第13話『伏見城の戦い〜始〜』
互いに兵を進軍させてから暫く経ったある日の夜、先ずは伏見城で突然戦火は開らかれた。伏見城夜火が放たれたのである。
伏見城は天正大地震において、城内の瓦葺屋根の重みで建物が潰れて、大きな被害があった為に、城内の建物の多くは茅葺き屋根であった。
瓦葺屋根であったなら火はまだしも、茅葺屋根だったために、決死の消火も火の手が止まる事はなかった。昼夜燃え続け、城の三割程が焼け落ちる事となった。
しかしながら伏見城を屈服させるには至ることなく、伏見城よりの反撃も凄まじかった。
〜城内〜
「元忠殿敵の勢いは強く。幾ら太閤殿下の築城された伏見とはいえ、いつまで持つか。あの開城の要求呑むべきだったのでは……」
「家忠殿……家康様より任せられたこの城は、必ずや守り通す他あるまい。城を枕に討ち死する覚悟を」
「この内藤家長も同じく」
「「「必ずや殿に勝利を」」」
〜〜〜
着実に西軍の攻撃は高まり、兵の士気は下がっていた。昼夜問わず砲撃、銃撃され続け、城の各所はボロボロになっていく。
〜西軍軍議〜
「何時迄も攻撃に時間をかけられる訳ではあるまい。今此処で攻め込むべきぞ」
「兵は有限……此処で多く消耗するのは得策ではないぞ、秀家殿」
「輝元殿、何故か。内府は既に江戸を立ち、上洛していると聞く。これは宜しくない事態である」
「輝元殿の意見も結構。しかしこの秀秋は直ぐにでも強攻すべきと」
「……島津殿は如何様に」
「秀家殿……儂も其方と同じ意見である」
「「では強攻戦術を」」
〜〜〜
二千人近くいた兵力が大凡三分の一となった頃、小早川秀秋や宇喜多勢の強攻が行われた。火災により甚大な被害を受けた太鼓丸、松の丸は強攻より二日して落ちた。少数の兵で二日耐えたのは、太閤秀吉の城であったからだろう。
それより治部丸、名護屋丸への攻撃が始まった。既に落ちた部分からも兵が集い、最低でも四日は持つと考えられていた。
しかし西軍の勢いは止まることを知らなかった。門をぶち破り、兵の「ハァァァアア」という声は城内各地で聞かれた。
槍と槍のぶつかる音、火縄銃の銃声。人が撃たれた様な音。伏見を守る兵は更に減ってゆく。
三の丸にて守備を務める深溝松平家の家忠と大給松平家の近正は驚きを受けた。予定よりも大幅に早く治部丸と名護屋丸が落ちたからである。
三の丸に兵がなだれ込み、一部からは再び火が上がっていた。
之は、城内甲賀衆の深尾清十郎らが、『火を放ち、塀を壊し、寄せ手を引き入れよ。さもなければ、国元の妻子一族を悉く磔にす』と西軍より脅された為であった。
この時三の丸を守る家忠と近正は、直ぐに対応し、何度も敵勢を押し返した。しかし、五百名程しかいない彼らには、死に際が迫っていた。
両名は二百人程と共に西軍へ特攻した。
「「より多く、より多くの敵兵を撃つのだ!死は恐るるに足らず。敵に目にモノ見せてやれ!」」
両軍入り乱れての戦いは、激しさを増していた。家忠は多くの雑兵を斬り殺していた。その為疲弊が強く、その剣にも勢いが失われかけていた。
「ハァハァ…最早これまでか……」
周りの味方兵が倒れていく中斬り続けた。そして遂には数名の兵と共に囲われていた。
「敵将!!覚悟!!」
雑兵の声と共に無数の槍が家忠へと突き刺さった。槍を身に受けながらも最後の抵抗と雑兵数名を道連れとした
松平家忠……享年45
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