カクコン7 『遺書』
ハロー。ハロー。美澄です。
今日も電波は良好でしょうか。
前回からお付き合いいただいている皆様、ありがとうございます。
前回はカクコン7に投稿させていただいた『ウェディング・ベール』と『隣の席の魔法少女。』について書かせていただきました。
今回は、『遺書』について書こうと思います。
大変胸糞悪い話とネタバレを含みますので、もし苦手な方いらっしゃったら先にお読みいただくかブラウザバックしてください。
わたしのなかで、『遺書』の根底にあるのは、いじめについての正義感の所在なんですよね。
被害者意識と加害者意識というか……言語化が難しいですね。
ニュースで、いじめられている人が自殺しましたと聞くと、いじめている人が死ねばいいのにという声を聞きます。
反対に、いじめられている人にも問題があった、という声も聞きます。
なにが正しいのでしょうね。
海外では、いじめに関して、いじめられている人をカウンセリングするのではなく、いじめている人をカウンセリングするのだと聞いたことがあります。
(ソースが無くてすみません…)
批判したいわけではないですが、日本とは逆ですよね。
価値観の違いだとは思いますが、今のいじめ問題にもし光明が差すとしたら、視点を変えることではないかと思いました。
自作の話に戻ります。
まず、この物語のなかには正しいであろう人間は一人もいません。
主人公も、九堂くんも、担任の先生も、クラスメイトも、登場人物全員自分のことしか考えていないんですよね。
主人公は最終的に子猫を手にかけるし、九堂くんは主人公に手を出すことで自分に降りかかる苦難から逃げようとしている。
担任とクラスメイトは見て見ぬフリをするか、九堂くんの背中からこの状況を楽しんでいる。
書いていてまったく酷い話だなと思います。
主人公が自殺した九堂くんに対して、「――自分だけ、被害者ぶりやがって。」と思います。
これは後に書かれている、九堂くんに公園でボコボコにされたあと、九堂くんがポツリと「生まれてこなきゃよかったのに……」と呟くことから繋がってます。
主人公はその時の九堂くんからなにかを感じ取って、九堂くんの『遺書』としています。
その九堂くんの「生まれてこなきゃよかったのに……」のセリフですが、これは元々九堂くんが言ったものではないです。
九堂くんには医者の父親と、PTAをしている母親がいます。
二人はあまりうまくいっていないのと、教育ママの母親は九堂くんにあたりが強いです。
九堂くんの成績優秀だった背景には、常に母親の影がありました。ところが、彼の成績が伸び悩んだのをキッカケに、母親のDVが始まります。
そして、九堂くんを散々責め立てたあと、「あんたなんか生まれてこなきゃよかったのに……」と言い、泣き出す。
その度に九堂くんは公園に逃げ、コンクリート製の山の遊具の中で過ごすようになります。
九堂くんの逃げ込んだ先が穴の中で、体を抱くようにして震えてるシーンを差し込んだのは、母親を象徴したものでした。
ひょっとしたら、九堂くん自身も人生をやり直したいと願っていたのかもしれませんね。
主人公を虐げることと、子猫を愛することで九堂くんは心のバランスを取っていたのですが、そこを主人公に見つけられてしまい居場所を失いました。
その後、不良グループに身を置くものの、彼の心を癒せることもなく、彼は自死を選びます。
主人公と九堂くんは表裏一体です。
主人公も、いじめられていると親に言えない。
あまり親子関係が良好ではないのが見え隠れしています。
立場が違えば、主人公が九堂くんをいじめていたかもしれません。
そして、主人公は九堂くんに受けた傷を抱えて、九堂くんに暴行されたのを建前に子猫を殺します。
あくまで「建前」です。
おそらく、多くの人は自分を虐げてる人間が消えたとしたらホッとすることでしょう。もしくは優しい人であれば同情もするかもしれません。
ただ、主人公が思ったのは、「――自分だけ、被害者ぶりやがって。」でした。
そこから、公園の一角でスコップの塗料が剥げるまで穴を掘り、餌も与えず飢え死んだ子猫を埋めます。
おそらく、主人公はサイコパスですね。成長が怖いです。
九堂くんのいじめが無くても、なにかしらやってしまうような気もします。
一応子猫が死んだ描写として、主人公が纏わり付いてくる虫を「五月蝿い」と言っていて、ハエが集っていることをこっそり差し込んだ感じです。
見破ってくださった方さすがの観察眼です。ほんとびっくり。
こうして『遺書』という作品が成り立っています。
九堂くんの背景を書くと、きっと違った物語になっていたかと思います。
でも、同時に九堂くんが可哀想なお話ではないなと思いました。
読んでいる方々にいじめを肯定させてしまうような話は違う気がするからです。
わたしは、DVを受けていたから、DVをしていいなんて思いません。
九堂くんが母親から受けた傷を、主人公にぶつけていいとは思わないです。
この作品を読んでくださった読者の方に、何かを考えるきっかけになってもらえれば、この物語を書いてよかったと思います。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
それではまた次回。
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