第22話『第二次上田合戦〜上田城の戦い〜』

上田城攻めも終焉に差し掛かる最中、秀忠本陣がある染屋の台地の西方、朝霧にまぎれて、真田の偵察隊が現れた。


これを発見した大久保忠隣隊が、直様に迎撃体制を構えて「敵じゃ!撃てぇぇええ!」発砲をした。


真田も大久保隊の攻撃に反撃し、火縄銃を撃ちかけた。最早単なる偵察隊とは思えない程である。


「小癪なぁぁぁああ!」


大久保隊は猛然と打って出て、慌てふためき撤退を図った真田隊を追走した。暫くの間小競り合いが続き、次第と徳川の武将たちも加わり始めた。


劣勢となった真田は退却を強め、酒井家次などを筆頭に、徳川家臣団らも、「我らも続けぇぇ!!」と追撃に加わった。


押し捲くり、突き進む猛烈な攻撃を受けた真田であったが、上田城城下の近くまで引き上げることに成功していた。


丁度その時間と同刻のころ、秀忠本陣の北方にある山蔭より、突如真田の鉄砲隊があらわれ、本陣へ斉射を断行した。

 

この銃声は上田一帯に反響した。徳川諸将は、本陣の救援に戻るべきか、真田家を追撃の手を緩めるべきか否か、迷う事となっていた。

 

一方秀忠本陣から聞こえる銃声は、当然逃げる真田にも聞こえていた。


まるでそれを合図にでもしたかのように、真田は罠の張り巡らされ城下の中へと、驚くべき速さで撤退していた。


 これを目の前に見ては、「追わぬ訳には参らぬ!」「構わん!躊躇なく攻めこめ!」と徳川は城下へと雪崩れ込んだ。


意外にも逃げる真田を追っていると、容易に大手門に迄は追いつくことが出来た。


大手門へ肉迫した徳川は、勝ち誇った訳ではなく、あまりにも円滑に、手応えもなく城門前へ攻め寄せることが出来てしまったのである。


此れでは飛んだ拍子抜けである。


約十五年前の第一次上田合戦では、激戦であり、押し詰めた徳川が石垣を登ろうとすれば、その頭上から石塊が落下してきて、将兵の頭を打ち叩いた。


しかし今はどうであろうか?大手門の門は八の字に開門されており、真田の兵は次々にと入っていくのである。


「この機を逃してはならぬ!かかれぇえ!」


牧野隊、杉浦隊などが、真っ先に押し詰めて行った。しかし城内へと攻め込もうとすれば、左右の狭間や櫓等より、弓や銃に依り狙撃され、兵がますます減るばかりであった。


敵将らが撤退を考え、遂に兵を引き背を向けたとき、信繁が一隊を率いてあらわれたのであった。

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