ふふ、とフリルが笑い、細い指の裏を唇に当てた。

「高校生のカップルが大人になってもずっと続くなんて、ほとんどないのに」

 そんなことは重々承知している。

 友達と長年付き合っていくことだって、難しい。

 ましてや恋人なんて。

 これから先の人生、長い道のりで、今までとは比ではないほどたくさんの新しい出会いがある。高校生の頃に出会った人と一生、なんて、夢を見すぎだ。

 でも、仕方ない。

「あきこだって、そういうわたしのことを知ってもなお、好きなの?」

 紋子は決意を込めてぐっと傘を傾けて、少しだけフリルの傍に近寄った。ずっと触れてみたかったその白い頬に、指先で触れる。

「そうだよ、好きだよ!」

「あきこ。その紋白蝶の傘、かわいいね」

 

 雨はまだ、止まない。光るアスファルトの道を、紋子は踏み越えていく。

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フリルと紋白蝶 らいらtea @raira_t

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