる。しかし霊服の主な原動力は封院が流れてくる力なので、封院の中でないと完全な力を発揮出来ず、逆に封院の中心地にいれば限界以上の力を発揮することが出来る。
(R P Gでダンジョンのボスがダンジョンの奥から出てこないのはこれが理由か)
以前インターネットでこの霊服の説明文を見た時、弩門はそう思った。
「……でも何だかコスプレみたいだな?」
霊服を着た弩門は、黒い軍服の上に黒いフード付きのマントを羽織って顔には両眼と口の部分に丸い穴が空いた埴輪のような白い仮面を被った格好をしており、シャワールームの前にある脱衣所兼洗面台の鏡で自分の姿を見た彼は少し恥ずかしそうに呟いた。
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