エピソード⑻ 衝撃


花は午後十二時になったのを確かめると、玲のいる教室までいそいでいた。

いつもこの時間が楽しみでたまらないのだ。花は嬉しげに小走りで道を歩いていた。


しかし、教室にたどり着く前に玲と遭遇した。


玲は神妙そうな顔をして廊下にたっていた。

「花・・・」

一言呟いた。


「玲どうしたの?」

花は驚いて聞き返した。


玲はポケットから手紙を取り出した。

「これ、花が書いた物だったんだな」


「!!?」

花は驚いた、そして何も話せなくなった。

ショックでとっさに走り出した。


「花!!!!」

玲は叫んだ。


(どうして、どうしてばれてしまったの!!!)


(ばれてはいけなかったのに!!!!)


繰り返し心の中で思ってきた、封じ込めてきた。それなのに-


花は無我夢中で走った、下駄箱にたどり着き、靴を履いて外は飛び出した。

校門にはちょうど業者のトラックが入ってきており、花は無我夢中で門の外に飛び出した。


玲は花が校門から飛び出していくところを窓から確認した。

とっさに校門まで駆けだし花の後ろ姿を追いかけたが、その先どこに行ったのかわからない。

完全に道を失っていた。


玲は追いかけたかったが、どこに行ったのかわからない花を、なんの手がかりもなしに追うのは難しいと感じた。


もしかしたら、家に帰ってしまっただけかもしれない。玲は冷静に一度そう考え学校に残ることにした。

夕方になれば、家にいるだろう。

そうしたら、いきなりで驚かせてしまったことを謝ろう。

そしてどうしてあの場所に呼び出したのか尋ねよう-


そう考え直し、一度学校に戻った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る