第4話『幸せな日常』


上洛から暫くしたとある日城内を勝手に散策していると、背の低いパッと見やせ身に色白くて、目が大きな特徴的な眉毛をした男を見つけた。


バレない様にこそっと隠れつつ、背後を通り抜けようとすると、「秀頼様お待ち下され」と女のような声で声をかけられた。


「げっ……」と意図せず声が出た。バレる予定はなかったのに、バレてしまった。


「そちは治部少輔!?」


まさか石田三成に此処で会えるとは思いもよらなかった。三成といえば三河狸に最後まで対抗してくれた忠臣だ。彼が関ヶ原を起こさずに生きていれば、どうにか豊臣の滅亡もなかったのではないかとも思うくらい、彼は有能であると買っている。


「おや?私をお分かりになるとはとても嬉しいことでございます」


「そちは ちゅうしん だからな!もっと力をつけて支えよ!」


「なんと嬉しいことでございます。しかし勝手に出歩かれると殿下が御怒りになりましょう。お帰り下され」


と言われている最中に、俺はさっさと走って逃げ去った。勿論直ぐに捕まり、傅役の前田利家に引き渡されることとなった。


この一件により三成は身を破滅することとなってでも俺を守る事を誓ったと言う。もしかしたらもしかしなくて、やり方を間違ったかもしれない。


「秀頼様また勝手に出歩かれ……二度と無きようにお願い致したく」


「爺や!外へ行きたいのだ!」


「なりませぬ!」


「遊び相手なれ!」


「お待ちください。孫四郎利長を呼べ」


と利家が言ってから暫くすると利長がやってきた。


「爺はこれにて。孫四郎代わりを頼む」


と言い残して何処かへと向かっていった。利家の背中はとても大きかった。


「利長にございます。なにをなさいましょうか?」


「ちゅうしん 利長!碁をするぞ!教えよ」


忠臣という言葉を覚えたてで使いたがる子供を演じる事を暫くしようと思う。


勿論誰にでも使う訳でなく、機会があれば、黒田長政、加藤清正、浅野幸政、池田輝政、吉川広家、秀秋の叔父さん辺りに使おうと思う。


当然三河狸などには言うつもりなどはない。


こうして利長と碁を打ち続けること、三時間現代で全く打ったことがなかった為、碁の指し方から教えてもらった。


覚えが良いらしくかなり褒められたのだが、多分お世辞なのだと思う。


こうして幸せな父に庇護され、伸び伸びと暮らす日常は過ぎ去ってゆく。

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