第18話『秀忠進軍』
「父上の下知により我らは東山道依り、大坂へ向かう! 此度の江戸征伐は前田権大納言らの毀言である。皆の者謀叛人利家らを討ち取ろうぞ!」
「「「うぉぉぉぉおお!!!」」」
進軍を控え、大将である秀忠の言葉に諸将らの雄叫びが反芻した。
「殿、先ずは上田に籠る昌幸を叩きましょう」
「康政左様だな……」
秀忠の演説から一日が経ち、秀忠は江戸より進軍した。まずは軽井沢に到着することとなり、そこで一夜を明かした。
軽井沢にて
「真田の手勢は大凡6000。対して我らは約3.8万……兵力差は十分であるが如何にして之を攻めるか?」
「秀忠様、この兵力差を活かして攻め落としましょう」
と康政や土井利勝らは意見した。
「いやいや、上田は必ずしも攻めるべきに非らず。先ずは上田へ使者をさしむけ、開城を要求するべきと存ずる次第。今は一刻も早く上方を目指すべきかと」
と本田正信が意見した。
「正信殿今攻めずしていつ攻めるか!?かつて殿が上田を攻め、落とせなかった屈辱をお忘れか!!」
「表裏比興の昌幸にしてやられたのは忘れもしないが、今では無かろう。今は一刻も早い上方へ参上することが大切であろう?利勝殿」
「あの頃とは兵力も違う!我らに負ける要素など在らん!臆したか!康政殿も何か言われよ!」
「正信、殿へ手土産を持ってゆけば喜ばれよう。今は攻めるとき」
「……」
正信も折れる事なく、主戦派と避戦派は対立を激化させていた。遂に秀忠の仲介を必要とまでにしていた。
「止めぬか!私は正信の申す通り、真田に降伏勧告を行う。之に応じれば良し。応じなくとも、正信の申す通り然程重要ではない。一万の兵を残し進軍するだけのこと」
「……なる程お申しの通りに」
その日翌日、秀忠の陣に真田信幸が呼ばれた。
「信幸には、苦労のことであろう……」
秀忠のこの言葉は決して皮肉ではなかった。父と弟を敵に回し、戦わねばならない信幸の胸の内を察した、秀忠の心の優しさからのものであった。
「格別の事ではありません」
「伊豆守、お主の知っての通り、其方の父、安房守は上田に籠城した……」
「秀忠様……父が内府様の敵に回られた事を残念に思います……」
「そうだな……それでだ。向こうに着き次第、其方に昌幸へ降伏する様に(本多)忠政と共に行って欲しいのだ。頼めるか?」
「勿論に御座います。父をなんとしても、言いくるめて見せましょう」
「頼んだ」
秀忠は信幸との引見を終えた後、上田から東南十八キロ程にある小諸城に向けて、昼過ぎに兵を集め、進めた。
軍勢の諸将が続々と小諸城に入城をし、秀忠もまた少し遅れ小諸城に入城した。
上田城に籠る昌幸を降伏させる為の、使者となった忠政と信幸は小諸城に僅かな時間滞在すると、直ぐに父の居る上田城へと向かっていった。
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