夢追い少女

「はぁ…はぁ…」

私は必死にウミハの後を追いかける。

「待…って…」

「来ないで、もう後少しで私は…」

ウミハは泣いていた。

「離れないと…私は…爆発しちゃうんだよ…?」

「そんなこと分かってるよ…!」

「だったらなんで…」

何言ってんだか。

「私も一緒に死ぬんだよ!」

「…!?駄目…来ないで」

「ウミハの最後を見れないくらいなら私は私は喜んで死ぬよ!だからさ…どうせ…死ぬなら…待って…」

ウミハは悪い奴じゃないのは知ってる。

全部私のせいだってのに、なんでアイツは。

私はただ、仲良くなりたいだけなのに。


「なるほどなるほど…イツさんおっけーですか?」

「聞きたいことは聞けた。早いとこ出るぞ」

「今どのへんにいるの?」

「いや…僕も知らない…カヅラさん分かります?」

「ん…あぁ…近くに狩人の都市があるけど」

「狩人の都市!?遠!!」

「どこだよ…」

「なんか…ごめんね、私のせいで…」

どうやら彼らはかなり遠い場所にいたそう。

「とりあえず外に出ましょうか」


「うぉー外だー!」

「空気ー!」

数日間閉じ込められていた3人はかなりテンションが高かった。半年も居た私と言えば、全く無反応である。

と言うよりかはあの事が気がかりになっている。

「ウミハ、爆弾は…」

「あ、そうじゃん…何とかして外せたりしませんか?」

「…多分、無理」

「…いや、外す」

私はもうその事しか考えていない。

「いや…よく考えたら埋め込まれてるし外すっていうのは無理かぁ」

「あ…」

「…」

「…」

「…カヅラさん、まさか」

「止めよう」

「あ、はい」


「なんかそれっぽいコードが伸びてます!」

アリサは、首のボタンの隅から赤と青のコードを引っ張り出した。

「これを切ればいいのか…?どちらか一本…それか両方?なんでこんなに分かりやすいんだ…」

「わざと切らせて爆発させるとか」

「ありえる」

だとしたらここにいる全員がお陀仏になるから避けたい。

「あの…私の事はいいから…みんな早くここから出ていって。後始末は全部私がするから」

「大丈夫、まだ30分はある」

そうは言ったものの、これを止められる自信は全く無い。

そもそも専門外…

「カヅラ、フェニカを頼む」

「え?」

「アリサ、行くぞ」

「えっなんですか」

「情報収集」




「教えろやゴラァァ!こちとら命かけてんだよ!」

「ひぃぃぃっっ!!知りません!知りませ」

「何言ってんだァァァ!知ってんだろ吐けやァァァ!!」

「知りません!本当に知りません!」

「おーいもうやめとけー」

「あ、はーい」

アリサって怖いね。

というわけで只今ひたすら人を捕まえては爆弾の解除方法を聞き出そうとしている。ちなみに収穫ゼロ。

「はぁ…みんな知りませんよ」

「もしかしたら知ってるのはカガリだけかもな」

「…いや、もしかしたら」

「何だ?」

「さっき、あの爆弾は監獄地区内で作ってるって言った人がいたんですけど…もしかしたらその作った本人なら知ってるかもしれないです」

「なるほど…よし頼んだ」

「はい!……オルァァァ!爆弾作ってんのどこじゃぁぁぁぁぁぁ!!」


そしてたどり着いた爆弾工場。量産してたんだね。

「全員殺していいですかねー」

「やめとけ」

「…僕たちの仕事忘れてます?」

「…」

「…」

「…え?」

「…え」

「…」

「…あのー」

いや忘れてたとかじゃないんだよ本当に。


「誰だお前らは!」

見つけたのは部屋の隅に座ってた責任者さん。何故隅にいるのか。

「爆弾の解除方法を教えてもらおうか」

「…は?あれ解除できねーよ」

「アァ?嘘つけよ糞が!吐け」

「はは…本当なんだよ…これでも見るか?」

そう言って彼はデスクの上の紙を見せてきた。

「これは設計図だ…解除方法など書いていないだろ?」




「あっ…えっと…あの…」

こんにちは。フェニカです。今私は、すぐにでも逃げ出してしまいたい気分です。

ウミハさんとカヅラさんが喧嘩しているのです。

「早く逃げないと…!」

「だから私は大丈夫だっての!」

「でも…もし爆発しちゃったら…」

「とりあえずあの2人を待つしかないって!」

「無理だよ…どうせ解除方法なんて最初から無いんだ」

「んなの分かんないって!もしかしたら…」

ひぃぃぃ…こういう現場は大の苦手です。

早くあの2人帰って来ないかな…

「あっ!おい待てっ!」

「え…」

…ウミハさん逃げました。追いかけるカヅラさん。

置いてかれちゃいました。

どっどどどっどどどどうしよ。

…追いかけますか…


「だから…私は爆発するんだから…離れて!」

「あーもう何回言わせんだ!私は死ぬ覚悟出来てんだよ!いいから一回止まれ!」

は、速い…2人とも速すぎますって…

「ちょ…っと…ま…って…く…ださ…うっ」

は…吐きそう。運動不足です。

「はぁ…はぁ…」

私たちは崖にたどり着きました。なんか犯人を追い詰めた感じになりました。海はないんですけど。

「ふふ…やっぱり私はここで…」

「おい待て…」

飛び降りる気なのでしょう。実は私時間を計っていたのですが、あと3分程度しかありません。それまでに2人が何か方法を見つけてくれれば。

「カヅラちゃん、今までありがとね!私カヅラちゃんと話せて凄く楽しかった!」

「待って、待ってよ…ねぇ…行かないで…私だって…楽しかった…のに…」

「ウミハさん…まだ…助かります…2人が帰ってくるのを待って…」

「残念だけどもう時間は残されてない…何かよくわからないけどね、もうすぐ死ぬっていうことを凄く感じるの…身体が、震えて…もう、無理だよ…」

ウミハさんは泣いていました。泣きながら、一歩ずつ崖に近づいていきました。私の時計は残り30秒を知らせました。アラームにしておいたので、音が鳴ります。

「あは…これが…死の足音ってやつ?もう…死ぬんだ…」

やばい逆効果だ。手で抑えて自分にしか聞こえないようにしました。

「バイバイ…楽しかったよ」

「ウミハ…」

「…」

「カヅラちゃん…今まで…ごめんね。ずっと…閉じ込めてて…これからは…自由に、生きて」

私は時計を見ました。残り…3秒。

「嫌だ…いかないで…」

ピピピピピピ。

思いのほか音が大きかったアラームは普通に音漏れしました。あれ、間違えてたかな…

「…ウミハ、止まって」

「…」

「やってくれたよ…あいつら…」

もしかしてあの2人が何かしたのでしょうか。私の手元に狂いが無ければもう1時間は経った筈ですが。

「助かったよ…ウミハ」

「え…?」

カヅラさんはウミハさんを思いっきり抱きしめました。危ない危ない、そこ崖です。

「間に合ったみたいですね」

「あ…」

振り返るとアリサさんとイツさんがいました。

「マジで助かったぜ、アリサがあんなんで」

私はなんとなく察しました。アリサさんって、機械に強いんですよね。

てか何で2人して服に血付いてるんですか。







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