第5話 朝からR-18で盛り上がる家族ってどう?


『いただきます!』


 家族四人が集まったところで、手を合わせてから朝食をとる。

 この場で話題になるのは、たいてい創作かアニメの話だ。この日は録画してあった我が父親の新作テレビアニメ『まほろばの郷』の二期を観ながらの話である。この作品は原作からアニメ一期まで、“すべての回がお風呂回”というとんでもコンセプトのラブコメ温泉アニメであり、ちょっぴり過激なサービスがよく話題になる。アニメじゃ当然湯気と謎の光だらけだ。円盤ブルーレイ解禁もちょっと話題だったりする。しっかし、こういったアニメを家族と一緒に観ることなんて普通の家じゃありえんだろうな。しかも朝からよ。


「あ~ん! ママのお気に入りの子が負けヒロインになっちゃいそうです~! こんな可愛くてえっちな子を泣かせるなんて……大地さんひど~い!」

「あの人ってラブコメでもエグい描写するときあるよねー。二回も田んぼに落とすことないじゃん。ここから逆転ないでしょ。やっぱ趣味合わないなー」

「この子……かわいそう……声、すごく可愛いのに……ひどいね……」


 アニメを観ながらワイワイと盛り上がりつつ、たまに家を追い出された我が父の悪態をつく女性陣である。いや、俺もアニメの価値観の違いとかいう理由で二回も離婚したあの親父のことは最低の人間だと思うから仕方ない。実際、俺がこの家に残ることを選んだのもあの人についていきたくなかったからだしな。……ま、他にも理由はあるんだけど。


 そうしてアニメがEDに入る中、まひるさんが切り出す。


「ねぇねぇみんな~。あのね、夏のイベントに向けて描いている本の表紙イラストなんだけど、見てもらえないですか~? 」


 そう言って食卓上にタブレットを取り出したまひるさん。

 その画面に映ったのは、服を脱いでいる半裸の女の子が手のみで胸元を隠す際どいポーズをとっているおそらくは成人向けのイラストだった。俺は思わず「ぶふぉっ」と驚く。


「ん~、構図はイイと思うけどさ、この服はちょっと平凡かな。これママのオリジナルのヤツの続編しょ? マンネリ回避に衣装変えるのオススメ。イメージ変わるでしょ! あと脱ぎ方も、エッチなヤツならもっとエッチなのがイイな~!」

「夜雨も……えっちで、可愛いと、思う……。でも、この子は、こういう誘い方をするのかな……? えっちでも、ほっこりするような……友達の子と一緒の絵が、いいかも、って……」

「ふむふむ~なるほど~。うん、ありがとう~とっても参考になりました♪ 朝陽ちゃんはどう~? どうでしょうか~?」


 ずずい。まひるさんの笑顔と半裸のエッチなイラストが迫ってくる!


「うわっ、ちょ、まひるさんそんな近づけないで! えーとその、い、いいんじゃないすかね!」

「わ~いありがとう~♪ ところで夕ちゃん、それは新しい衣装~? 『スラテン』のミアちゃんだよね~。とっても可愛いですよ~♪」

「や、夜雨も気になってた……。夕お姉ちゃん、に、似合ってる……可愛い……!」


 続いて話は夕姉の方に映る。それは俺も気になっていたところだ。


「んふふっ、二人ともありがとありがとっ! やっぱわかるっ? このキャラって下着つけてないからさぁ、衣装どう魅せるか悩みどころなんだよね。ニップレスするにしても、下品なのは好みじゃないしっ。ほらほら弟くんはどう? えっと……ちゃ、ちゃんと興奮する?」

「そういうの訊いてこないでくれる!? てか訊いてどうすんのさ!」

「だ、だって男性向けだし! プロとして恥ずかしい仕事出来ないしさ、求められてるものに応えないと。ほらほら見てよ~! 腋のところとか開いてるのどう? そそる? この家で男性目線で指摘くれるの弟くんだけだもん。マジ貴重な存在なの!」

「うおっ! や、やめなさいはしたないでしょ!」

「そうですよね~わかるわかる~♪ 朝陽ちゃんがいてくれるおかげで、ママのイラストも前よりぐーっと良くなったって、言ってもらえたりするんだよ~♪」

「う、うんうんっ。夜雨も、その、レビューで演技褒めてもらえる……こと、あるっ。兄さんが……練習、手伝ってくれた、おかげ……。R-15も……自信、ついてきた……♪」

「俺は夜雨がこっそりエッチな同人音声までやってたことはすごいショックだったよ!? 買ったけどな! つーかあなたたち朝からそういう話すんのやめなさい! さっさとメシ食ってまひるさんは風呂入って寝る! 夕姉と夜雨は学校行くぞ!」


『はーい!』と声を揃える美空家女子一同。


「ったく……そもそも俺のおかげとかじゃないだろ、みんなが頑張ってるだけっていうか、俺は適当なサポートしてるだけだしな……」


 一足先に食べ終えていた俺が食器をまとめていると、家族三人が俺の方を見た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る