第30話
「ねぇエセル、今日は庭園で貴方と愛し合いたいわ」
ごく普通の恋人の様に、それは歌を唄うかの様な涼やかな声で紡がれた。
「はあ?」
当然の事ながら俺の反応は決して間違ってはいないと思う。
実の妹との肉体関係もあり得ない事だが、その妹と何故に誰が見るともわからない庭園等でちちくり合わねばいけない。
先日の父との会話でキャシーとの間に子を儲ける事は恐らく……いやもう決定事項なのだろう。
この国の王太子である俺の意見は国王として実権を握っている父には通らない。
国王としてほぼほぼ何の力もない父へ怒りを抱こうともだ。
まだ俺は国王へ即位をしてはいないのが現状。
現国王より王権を奪取するにはあと少し時間だけでなく力も足りない。
いやいや大前提にこの国の権力の中枢を握っているだろうリドゲート公爵をまだ敵へ回す事があってはならない。
そう、あの公爵へ権力が集中しているからこそエリザベス、貴女の父親であるセジウィック公爵が自身が持つ力以上のものを欲しているのだからね。
それもこれも全ては王の器でない父王の招いた問題。
なのに今その父王の息子であるこの俺がっ、そうこれは一体何の公開処刑なのかと心の中で自問自答をしつつキャシーのが求める様に庭園の、ああ出来得るだけ人目に付かない奥へと入り込めば今現在実の妹へ自身の昂りをこれでもかと打ち付けていたのだ。
心の中で是が非ともこの行為でキャシーに子が孕む様にと強く願いながら!!
ああ、キャシーに子が孕めば俺はもうこの様な茶番には一切付き合いはしない。
そうキャシーの子飼いの咲弥は公爵のモノとなる。
さすれば如何にキャシーが怒り暴れようともその時はもう只の公爵夫人であり王女ではない。
妻であるキャシーの行動は公爵が管理すればいいだけの事。
咲弥の脅威が消え去ればもうキャシー等はとるに足らない存在。
それを思うだけで言葉としてはあくまでもキャシーへの睦言に聞こえるだろう。
だが俺の心の中では全てエリザベス、これは貴女への嘘偽りのない想いと言葉なのだっっ。
俺の愛は全てエリザベス、貴女だけのもの。
そう貴女のしどけない姿を思い浮かべながら、いやはっきり言ってこうでも思わなければ俺のモノは勃つ事はない。
何時もキャシーとの行為は全て未来の貴女と交わすだろう愛の行為を思い浮かべながらでなければなしえなかっただろう。
キャシーの中へと穿ち続け次第にせり上がる射精感を感じる中で俺は全く気付かなかったのだ。
まさかっ、そのまさかだった。
エリザベス、この世でただ一人俺の愛する貴女がこの地獄の様な交わりを見ていたなんて!!
この時の俺は全く気が付く事はなかったのである。
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