人を見た目で判断するとこうなる
「…!?」
驚きしかなかった。
「僕も選別者ですよ〜!仲間だったんですね!」
待って待って待って。
え。どういうことなん。選別者って一人じゃないとおかしくない?意見分かれるし。面倒は避けたい。しかも、
「でもその冷凍保存ってのは僕はやられてないですね…」
らしい。僕は何か違うのか。
「あ、ちなみにこのヘッドホンなんですけど」
会った時から、ずっと首にかけていたヘッドホン。
黒に少し白いラインが入っているシンプルなデザインだ。
まさか。
「イェーイ!エルでーす!AIですっ☆」
うわぁ。ならばこっちも…
「なんですか初対面にしては五月蝿いですね貴女」
こらえてくれアール。どうやら選別者にはAIが付いてくるようで、アリサの場合このハイテンションJK系のクソみたいにうるさい鼓膜に悪いキンキン女らしい。あのヘッドホンに埋め込まれてるようだけど、彼の耳、無事か?
「相変わらずうるさいねぇ君は」
無事じゃなさそう。
「音量下げれば?」
「確かに…!エル天才!?」
馬鹿と馬鹿がなんか言ってる。
てか。
「アリサって人殺せるの?」
すんごい不思議。
「殺しますよー!ムカついた奴は磔にしたりします」
怖。
というわけで。只今シンプル男の観察中。
階段からこっそり覗いてる。
「あの人ホント普通ですね」
「つまんない男ね」
「殺す必要無いと思いますが」
皆さん中々辛辣。
「あ、電話だ」
シンプル男は部屋の端に置いてある電話に出た。
「よう、どうした?」
友人だろうか。楽しそうに話している。
「やっぱこんな事してても無駄でしょー」
「ですね」
「時間の無駄です」
「静かに」
「「「はーい」」」
シンプル男、どこか怪しい。
「ん?あぁ、俺か…今な、2人」
流れ変わった。
「あぁ…1時間前くらいに滑り込んで来たよ。男と女だ…いや、二人とも未成年だぜ。あれなら簡単に制御出来るし、女の方は変態には売れるだろうよ」
んんんん???女?まさか。恐る恐る横を向く。
アリサはこの世の終わりが来るんじゃないかと思うほど恐ろしい顔をしていた。
確かにね?髪長いし、声高めだし、少々苛つくが顔整ってらっしゃるし、名前も女の子みたいだなーとは思ったけど。うん。
「殺しましょう今すぐに殺しましょう燃やしましょうアイツの目玉この家に飾ってやりましょう」
それからもずっとブツブツ言ってた。
「売れる…人身売買でしょうか」
「多分そうだね…僕たちみたいなのを捕まえてきたんだろうね」
「人身売買ってなにー?」
無視。
「アイツの磔写真1円で売って醜態晒しましょう」
アンタは一回黙りなさい。
「ジジイっていい人いないですよね」
アンタも中々酷いこといいますね。どんな偏見やねん。
「まー殺すんなら殺せばー?」
コイツ作ったの誰だよ。
とまぁなんやかんやで階段をバタバタ降りて行く。
「今の会話聞かせてもらったぞ!」
「アアアぶっ殺すぞクソジジイが!」
左耳が騒がしい。
「…聞かれてたのか。ならいい。この場で殺すだけだ」
シンプル男改めクズ男は机に置いてあった拳銃を手に取る。
「いいかお前ら。俺に逆らうとどうな」
気づいた時にはアリサがクズ男の腹に蹴り入れてた。
「…痛ってぇな。おい。殺してや」
アリサが蹴り入れた。
「このクソガキが…殺し」
蹴り入れた。
「殺」
蹴り。
蹴り。蹴り。蹴り。
後半は踏みだった。もう血まみれだよ。やめたげて。
「わ…悪かった…もう…やめてく」
顔に蹴り。嫌な音したけど大丈夫か。
やっぱり。死体はアリサには渡せない。絶対駄目。
「アリサ、それいつもやってるけどやめなよ…」
いつもやってる模様。しっかり叱っときました。
とりあえず今夜はこの家で一夜明かすことに。
「そういえばアリサはどこでエルと出会ったんだ?」
「…家です。変な仮面付けた男の人が家に入ってきて…」
なんそれ。
「…その男に家族を殺されました。残った僕にエルを渡して、逃げていきました」
家族が、殺されている。初めて聞いた。というか両親が死んでいるならあの弁当は何なのか。お母さんに作ってもらったって言ってたけど。
どうやらアリサの家は借金があったそう。後にアリサがエルに聞いた話だと、両親が借金を帳消しにする代わりに自分たちの命を捨てたうえに、子供を危険に晒すことになった。なんともまぁ残酷な連中。
「そっか…」それしか言えなかった。身内が死んでる人と話すのは苦手だ。
「あ、別に気にしなくていいですよ。僕両親嫌いだったんで。死んでくれて逆に楽になりました」
…は?
「いや実はですね、僕両親からの虐待があって…というのも、僕がわがまま過ぎて、両親に金使わせたんですよ。それでいつもお前のせいで貧乏になったとか言われまして…」
まさか。
「じゃぁ、借金ってのは」
「僕のせいですねー」
殴った。コイツは全く…
翌日。アリサの両親は死んでいるからアリサの家でどこ行ってたんだよ!って怒られることもないと思ってたけど。
「ここが僕の家でーす」
アリサがドアを開けた瞬間。
「遅っせぇなぁクソ兄貴がぁぁぁ!!」
という怒声とともにアリサの腹に頭突きかます何か。彼の腹、無事か?まぁ大半僕がやったけど。
「あぁごめんごめん!ちょっと山二つ超えてた!」
「何してんの!?まぁ…生きてたから良かったけど…」
頭突きをするのに無理したのか、頭をさすっているのはアリサよりも少し下に見える女の子。腰あたりまで伸びているのであろう真っ黒の髪がドアノブに引っかかってる。
可愛い。こんな子からあの声が出たんだ。
「…!お兄ちゃん後ろに不審者!」
失礼な。てか妹?
「あー違う違う!この人は僕の命の恩人だよ!」
猫だけどね。
「あー…僕です。名前はありません」
何言ってんだコイツって顔された。
「お兄さんは僕と同じ選別者だよ!」
とアリサが言った瞬間目を輝かせる。何この人たち怖い。
「こんにちは!私はアリサの妹のシナナです!」
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