第17話『第二の軍議』

田辺城の戦いが開戦してより数日経った頃、江戸征伐勢は長浜、佐和山、大垣、岐阜に別れて軍勢を休めていた。


毛利輝元、宇喜多秀家、石田三成、大谷吉継、小早川秀秋ら筆頭に有力諸侯により長浜城にて軍議が開かれていた。


「此度伏見城を攻め落とし、美濃に迄進出することがかなった。しかしながら尾張三河などは徳川方に付いており、中々にこの地域を制圧するのは難しい。」


江戸征伐軍の中心的存在の輝元が、軍議が始まってから開口早々に言った。


「毛利殿の言うように、尾張、三河の制圧は絶対条件……しかし江戸に軍を進めなければ、駿河遠江、甲斐、上田の真田など孤立勢力が撃破されかねん。」


「宇喜多殿。しかしながら仮にこれら勢力を無視して行軍した場合には挟撃されかねんぞ」


「秀秋殿。征伐に時間をかけ過ぎるのは其れはよろしくないのだ……太閤殿下の築かれた泰平の世から離れてしまう」


「治部少輔。太閤殿下の作られた戦なき世に執着するのは良いが、それは死に急ぐことになるぞ」


「刑部……秀頼様の為に身を破滅するのはまた本望ぞ」


「……そうか」


「父は家康方へ付き、田辺城に籠ったらしい……どの道直ぐに落城するだろうがな」


「忠興……辛いな。しかしそうすると茂勝殿らをお待ちするのかも決めねばなるまい」


「正家殿、之も世の中の条理よ。我らのみで十分であろう」


雑談も交えられつつ、方針は定まった。

東海道により江戸に進む、毛利輝元、石田三成、大谷吉継、島津義弘等々ら(以下東海勢)はそのまま東海道を進み当面駿府を目指す。


一方で、東山道を進む予定であった、宇喜多秀家、小早川秀秋、丹羽長重、織田秀雄等(以下東山勢)は当面の間は尾張三河の平定に努め、中山道を通って徳川方が進軍してきた場合に、要塞化されている関ヶ原に於いて、対峙することが決定された。


同時に尾張美濃伊勢守備隊も中山勢に組み込まれることとなった。


中山勢の尾張平定は清須城に籠城をする福島正則への対応、三河平定はほぼ全域が徳川方へ流れた者がメインとなる。


この軍議より三日後に進軍することとなる。

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