エピソード⑼魔法の馬車と
桜の木に囲まれ、遊具が立ち並んでいる。
ここは、花の家からすこし離れたところにある公園だ。
花は、ブランコに寄りかかっていた。
頬には涙がこぼれ落ちていた。
(伝わっていけない思いだった、秋人が話してしまったのかな)
花は叶うはずのない恋に悩んでいた。
長年悩み口をつぐんでいた花は涙が止まらなかった。
誰かが、砂場にお城をたてている。
まるであのときのようだ。
その頃学校では、花がいないことが話題になっていた。
先生達が学校の周りを探し、警察に届け出ようかという話にまで発展していた。
どうやら自宅にも連絡したのだが、帰っていなかったらしい。
花はまじめな優等生でサボったことなど一度も無かったため、余計にまわりに拍車がかかってしまっていた。
「あの桜さんが・・・」
玲もそれをクラスで聞いて、いても立ってもいられなくなった。
(一体どうしたら・・・)
そのとき、玲のクラスに少女が尋ねてきた、卯の花 砂由紀だった。
「お願い、花の所に行ってあげて」
砂由紀は玲にそうお願いした。
「けど・・・場所がわからないんだ!」
玲は焦ったように返事をした。
「何か手がかりを知っているはず、もう持っているかも知れないわ」
砂由紀は焦っている玲を落ち着かせるように慎重に話した。
玲は砂由紀の言葉にはっとした。
(そうだ、手紙-)
玲は昔のことを思い出した。
「ありがとう!」
玲は砂由紀にお礼を言った。
そして砂由紀は無事花を見つけたら、カボチャのパイを渡すようにお願いした。
玲はパイを持って走り出していった。
砂由紀は穏やかに手を振るだけだった。
「もう必要ないかも知れないけど・・・」
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