エピソード⑸それは突然に

それから時間が過ぎた。

砂由紀は部活の度においしいお菓子を作ってくれた、玲とも毎日ではないが、踊り場で話し遊んだ、授業や委員をこなし、しばらく平穏な日々が続いた。



しかし、とある日に事件が起きた。


(絶対にばれちゃいけないんだ)


花はその一新のもと、誰もいなくなった放課後にまた手紙を入れた。


「桜?」


「へ???」


そこに立っていたのは、フェンシング部の部長で玲の友達である椎名 秋人であった。


「まさか・・・その手紙は・・・」

秋人は驚いた顔をして呟いた。


「どうして・・・放課後でもこの時間までは誰もここにはいないはずなのに」

花は驚愕して呟いた。


そう、桜樺学園では18時以降帰宅部は皆帰ることになっており、唯一残っているのは部活生だけである。その部活生は下校時は夜になるので車通りの少ない裏門を通って集団で帰るのが通例だ。

よって部活が終わる時間はどの部も8時と決まっており、そもそも靴を持って部活に行くため、この部活の時間にこの下駄箱まで来る生徒はいないのである。

その上この下駄箱付近は空き教室であり、そこに用がある生徒はいないのだ。

そのため花は、声を失った。


「先生にたまたま、この下駄箱の横にある空き部屋に用を頼まれたんだ。4月から客間として使うから様子を見てきてほしいと・・・」

秋人も驚いた顔をしてそう返した。


花はあまりのことに瞬時にうつむいた。


秋人は、花が握りしめている手紙の封筒を見て話した。

「そのロッカー、玲へのか、ということはつまり、玲に手紙を出していたのは桜だったのか・・・」


「知ってたの?」

花はとっさに聞き返した。


「ああ、玲から聞いてるよ。いつも宛名がない手紙が届く、て、だから・・・」


「言わないで!」

花は秋人が言い終わる前に言葉を遮った


「え・・・」

秋人はその一言だけを発した。


「ばれちゃいけないの、秘密にしておいてほしい・・・」

花は張り詰めた様子で、切実にそう告げた。


「そうはいっても・・・」

秋人は言い淀んだ。


「お願い!!」

花は精一杯秋人に頼んだ。


最終的に花の気迫に折れた秋人はこう返した。


「わかった。誰にも言わない」


こうしこの話は終演を迎えた。

花はホッと胸をなで下ろした。

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