第11話

 ふざけるな!!


 ふざけるなっ、ふざけるなっ、ふざけるなっふざけるなっ、ふざけるなっ、ふざけるなっ、ふざけるなっ!!


 私の、俺の心は噴火寸前の、どろどろと熱くも煮え繰り返るマグマの様にっ、また余りの暴言と妄言で怒りで眩暈と吐き気を催しかけていた。

 いや、出来得る事ならば臓腑の中のモノを両親目がけてぶちまけたい気分にもなった。

 だがそこは一応王太子としてなけなしの理性と言うたがによって堰き止められてしまった。


 ぶちまけると言う行為こそ押し留められはしたものの、だからと言って全てを赦し無かった事に等到底出来よう筈もなく、俺の腹の中のマグマは依然出口を求め煮え繰り返っているのは間違いない。

 噴き出す出口を求め何時噴き出してやろうかと虎視眈々と狙いを済ましている。

 そんな俺の怒りへ当時まだ12歳だった俺は必死に宥め落ち着かせた。


 全ては俺が初めて恋をした少女の為だけに……。



 それに俺は一般的な同年代の子供達とは違い優秀だからとは言え所詮まだまだ12歳の少年なのだ。

 この凄まじい怒りと言う衝動の赴くままに両親である国王夫妻をしいし無理やり王座を奪ったとしてもだ。

 12歳の子供に国一つを背負うにはまだ荷が重過ぎる。


 いやそれだけではない。

 それこそエリザベスの父親である公爵をはじめ、権力を握りたいだろう馬鹿で愚かな大人達によって俺は傀儡の王とされれば王権は失墜したちまち国は荒れ、民の生活も乱れる事になるだろう。

 

 まあ民の生活……本音を言えば俺にとって些事でしかない。

 だが一応これでもこの国の王子として誕生し今現在王太子として次代を引き継ぐ者なのだ。

 そこはある程度の国の秩序と民の生活を守らねばならない。


 ただそれだけの事。

 民を愛している等と言う高尚な想いを俺自身は全く持ち合わせてはいないのだから……。



 それに一番俺にとって恐れている事はもしこのまま俺の浅慮故に両親を弑した場合。

 上手くエリザベスの父親が権力を握るのであらばまだいい。

 だがそれ以外の者が権力を握り俺を傀儡の王とした時、またその者に年頃の娘がいれば事態は最悪な展開となってしまう。


 そう、という事実!!


 それだけは何としても避けなければいけない!!


 何故ならエリザベスだけなのだっ。

 リズだけが俺の隣に並び立てられる女なのだっっ。

 それ以外の女なんて絶対にいらない。


 リズ、貴女だけが俺の唯一の妻であり正妃となる女性なのだよ。

 それ以上も以下もない。

 万が一別の女が婚約者となり行く行くは俺の正妃となる未来で、大切なる貴女を側妃や愛妾等と言う恥ずべき地位へ付けたくはない!!



 エリザベス、俺の太陽であり俺の命そのもの。

 リズの柔らかくも可愛らしい微笑みだけで俺は今を生きていられるのだからね。

 リズしかいらない。

 そしてリズ以外は必要ない。

 俺は将来貴女を正妃とする為ならばどの様な事でも成し遂げて見せよう。

 

 だから貴女はその時間が来るまでそう、貴女の父親である公爵が用意した頑丈な箱庭の中で俺を待っていて欲しい。



 大丈夫だよ。

 ちゃんと俺はリズを迎えに行くからね。

 それまでの間どうか大人しく待っていておくれ。

 俺の愛しい、愛し過ぎるリズ。

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