第10話 強姦人食い豚
エクレアは大きな木の陰に隠れ、ブルブルと震えながらロビンソンをやり過ごそうとしていた。
「お願い……気付かないで……」
ロビンソンはフゴフゴと鼻を鳴らしながら、周囲をうかがっている。
「ぶひぃ……! くせえ! メスの臭いがするぅ……! エクレアァ! ここにいるのは分かってんぞぉ!」
彼が手にしているダガーからは、血が滴っている。
きっとあれでギシュールを刺したのだろう。
(勇気を持てアタシ……ディリオン様に生きて会うのよ……)
不意打ちで攻撃すれば、簡単に倒せるはずだ。
いかに【高潔なる導き手】の名盾役と言われるロビンソンでも、<
(ダメ……足がすくんで動かないよ……)
エクレアは学生時代の模擬戦以来、対人戦をおこなった事がなく、人間を殺す覚悟も勇気もない。
狂気に満ちたロビンソンの目と、パンパンに膨らんだ股間を見て、完全に恐怖に支配されてしまっている。
「エクレアァ! お前は生意気だから、生きたまま肉を削いで食ってやるからなぁ! まずは、乳房からだ! ぶひぃ!」
「ひいぃ……」
<
だが、エクレアは丸まって体育座りする事しかできなかった。
「ちくしょう、どこだぁ!? 確かに、淫乱〇〇〇の臭いがすんだけどなぁ!?」
――ロビンソンは向こうへと歩いて行った。
「うう……助かった……」
ここから早く立ち去らなくては。
だが、恐怖で体の自由がきかない。
エクレアは這うようにして、何とか前に進もうとする。
――が、枝につかまれ、身動きがとれなくなってしまった。
「そんな! いや!」
彼女が隠れていた木は、なんとトレントだった。
一瞬で枝に絡めとられる。
しかし、相手がモンスターであれば、何とか冷静に戦える。
「<
地獄の炎に焼かれ、トレントは倒れた。
エクレアは枝を振り払い、すぐに走り去ろうとする。
戦った事で、緊張がほぐれたのだ。
「ぶひいいいいいいいいいいい! メスの肉だあああああああああ!」
ロビンソンが異様な形相で、こちらへと駆けてくる。
それを見て、また足が固まってしまう。もう迎え撃つしかない!
「<
しかし、何も起こらない。MPが足りないのだ。
パニックを起こし掛けている彼女は、MPの残量も把握できなくなっている。
「い、いや! <
「<
エクレアの<
「メギ――」
「おらぁ!」
顔面をぶん殴られ、詠唱を中断させられる。
そのまま押し倒され、組み伏せられた。
「ぶひぃ! これでも食ってろ!」
「うぐ! うう! うんー!」
口の中に何か突っ込まれ、声が出せない。
「ぶひゃひゃひゃひゃ! 俺のクソがべったり付いたパンツだ、この淫売め!」
「んー!」
エクレアは頭を起こす。ロビンソンは下半身丸出しだった。
「俺をデブだのブタなど罵りやがって! お前だってゲラシウスやディリオンに股を開くメスブタのくせによぉ! ぶひひぃ!」
「んー! んんんん!」
「いいぞ、もっと暴れろ! 俺はギシュールと違って、その方が燃えるんだ! おらぁっ! おらぁっ! ああー……イキそうになるぜぇ!」
ロビンソンに何度も顔を殴られる。
エクレアは抵抗を止めた。もう痛いのは嫌だ……。
「何だ、つまらねえ……お前はもっと楽しませてくれるかと思ってたんだけどな。これならグレタの方がよっぽど良かったぜ。ぶひぃ!」
ああ、グレタはやっぱりこいつらに……許せない!
エクレアはロビンソンの股間目掛けて、渾身のヒザ蹴りを放つ。
――しかし、魔力の膜によって阻まれてしまった。
「ぶひゃひゃひゃ! そう来るのは読んでるっての! ぶひぃ! 俺様天才!」
「ん! ん! ん!」
エクレアは涙を流しながら何度も、ヒザ蹴りを打ち込む。
だが、ロビンソンはまったく意に介さず、彼女の衣服を破いていく。
「何度やっても無駄だ、このクソ〇〇〇! 俺を蹴る事なんて不可能だっての! ぶひゃひゃひゃ!」
「――いや、そうでもない」
ロビンソンの右顔面に蹴りが入り、豚野郎がゴロゴロと転がる。
だが、奴は思ったより身軽のようで、すぐに受け身をとり起き上がった。
「ぶひいいい! 何で<
「<
「ふごっ! うるせえ! ぶっ殺してやる! 食ってクソにしてやる!」
ロビンソンはダガーを構え、男に向かって突進した。
しかし、あっさりと腕をつかまれ、捻り上げられる。
「いでででで! 放せこの肉!」
ボキィッ!
「ギャアアアア! いてえええええ!」
ロビンソンは、右腕と一物をブラブラとさせながら、逃げていく。
男は腰に吊るした手斧を手に取り、ロビンソンに投げ付けた。
「グワアアアアア!」
手斧が背中に刺さり、ロビンソンが前に倒れる。
男は背後からゆっくりと近づき、手斧を抜き取った。
「ぶひいいいい! もうしませんから、い、命だけは助けて下さい!」
「――駄目だ。強姦人食い豚は屠殺するしかない」
「ママアアアアアアア!」
男はロビンソンの首に手斧を振り下ろした。
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あとがき
『焔の魔女エクレア』編はこれにて終了となります。
かなりダークな内容だったかと思います。
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