エピソード⑽午後12時のシンデレラ

花は鞄からある物を取り出してそれを眺めていた。

自分にとって何よりも大切な物だ。


そしてこの場所も-


「花!!!!!!」

そこに玲がたどり着いた。

泣いている花を心配しながら玲は、話した。


「全部思い出したよ、どうしてこの場所なのか」






その昔春爛漫、花びらがちる鮮やかな公園で、

花はこの砂場で大きなお城を作っていた。


花の近くにはお姫様ごっこをしている三人組の女の子がいた。

花も入れてほしかったが、三人は意地悪でとても気位が高く、けっして花を仲間に入れなかった。


花が仲間に入る条件は、召使い役になって大きなお城を作ることだった。


しかし、花はとても大きなおしろを作ったことで逆に目をつけられてしまった。


「ちょっと、そんなに大きなお城を作って、他に何も出来ないじゃないの!」


「それにそのきれいな靴、そんなの履いてもあなたはお姫様になんかなれっこないわ!」


「そうよ!」


三人は口をそろえて花にそう言った。

花はその日新しく買った青くきらきら光る靴を履いていた。

お姫様が大好きだった花に母がイメージされた靴を買ってくれたのだ。


三人は怒り、花を追いかけ回した。


花は片方の靴をおとしてしまい、靴は砂だらけになってしまった。


そこに不意に人影が現れた。


「なにをやってるの?」

そこに現れたのは幼い頃の玲だった。


「え・・・なに、て」

三人組は言いよどんだ、中性的で魅惑的だった玲は、まさしく王子様だったのである。


「お姫様ごっこだけど・・・」

三人のうちの一人がなんとか呟いた。


「お姫様は女の子を追いかけ回すの?」


三人はボッと赤くなって公園から飛び出していった。

玲は、砂だらけになった片方の花の靴の砂を払って、渡した。


「キミがお姫様だよ、私が王子様になってキミを守るよ」


「うん、ありがとう!」


この日も日が一番照っていた。午後12時の鐘が鳴っていた。

その瞬間花は魔法にかかったのだ。








花はかたほうの靴を握りしめて立っていた。


「泣かせてごめん、自分も今やっと本当の気持ちに気づいたんだ」

玲はゆっくりと話した。


「この場所でした約束覚えてるか?」

玲は花に尋ねた。


花は泣きながら頷いた「うん」


「ずっと一緒にいる、て」

花は言葉にしてさらに涙があふれ出した。


「そうだ、私も同じ気持ちだよ、ずっと一緒にいる」


花は玲に駆け寄った。玲は花を抱きしめた。


そのとき手紙が玲から滑り落ちた、そこには愛してるの5文字と公園の名前、そして午後12時のシンデレラよりと書かれていた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る