第41話
婚約を交わしてから月に一回だけの逢瀬。
決められた日に
決められた季節の花束を以って
決められた同じ言葉と微笑みだけの関係。
最初は……いいえ貴方の事がきちんと理解出来るまでは――――。
ふざけんなこのクソ野郎!!
等と淑女にあるまじき想いを抱いておりましたのよ。
そこは子供故にどうかお許しになって下さいませ。
それでも箱庭で生まれ育った私にしてみればこの型通りの逢瀬が、
またキャサリン様に弱みを握られてしまった……言い換えれば全ては私を護らんが為の行い。
言葉や態度にこそお出しにはならなかった。
でもお逢いした時の貴方の心が何時も悲痛なる悲鳴を上げていらしたのです。
苦しくて辛いと、血の涙を流されておいでの貴方へまだ幼い私は何も出来ないまま、そして何も告げる事の出来ない……何故なら何処の世界に他人の心さえも魔力によって透けて視える力を持つだなんてっっ。
きっと知られてしまえば貴方に嫌われるだけでなくいいえっ、他の方々は良いのです。
私は貴方に嫌われたくはなかったのです!!
だからなにも視えない振りをこの八年もの間し続けましたの。
愚かでしょう。
本当に貴方を想っているのであらば、苦しんでおられる貴方の為に身の内に有り余る力を行使さえすれば直ぐにでも問題は解決出来たと言うのに、私が何時までも子供ばかりに貴方へ負担を強いた結果がこれ――――ですわ。
でもだからと言って庭園でのキャサリン様との事は頭の中ではわかってはおりましたがやはり視覚的にはその……キラキラが吹き出してしまう程のショックを受けましたわ。
また同時にキャサリン様へ醜くも激しい嫉妬までしてしまいました。
貴方ご自身の御心にキャサリン様への情がないと言う事実を知っていながらも……です。
それ故婚約破棄を願い出ましたの。
キャサリン様の事もですが大前提に私と言う存在がいるからこそエセル様、貴方は何時までも自由に離れないのです。
私と言う枷を取り去る事でお慕いする貴方を自由に差し上げたかった。
なのに、貴方はやはり私の考えを遥か上へ行く御方でしたわね。
まさか私を夢の世界へ閉じ込められてしまわれるとは……。
流石に幾ら魔力があろうとも夢の中では何も出来ませんもの。
おかげで目覚めた瞬間愛しい貴方様のお顔が間近過ぎて声を発する事も出来ないくらいに吃驚致しましたのよ。
でもそれと同時に貴方の妻と慣れた喜びも感じておりましたわ。
とは言えです。
強制的な眠りより目覚めさせられた側と致しましては私の力を通して入ってくるだろう膨大な情報量に少々パニックに陥りそうでしたわよ。
お、おまけにこの様なスケスケの、あられもない姿で貴方の許へ行けだなんて、力云々よりも顔から火が吹き出しそうになりながら侍女達と何度押し問答した事でしょう。
しかし事態は急転致しましたわね。
まさか降嫁なされた元王女殿下が他人……実の兄とその妻である私の初めての夜に乱入したばかりか、目の前で貴女が襲われている姿に怒りと同時にキラキラをまたもや催してしまいましたわ。
でもこれで終わりに致しましょう貴方。
私達はお互いに疲れてしまいましたもの。
そして生きている限り今の様な事はまだまだ続く事でしょう。
リドゲート公爵が適当な事を言っておりましたが、幻夢の華は永遠ではないのです。
確かに目覚めさせる特効薬として愛する者の口づけ――――なのですが、私の知る限りは時が経過すれば緩々と時間はかかりますが意識は戻るのです。
公爵もとんだ食わせ物ですわね。
幾ら国王陛下によってその昔愛する女性……陛下にとって血の繋がった妹君であられる王妹殿下を無理やり犯しただけでなく、胎に宿りし御子共々結果的には死へと至らしめただけでなく、当時王妹殿下の婚約者だった公爵の幼いとはいえ目の前で泣き叫ぶ王妹殿下を犯し続けたのですもの。
以後公爵はそのショックで男性の機能は不能となり、最愛の女性を失った隙間を埋めるべく亡くなられた年頃の少女を可愛がられるようになられたのだとか。
でもその可愛がり方に些か問題はあると私は思うのですけれど……ね。
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