第6話 同人活動、ドウカツ! 始まります!

 まひるさんが言う。


「そんなことないですよ~。美空家が上手くいっているのは、朝陽ちゃんのおかげです~♪」

「そーそー。弟くんのおかげであたしたち創作に打ち込めるワケだし、クオリティ爆上げしてるのも間違いないじゃん。自信持ちなさいって!」

「兄さん……いつも、ありがとう。夜雨、兄さんがいないと、何も、出来ないから……」

「え……」


 さらに夕姉や夜雨にもそれぞれ声を掛けられて、俺はちょっと戸惑った。いや、なんか恥ずい。やめろやめろ!


「な、なんだよ急に。いいからさっさと食べなさいって!」


 照れる俺を見てニマニマする三人。だーやめろやめろ! そんな目でこっちを見るな!


 なんて視線をそらしていると、突然まひるさんが言った。


「……ああ~! ママ、良いこと思いついちゃった~!」


 何かをひらめいたらしいまひるさん。この人はたまにこういうことを言い出す。

 俺たちの注目が集まる中で、まひるさんはやはり唐突なことを言い出した。


「美空家四人で、一緒に創作してみませんか~?」


『え?』、と俺と夕姉と夜雨の声が揃った。


「家族でサークルを作って、四人で協力して、同人活動をするんです~。サークル名は、ずばり『美空家』! まずは一冊、同人誌から始めてみるのはどうでしょう~? ママがイラストを描いて~、夕ちゃんが売り子さんをして~、夜雨ちゃんがボイスをつけて~、そして、朝陽ちゃんが物語を考えるの~♪ サークルリーダーは、もちろん朝陽ちゃん~!」


 は?

 え?


 今なんて言いましたかね?


 おいおい。

 おいおいおい! まひるさんがとんでもないこと言い出したぞ!?


「ちょ、ちょちょちょっと待ってくださいよ! え? 創作? 同人活動? 俺たち四人で!?  しかも俺が話を考えんの!? いやいやいくらなんでもそれは! 夕姉も何か言ってよ!」

「ママ、イイじゃんそれ! 面白そうっ! 売り子はどーんとあたしに任せてよっ! 最高のコス作ってバリバリ売ったげるからさ!」

「めっちゃノリ気やん!? お、おい夜雨っ」

「兄さんと……みんなと、創作同人……や、やりたい。夜雨も、が、がんばるっ!」

「夜雨までやる気なの!? ちょ、待ってって! みんなジャンルも違うしさっ、そもそも俺には創作なんて――!」


 そこまで言って、言葉が止まる。


 思い出していた。

 中学二年生の頃。俺はまだ創作活動をしていた。

 物心つく頃には親父の作ったアニメを観ていて、家では親父と母さんがいつもああじゃないこうじゃないとアニメの話ばかりしていた。気付いたら俺はノートに物語を綴っていた。

 やがて小説を書くようになり、中学に入るとネットにも投稿するようになった。大して人気が出たわけでもないが、自分の作った話を誰かが読んで、楽しんでくれるという実感はすごく嬉しかった。創作の楽しさを知って、どんどんハマっていった。


 けど、俺はもう――


「それじゃあ決定で~す♪ 今が4月の半ばだから……申請の間に合う約1ヶ月後、5月初め頃のイベントにしましょう~。ママがスケジュール組みますから、みんな、予定空けておいてね~♪」

「って俺まさに悩んでるところだったんですけど!? もう決定されたの!? 来月ぅ!?」

「そうと決まれば弟くん、メインヒロインのイメージ早めに固めといてよねっ。ママは衣装デザインね! 細部は後でよし! 大まかにスケ組むからさ!」

「夜雨も……役作り、したいから……兄さん、がんばって、ストーリー……作ってね……!」

「えええええっ!? いやっ、だけど俺素人だし、そんなっ」

「とゆーわけで~、仲良し家族サークル『美空家』、ここに結成です~! 私たちの熱い同人活動――ドウカツがんばりましょうね~♪ えいえい~!」

「「おー!」」

「いやだから待ってくれってえええぇぇぇぇぇぇ!」


 そんな俺の叫びもむなしく、その場で家族同人サークル『美空家』が爆誕。


 イラストレーターの義母・まひる。

 コスプレイヤーの義姉・夕。

 声優の義妹・夜雨。


 プロの創作一家に囲まれた俺は、三人を引っ張るリーダーとして、また支える長男として、そして物語を考える作家として同人活動に足を踏み入れることになったのだった! いやマジでどうなんの!?

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