第六話 魔力剣披露!!!

 カッコつけて、宣言した俺は自分の勝利を疑わなかったが周りの参加者の反応は違っていた。


「おい田舎野郎っ魔具なんか使いやがってそこまでして勝ちてぇか」

「ガラハッド卿、ルール違反したんだそいつは当然失格だろ?」

「引っ込めーー」


 ラルトの模擬戦を、観ていた取り巻き連中達が物申し始めた。

 その流れは、周囲に伝染し俺の試合を観ていた他の者までもが俺を排斥しようと声を上げて訴え出す。

 試験官を務めるガラハッドは、事態を収集すべく俺のもとへと歩み寄ってきた。


「先刻の『身体強化』魔法による詰めは素晴らしかった。動作がスムーズだったことは相当君が鍛練を積んだのだろうことが伺えるものだった」


 ガラハッドが俺に称賛の声を掛けてくれたが、ならば何故少し残念そうな顔を浮かべるのか俺には分からなかった。

 しかしその態度も次の彼の言葉ではっきりとする。


「初動、君は禁じられた武器を用いた。これは戴けないな、このカルランでは魔具は禁止されている。その理由は個人の実力を測る上で魔具は正確な実力を測るのを阻害する恐れがあるからだ。おそらく君はこの中でも指折りの実力者だろう。これがもしも通常の騎士団の入団試験であったのなら許していただろう。しかし円卓騎士団は国の護り手、規律を重んじえぬ者には入団する資格すらない」


 そう断言した。

 つまり言い換えれば、俺は試験官であるガラハッドの口から失格の烙印を突きつけられたことに他ならなかった。

 だがこうなることは想定内。

 

「すみませんがガラハッド卿、俺はズルなんて一切していません」

「何を言っている現に今君は禁止武器を使用したではないか、この目で確かに見たぞ」

「ガラハッド卿、彼の申していることは真です」


 俺の言葉を証明すべく、修練場の端でカルランを見学していた彼女ラファ=メンロナが模擬戦で使用が許され、参加者に支給されている剣を持ち急いで現れた。


※※※


「何よこれ…………」


 驚きの顔をしているラファを尻目に、俺は刀身が黒墨み地面に当てるだけでボロボロに砕け散ってしまうのを確認していた。


「やっぱりただの剣だと耐えきれないか。耐えて三十秒。まぁ技術を問うとなると剣の性能は優れた物を用意するわけないよな」

「えっだってそれには魔具のような性能は付随してないはず、なのに炎が出るなんて何をしたの?」

「簡単なこと、この剣に俺の魔力を纏わせただけさ。それでお願いがあるんですけど」

「お願い……?」

「多分ですが、これを使えばおそらく俺は魔具を使ったとでも批難され失格となるでしょう。そこで受付嬢さんに助け船を出して貰いたいんです」 

「いいですよ。その代わりどういった原理なのか教えてください。魔具とどう違うのかその辺りも詳しく」

「了解です、当然の権利ですから」


 しかし目を輝かせながら、光悦とした顔で迫る受付嬢に頼む人選を誤ったのではないかと少しだけ後悔し始めたのは約束を済ませた後であった。


※※※


「君、名は?」

「国立剣術学院、第四席ラファ=メンロナと申します。本日はカルラン見学者としてこの場にいますガラハッド卿」

「してラファ第四席、君はこの者が魔具を用いていないと何故断言できる?」


 ガラハッドが俺を助けてくれているラファを疑いの眼で見ており、その威圧的な眼力は見ている相手を萎縮してしまいそうだ。

 それでもラファは決して退かない。


「そちらの方は確かに支給された剣を受け取りました。私が証言します」

「ならばラファ第四席、君が持っている物も同じ剣だな?」

「はい。もしもに備え用意しておきました」

「これが何か手を加えていた場合、君にもその責任を負ってもらうことになるが大丈夫か」

「ラファ!そんなところであなた何してるの。止めなさい、このあとの人生棒に振りたいの?」


 周りの人々を押し退けて、メルトが舞台の上に登ってきた。

 言動から察するに、お互いは知り合い関係なのだと推察は出来たが、流石に酷すぎないかメルト……。

 と落ち込んでいた俺を気にする気配は微塵もメルトには無かった。ただ友達を心配していたのだから。


「だいじょ~ぶ。メルト安心して。ではガラハッド卿お願いします」


 心配するメルトに優しい言葉を掛けると、手にしていた剣をガラハッドに渡す。

 渡された剣を念入りに検分して、確かに細工されていない普通の物だとの意見を固めると俺に預けた。


「もう一度その剣でやってみせろ。出来ないとは言わせないぞ」

「ではしっかりとその眼に焼き付けてくださいね」


 深呼吸を行い、息を整え直す。

 こう集団の視線を一点に集めるのは、流石に気恥ずかしいが、だからと言って失敗は許されない。

 もし失敗すれば俺を助けてくれたラファの名誉も傷つけられるからだ。

 俺は彼女のためにも真剣に取り組む。


 ー形状記憶確認ー

 ー『火』魔力属性付与ー

 ー武器への最適化、ならびに外装コーティング完了ー

 ー《《魔力剣》》完成ー


 一つ一つ、本来なら簡略する箇所まで丁寧に魔力をただの剣に纏わせ、模擬戦で見せた物と同じ物の複製に成功する。


「これで終わりです」


 通常の剣を魔力剣へと変化させる全ての工程を完了させた剣には、炎が纏っており、俺が魔力剣を作る過程を一部始終見ていた者達からのどよめきの声で周囲は包まれた。


「どう言うことだ???確かにその剣には細工は一切無い普通の剣だったはず……」


 一番に驚いていたのは間近で見ていたガラハッドであった。

 彼は未だに目の前で起きた現実を受け止められていない様子で、それはまさに先程ラファが慌てふためいた時と重なった。


「ええですから俺はこの剣に魔力を纏わせただけです」


 その告白に一同は驚いた。


「魔具とは違うこの武器を俺はと呼んでいます。魔具とは魔石を媒介にして、武器に元々施させれていた魔法術式を展開、発動するものですから、これは根本から構造が違います。信じてくれましたかガラハッド卿?」

「あ、ああ流石にこれは信じるしかあるまい。ところでその技能どこで手に入れた?」

「夢です」

「……………分かった。言うつもりが無いのなら嘘などつくな、それかもう少しマシな嘘をつけ」


 嘘つき呼ばわりは流石に堪える。

 どうして誰も信じてくれないのだと叫びそうになるが、俺が逆の立場だとすれば当然の反応だろうと納得せざるを得なかった。

 これ以上言ったところで、変化は無いのだと師匠の時のこともあり、早々に諦めた俺は反論はしなかった。


「分かった。伝える気が無いのであればそれでいい。では二人とも下がってくれ。次に呼ばれた者は舞台の上に……」


 ガラハッドは俺の一件に時間を遅らせたことを反省し、すぐに次の模擬戦が始められるようにキビキビと動き始めた。

 俺はと言うと、舞台の階段から降りていくとメルトとシルバが待ち構えていた。


「ラファを巻き込むなんて、酷いよジー君」

「いいのよメルト。私も望んだことだし」

「だがジーク、驚いたぞ。まさかあの状況から一気にラルトに勝つとはな」

「そうだった。あの魔力剣だっけ、何よあれ凄すぎ。私にもっと詳しく教えて」


 メルトの食いつき具合は、新しい玩具を親から貰った子供が如きものであった。


「流石に今は無理だから、今度教えてあげるよ」

「約束だからね。じゃあ私も頑張って残って絶対にジー君に教えを請おうかな」

「おいおいちょっと待った、俺が残るの確定した訳じゃないだろ。不合格の線も有るわけだし」

「ハァ~何を言っているんだジーク。お前が選ばれないのであればおそらく、今回のカルラン合格者は誰も居ないだろう」

「それは間違いないわ」 


 シルバの言葉に同意し、隣にいたラファは激しく首を縦に振り自分も同じ考えなのだと主張していた。

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