☆ 3rd Song ☆
「あの屋上軽音楽部にドラムが加入したって噂知ってるか!?」
ゔっ
昼休み。
佐々木の突然の発言に飲んでいた牛乳を少し吹いてしまったが話すのに夢中な佐々木は気づいていない。よかった。
「…屋上軽音楽部って?」
おそらくケン達のことだろうが初めて耳にしたこの名称に確信はないし、話を合わせるためにもあえて聞き返してみた。
佐々木とは入学式で隣り合わせになった以来、俺からは特に何を言うでもするでもないのに奴からよくつるんでくるのでいつもなんとなく行動を共にしている仲だ。
噂好きの佐々木は「よくぞ聞いてくれた」というような顔をして少し前のめりになり、その質問に答えた。
「 2 組の三沢と鷹里だよ。
あいつら軽音部を作ろうとしてるみたいだぜ!
それがよりによって鶴じぃに頼みに行ったらしくって、鶴じぃにバンドが組める人数が集まったら申請しに来いって言われたらしい。
1週間っていう期限付きで。」
「ふーん」
「っで!おもしろい話がよ!それを言われた三沢が鶴じぃに宣伝したいから練習場所を貸せって言ったらしく、鶴じぃは嫌がらせのつもりか屋上なら構わないって答えたらしい。これまた授業終わりから夕方 4 時までっていう条件付きで!
その日からあいつら屋上で練習はじめやがったってわけ!
鶴じぃも馬鹿だよなぁ…ろくにバンドかどういうものか知らねぇ癖に適当な条件付けて許可しちまうなんて。あと一人見つかればバンドは組めるし、屋上なんかで練習したらうるせぇに決まってるのにな!バンド組んだことねぇ俺でもわかるわ。」
「…そうだな」
「でも三沢はもっと馬鹿だよな!おとなしくしてりゃ平和に暮らせたのに頭もあの色だし、今回のこともあって鶴じぃには相当目付けられてるぜ。この学校で軽音楽部作ろうとするなんて宣伝なんてしなくとも生徒の耳にはすぐに行きわたるだろうし。何より、絶対に入ろうとする奴なんていねぇよな。
平和が一番!」
「…」
平和が一番…か
確かにそうだよな…トラブルになんて巻き込まれたくない。
高校生活の一時的な幸せなんかのためにそれ以外の高校生活やこれからの進路を危険なものにしたくないよな…
「…っにしてもドラムで入った奴ってどんな奴なんだろうな?
その演奏聴いたやつの話じゃあ、三沢のギターに負けず劣らずめちゃくちゃだったらしいがすげぇ楽しそうだったんだと。
三沢のギターといえばヘタクソで有名だよなぁ! 1 年のとき昼休みに集会台ひっぱりだしてきてその上で『ロックだぜー!』なんて叫びながらヘッタクソなギターかき鳴らして、ききつけた先生に追っかけまわされてたの今でも覚えてるぜ!あれはもはや伝説だよな!」
そういやそんなことあったな。入学して 1 ヶ月たったくらいのときか…
昼ごはん食べてたらグランドからすげぇ音が聞こえてきて、ほとんどの奴らが野次馬になってたな。
一緒にご飯食べてたはずの佐々木が真っ先に飛び出してったけど。
あれ、ケンだったんだな…
「そんな事件起こしてるのに今回認めてもらえたのって一緒に行って頼んだっていう鷹里のおかげなんだろうな。三沢とは真逆であいつ成績優秀な優等生で有名だもんな。口数少ねぇし表情も硬いからちょっとこえーけど。でも三沢の暴走止められるのなんてあいつぐらいだろうし、先生もあいつが部長だったら文句いえねぇだろうしな。」
そうか…ムネヨシの名前どっかで聞いた名前だと思ってたら成績の上位にいつも名前があったな。難しい名前だったから印象的だったんだよな。あいつ成績いいんだな。
佐々木は最初あれを「ワシザト」って読んでて、それを「ワシザトってやつすげーなー」とか大声で言うもんだから一緒に居るの恥ずかしかったけど。
「でも今回はその鷹里も三沢を止めずに同じように活動してるってのが興味深いよな。なんかあったのかな?」
「そうだな…」
「あぁー…っにしてもヘタクソなのに楽しそうな演奏ってどんなだろな?」
「楽しそうね…」
確かに楽しかった。
どんな言葉を使っても伝えられないくらいに…
「ま、いずれにせよ。命知らずではあるよな!」
「そうだな…」
命知らずだ。
もちろん命に直接関わるわけではないが、高校生活生命や進路に関わるだろうことは明らかだ。
「ほんとに、命知らずだよな…」
本当に…そう思う…
「んー?なんか柳!今日はぼーっとしてるよな。いつもぼーっとしてるけどいつも以上に!」
「そうか?」
確かにいつもぼーっとはしてるけどそんなはっきり言う佐々木もある意味命知らずである。
「なんかあったら言えよ!お前が悩んでるとなーんか気持ち悪いんだよな。」
「そうか、まぁ…ありがとう。」
「おぅよ!」
そういって佐々木は笑う。その後もたまたま行ったスポーツショップで隣のクラスの内村がバイトしてただの、今日の部活の朝練で外周してたら同じ猫がいろんな場所から回り道して自分たちの前に現れまくっただの
尽きることなく様々な話題を出す佐々木の声を BGM に昼休みの時間を過ごした。
そして今日も放課後。
俺はまたここにいる。
もう見慣れてしまった薄暗い階段の先にある鉄の扉。
扉のすりガラスから光が差し込んでいる。
薄っすら青い色も見える。今日も心とは裏腹にいい天気だ。
「はぁぁぁぁぁぁー…」
思わず出るのは深呼吸に見せかけた大きなため息。
「よし ! 」
取っ手に手をかけようとしたとき扉はひとりでに開く。
「えっ」
「あ!」
開いた扉の先にいるケンと目がばっちり合う。
思わず固まる俺には気づかずきょとんとした顔は一気に笑顔になる。
「セーラぁ!遅かったじゃあん!」
半分開きかけた扉を一気に開け放っていつもの大声で話すケン。
今日もうるさい。
「終礼終わってすぐに来たから早い方だとおもうんだけどな。」
「そーう?待ってるほうは長かったんだよー ! 今日は俺たち早く帰らないといけないからそれを伝えたくて。」
「え?そうなの?」
ホッ…
「今日はバイトがあってな。」
ケンの後ろからベースを担いだムネヨシが静かに入ってくる。
それに続いてケンも入ってきて屋上扉の鍵をかける。
「早めに伝えようとは思ったんだがお前のクラスがわからなかったんでな。伝えられなかった。」
「あぁ…うん。ありがとう。」
悪いが正直、今日の佐々木の話を聞く限りこいつらと知り合いだとは思われたくないからクラス知られてなくてよかった。
「俺らのアルバイトってのがなんと!ライブハウスなんだよー!二人で雇ってもらったんだー!」
「そう…」
「そうなんだ!今日は 17 時オープンだから早めに来てくれって言われてて…」
「ケン、そろそろ行かないと時間がやばいぞ。」
「げ!ほんとだ!早く行かないと杉本さんに怒られちゃう!杉本さんすっげー時間には厳しいんだ。あ、杉本さんていうのはライブハウスのオーナーさんですっごく優しくていい人なんだ。で、杉本さんも昔バンドを組んだりなんかしてて…」
「ケン!」
いつものマシンガントークが始まろうとしたところですかさずとめられる。やっぱりムネヨシはすごい。
「あ、ごめん!ムネヨシ!そういうことで今日の練習は終わり!ごめんね。明日はいつもどおりする予定だから…ってやばーい!!ムネヨシ!鍵!もう鍵返しに行く時間ないよー!やばいどうしよう!」
「知らん」
「えぇぇー!」
ムネヨシは静かにいらだった様子で先に階段を降りていく。
そんなムネヨシの後ろ姿にうわぁぁぁに近い叫び声を浴びせるケン。
そんな二人の後ろ姿をぼんやり眺めているとケンが突然叫ぶのを止め、俺を振り返った。
「…あ!セーラこのあと暇?」
「え、まぁ暇だけど…」
「じゃあこの鍵返しといてもらってもいい?鶴じぃに渡しといてくれたらいいから!ほんとごめんね!また明日ねー!」
「え、あ、おい!」
ひきとめる声もむなしくケンは屋上の鍵を強引に渡して脱兎のごとく階段を駆け下りていきやがった。
それにしても…
「なにホッとしてんだよ。俺は…」
ゆっくり話せないってわかってホッしてる。
何をいまさら。迷うことがある。
カバンに入れたスティックの所在を確認した。こんなもんなくなるはずないのにな。
俺がカバンから移動させない限り。俺がムネヨシに返さない限り。
「はぁ…」
今度こそ大きなため息をはいた。
とぼとぼと階段を降り切り、職員室までの廊下を歩く。
鶴じぃ苦手なんだよな。
っていうか得意なやつなんて居ないだろうな。
重い足取りで職員室に続く長い廊下を進む。
放課後ということで廊下自体に人気はあまりないが、外からはどこかの部活の声がする。
体育館への階段前を通りがかったときには体育館からの声が聞こえた。たぶんバスケ部の佐々木の声も混ざってるんだろうな。
職員室へたどり着くと開いている方の扉から中へ入った。
職員室なんて日直のときに学級日誌を届けに来たのと、たまたま国語の授業で提出物の回収係を頼まれて持って来たくらいで前を通ることすらほとんどないから職員室内の席順なんてわかるはずもなく、なんだったらどっちが前の扉かもよくわかっていない。歩いてきた方に近い扉から入ったもんだから鶴じぃまでの席は一番遠かった。
なぜそれがわかったかというと幸運なことに鶴じぃが席に座っている姿を発見できたからだ。っというか鶴じぃがいない可能性だってあったわけだから本当に幸運だったのかもしれない。
「失礼します。」
そういってなんだか重苦しい職員室に足を踏み入れる。
今はまだ部活の時間。ほとんどの先生が顧問を務める部活へ行っている中、部活が休みなのか担当の部活がないのか、ぽつりぽつりと座って仕事をする先生たちがいた。入り口に一番近い席に座る先生と一瞬目が合った。見たことはあるが名前は知らないその先生はこちらをあまり見ることのないまま俺の声に会釈で返事した。俺もその先生に会釈を返しながら机の間の道を通って鶴じぃのもとへ向かう。
まさか突然やってきた見慣れない生徒が自分に用があるとは思わず。そもそも俺の姿を目視することもなく。鶴じぃは自分のもとへ向かってきたことに気づかないまま書類を見続ける。
「鶴岡先生」
俺は鶴じぃの真後ろにたどり着いたとき嫌だなぁ怖いなぁって思いを抑えて声をかけた。
「ん?なんだ?」
見慣れない生徒をようやく目視し、自分に声をかけたのは間違いなくこいつで、こいつは間違いなく自分の名前を呼んだことを認識し、少し引いた様子で怪訝そうに俺を見上げた。
「あ、あの、これ、返しに来ました。」
俺は直接的な被害はなくとも嫌な噂にまみれている鶴じぃとの初のマンツーマン対面に緊張して元々の口下手を加速させながらケンとムネヨシに預かったカギを差し出した。
そのカギをまじまじと確認したあと、怪訝そうな顔のまま俺とカギを見比べた。
「ちっ、三沢か」
「え!?…あ、はい。」
鶴じぃは舌打ちをして、心底嫌そうにケンの名前を告げたあと俺の手から少し乱暴にそのカギを受け取った。
俺は反射的に返事をしていた。
「あいつはいっつもそうだな。ルールは守らない。人の話は聞かない。他人は巻き込む。そのくせ自分の要求だけは通そうとする。鷹里も巻き込んで何をやり始めたんだか。しつこく職員室まで大声出して来るもんだから適当に屋上貸してやるって言ったら楽器持ち込んで鳴らし始めて。…まったく、人のことを考えんクズだな。あいつはクズだ。
ま、どうせ1週間後にはあきらめておとなしくなるだろ。あんな問題児に付き合うバカはいないだろうしな。」
突然に始まる鶴じぃの愚痴、罵声。定年前の少ししわがれた声は止まることなく一気にはっきり言い切る。嫌味ったらしく、感情的で人をバカにしたような物言い。
確かに、否定できないところもある。それでも、やっぱり不快だ。
「お前2年か?」
「え!?あ、はい。」
突然、鶴じぃの関心は俺に向いた。
「お前も嫌なもんは嫌だってはっきり断れよ。自分の意見はしっかり持て!」
ズキッ…
「…はい。」
ちくっと心臓に何かが刺さった気がした。
それから鶴じぃがまた机に向き直ったタイミングで俺は鶴じぃにひとつお辞儀をしてから職員室を退室した。
それから俺は気づけば歩きなれた家路をとぼとぼと歩いていた。
行きかう車の脇にあるずいぶん前に舗装されたデコボコの歩道をぼんやりと歩く。
通いなれた道はぼんやりしていても歩けるほどに身体にしみついている。時々、寄ろうと思っていた本屋やコンビニを通り過ぎていることがあるけど。それでも家には勝手に帰れる。それほどに通いなれた道だ。
そんな道を20分ほど歩けば家に着く。ぼんやりしていたら30分ほどかかることもあるけど、寝すぎた朝は15分で学校にたどり着く。
道沿いには行きつけの本屋やコンビニのほかにも地元の人に愛される老舗スーパー、俺も苦手な内科や歯医者、おばちゃんが一人切り盛りするたこ焼き屋にさびれたスナックなんかも並んでいる。
そんな慣れ親しんだ地元の道を歩きながらぼんやりと頭に浮かぶのはあいつらのこと。
アルバイト…か。やっぱみんなやってるよな…
アルバイトなんて今時の高校生にとってそんな珍しいことではない。
ほとんどの高校生がアルバイトをしてるだろう。自分の小遣いのため、家計のため、出会いのため、社会経験のため…理由はそれぞれだろうけど。
かといってアルバイトをしていない高校生だっている。
あれだ!きっと一番近い同級生の佐々木がアルバイトをしていないからだ。
だからあの二人もやってないだろうって思ってて、でもアルバイトしてるって知ってきっと焦っただけだ。
焦った?なんで焦らなきゃいけないんだ?別にほかにもアルバイトをしていない高校生だっている。
別に何も俺だけじゃない。俺だけじゃ…
じゃあ…なんで俺はアルバイトをしないんだ?ただなんとなく学校へ行って適当に授業を受けて放課後少しゆっくりして帰って飯食って適当なテレビ見て風呂入って寝る。っでまた朝がきて学校へ行く…
アルバイトをするでもなく、部活をするでもなく、ギターを弾くでもなく、ベースを弾くでもなく、歌うわけでもなく。
ただなんとなく…心配をかけたくなくて…できるだけアクションを起こさずに顔色をうかがいながら…ただなんとなく過ごしている。時間が過ぎ去るのを待っている。
『自分の意見はしっかり持て!』
…俺は何がしたいんだろう。
「柳!」
その声にハッとする。目の前には家の扉。声の方へ振り向くと息を切らした人が少し焦った表情で俺の名前を呼ぶ。
「お母さん…」
俺の呼ぶ声でにっこり笑顔にかわる。
「おかえり」
いつも俺を迎えてくれるあったかいその声に俺も笑顔で返す。
「ただいま」
そういうとほっとしたような笑顔で答えてくれる。
帰路を急いだのかまだ少し肩で息をするお母さんが持つ、食材がたっぷり入ったスーパーの袋を自然な所作で手に取る。
「ごめんね。今日は少し遅くなっちゃったわね。」
小さくありがとうと言い俺にスーパーの袋を手渡し、そういいながら家の鍵を開けてくれた。
全然遅くない。いつも通りだ。いや、いつもより少し早いかもしれない。
きっと俺の姿が見えたから走ってきてくれたんだろう。
お母さんはいつもそうだ。子煩悩で一人息子の俺を少しでもひとりでいさせるのが嫌だったみたいで。
近所のスーパーでパートを始めてからも、こうやって俺よりも早く帰ろうとする。
決して口にはしないがその愛情は十分に伝わってくる。
そんなお母さんの思いを察してからは意識してお母さんのパート終わりの時間より少し遅く帰るようになった。お母さんにはきっとばれていないと思う。
それなのに今日はぼんやりしすぎて時間を気にせずに帰ってきてしまった。気を付けなければ。
お母さんは帰って手洗いをしてさっそく夕食を作り始めた。
自分も手洗いを済ませて家着に着替える。幼いころからしつけてもらった日課だ。
俺たちは二階建ての小さなアパートの一室に住んでいる。さすがに木造ではないが、そんなに最近できた建物でもない。けど俺とお母さんの二人が住むには十分な広さだった。
そこに必要最低限のものが詰め込まれ、まめで家事が得意なお母さんのおかげで常に清潔感が保たれている。
俺の部屋はクローゼット付きの5畳でベッドにテーブル、本棚だけのシンプルものだが、リビングと母の部屋である隣の和室の壁や棚には写真が多く飾られている。ここへ引っ越してきたときにお母さんが飾ったものだ。
「今日は学校どうだった?」
自室で着替えを済ませリビングのソファに座ってテレビをみていると夕食の支度をしながらキッチンからそう聞いてくるお母さんの声にゆるく答える。
「うん。別にいつも通りだったよ。」
「そう」
少し寂しそうに答えるお母さんがそんな俺を気遣ってか自分の話をし始めた。
テレビは見ているけど特に興味があるわけでもなく適当に夕方の報道番組にチャンネルを合わせ、テレビの内容もお母さんの話もラジオのように聞き流しながら適当に相槌をうつ。
佐々木といいお母さんといい、よくこんな俺のゆるい相槌にも関わらず、話題が尽きないなと感心しているとお母さんの話はパートの話になった。最近、俺くらいの年頃の男の子二人と知り合ったそうだ。人見知りをしないような明るいやつと礼儀正しいおとなしいやつらしい。二人とも大きな楽器を持っていて聞くところによると軽音楽部だそうだ。軽音するやつは似たようなやつばっかなんだなと聞き流していると、お母さんは切っている食材に目を向けたまま聞いてくる。
「柳はなにかやりたいこととかないの?」
その何気ないはずの質問に俺は心臓が凍るのを感じた。
別に今までも何度か聞かれてきたはずなのに、今日の俺が一番聞かれたくない質問だった。
少しの間が永遠にも感じた。わずかな異変を感じたお母さんが手を止めて少しこちらを振り返る。
俺はできるかぎり冷静に、普通に、答えた。
「うん。別にないよ。」
消え入りそうな声だったかもしれない。
だけどお母さんは「そう」とだけ答えてまた食材を切り始めた。
先ほどよりももう少し寂しそうな声に聞こえた。
そうやって俺はまたお母さんのその視線から逃げた。
しばらくの沈黙のあと、再びお母さんが話し始めたけど、話題は当り障りのないものになった。
それからの俺のゆるい相槌はからっぽだったかもしれない。でも、元々ほとんどないに近い相手を気遣う余裕はなかった。
『自分の意見はしっかり持て』
『柳はなにかやりたいことないの?』
あの日から考えないようにしていたこと。
〇〇のためだ、なんて言い訳をしながら避けてきた現実。
お母さんからの視線だけじゃなく、あいつからの視線だけじゃなく、
現実からもまたニゲタ。
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