エピソード⑶親友の気持ち

「花大丈夫?」


「うん・・・大丈夫」


朝日が輝き、学園はホームルームを迎える直前となっていた。

心配そうに顔をのぞき込んだのは、花の友達の卯の花 砂由紀であった。

茶髪のセミロングの髪に、優しい表情をした、かわいらしい顔立ちのおっとりした少女だ。


高校に入ってできた、花の大切な親友だ。


「最近、眠れていないの?もし訳があるなら私には教えてほしいなあ」


「ありがとう、ごめんね」


「謝らなくても良いのよ」


砂由紀はいつも花の変化にいち早く気づき、察してくれる人物だ。細かいところまで気が利き、料理部の部長を任されている。


故に花がなにか隠し事をしているのは筒抜けであった。


(どんなに親友でも言えることじゃない・・・)


「うん・・・」

花はそう言うと押し黙ってしまった。


「これ部活で作ったの、よかったら食べて元気をだしてね」


そう言って砂由紀はクッキーを取り出した。ハートやクローバーの形をしたかわいらしいクッキーだ。


「わあ!すっごくおいしそう!ありがとう」

花の顔がとろけた。


それを砂由紀は大切な物を見るかのような表情で見守っていた。

花は自分の他に秘めた思いをもっている者がいることを知らなかった。

相手が大切だからその思いが伝わらなくても良いと思っていることを・・・


「早く元気になってね...」

沙雪が小さな声でつぶやいたのを花は聞こえなかった。




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