第12話
先ず俺はある感情を殺す事にした。
そう、エリザベス……貴女を心より愛していると言う事実を。
確かに貴女とは正式に婚約を交わしてはいる。
このまま何もなければ将来は正式な夫婦となって幸せな未来が待っている事だろう。
だが同時に貴女に対する俺の想いは俺にとって
貴女を俺の正妃として無事に迎える為にもそれだけは誰にも知られてはいけない!!
今のまま政略目的の婚約者として、
父である国王の従順な息子として、
出来るだけ敵を作らずそして多くを学びまた知識を深め、来るべき時までに俺は爪を研ぎつつしっかりと隠さねばならない。
何故ならば俺が成人し全てを掌握出来た暁には愚かな両親を直ぐに隠居させればリズ、貴女にはきっと理解し難いだろうが貴女をより幸せにする為にも貴女の父親を含め愚かな権力欲に塗れた貴族達の粛清を図らねばなるまい。
そして貴女の母親もだ。
娘である貴女が将来取り仕切るだろう社交界までもただの生みの親と言うだけで、王妃となった貴女の足を引っ張りかねないからね。
俺はこれより貴女が15歳となる八年と言う時間を掛けて己を磨き、そしてこの俺に忠誠を誓う者とそうでない者を選別しなければいけない。
無論老若男女関係なく――――。
それまでは婚約者であり俺の愛しい貴女には随分と寂しい想いをさせてしまうだろう。
またこれは本当に俺の言い訳にしかならないな。
でも俺は愛する貴方へ今誓いを立てる。
俺の最愛、俺の唯一のエリザベス。
16歳の成人を迎え貴女が俺の許へ嫁いだ時にはきっと、何があろうとも俺の生涯を懸けて貴女をグズグズに蕩けてしまう様に愛するから今より八年――――。
そうこの八年間だけ寂しいだろうけれども表面上の婚約者として接してしまう俺をどうか許して欲しい。
この八年間で全てを変えてみせるからっ、八年後の未来はきっと幸せにして見せるからリズ!!
それまで箱庭で大人しく待っていておくれ。
俺はこの日を境に己が恋心へ封をすれば何もなかったかの様に、大人しくの将来有望な王太子を熱演したのだ。
当然その水面下では俺が描く未来図へと近づける為に動いていたのは言うまでもない。
だがその志半ばでまさかの、いやある程度の予想は出来た筈だったのだ。
ただその存在は余りにも近くそしてその執着は同じ血筋故に凄まじいモノなのだと、この時の俺はまだまだ自覚が足りなかったのだ。
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