第8話 女の賞味期限とは?
女としての賞味期限を決めるのは、一体誰だろう。
「十八歳から三十歳まで」と記載されたベティーの応募資格を見つめながら、瀬奈は悶々としていた。
こんな風に書かれていると、自分が賞味期限ギリギリの女だと言われているような気になってしまう。
二十代というのは、あくまでも一つの区切りで、男性から見た女の旬なのだろう。
若さはどんどん失われていく。
これ以上どうやって魅力を失えばいいのかと考えると、瀬奈の心は擦り傷を負ったみたいにヒリヒリした。
「そんなのへっちゃら!」と、笑える大人の女になりたい。瀬奈は強く願った。
ベティーというこの店の場合は、学生服を着せていたから、なるべく若い子がいいのだろう。そうは思っても不安だった。
若さはそんなに重要なのか。
女としての魅力を、年齢という数字だけで判断されたくないと思った。
今の瀬奈にとっては、結婚と出産が、旬を図る一つの物差しだった。それだけが幸せじゃないと頭では分かっていても、なんとしても確保したかった。
だから出産するなら最高でも、あと五年だ。
それ以上でも可能だろうが、出産のリスクが高くなるという話を聞いた事があった。
今は結婚も出産も遅くなった時代だけど、妹の他にも、二十五歳を過ぎてから同級生の結婚や出産の報告がどっと増えたり、SNSで知る事もあった。
祝福の気持ちは、いつからか焦りに変わっていった。
瀬奈は残り物のような気持ちになるのは、もう嫌だった。
劣等感を抜きにしても、昔から自分の家庭を築く事に憧れがあった。
家族とは、未だに心を許して話せない。
これ以上嫌われたくなくて笑顔で過ごすようにしていたが、そうしたからといって愛してもらえるわけでも、過ごしやすくなるわけでもなかった。
亮太の借金のせいで仕送りを辞めたりなんかしたら、余計に肩身が狭くなるだろう。
瀬奈は溜め息をついた。
妹は仕送りなんてしていなかったが、孫の顔を早く見せる事が出来た。
妹のように呼吸しているだけで愛されるような家庭こそ、本当の幸せだと瀬奈は信じていた。
借金返済とランキング1位になる為に、五年もかけられない。
時間が惜しい。
遅くても一年で決着をつけてやる。
瀬奈はそう心に誓った。
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