第7話

 両陛下よりどれ程理由を述べよと叱責され様とも私は貝の様に口を閉じ、口を開けば謝罪を繰り返しておりました。

 

 そうして暫くすると両親が駆け付ければここは一旦公爵邸箱庭へと連れ戻されるかと思えばです。

 あろう事かそのまま王太子宮の私の、いいえ王太子妃の間へと押し込められてしまいました。

 

 両親より生まれて初めて厳しく叱責されはしましたが、やはり私と言う存在は何処までも彼らの慾を満たす為のでしかないのです。


 また少し騒ぎになってしまいましたけれどもです。

 だからと言って貴方は私の前へ姿を見せる事はありませんでしたわね。


 ああ、失礼致しましたわ。

 何故なら今日は何時もの約束の日ではないのですもの。

 なので貴方が私の前へ現れる筈等ないのです。

 


 同じ宮で生活をしていると言うのに。

 手を伸ばせば届く距離にいると言うのに。

 ご自分の意思で部屋の扉を開ける事も自由である筈にも拘らずです。


 ですが私は正直に申しまして貴方の訪れがない事に心の中でどれ程ホッとしたでしょう。


 何故ならそれ程この時の私は貴方に会いたくはなかったのです。

 まあ生理的に受け付けない……様な?


 確かに全てを見てはおりませんよ。

 でもあの甘い口づけだけで十分なのです。

 お二人が兄妹と言う垣根を越えて親密な間柄である事を知るのは……。


 

 しかし神様は本当に残酷です。

 

 凡そそのひと月後……私はまさかの全員集合の場へ引き出されてしまうだなんてっ、もし知っていたのであればあの時少しも躊躇う事無くさっさと全てを暴露すべきだったのだと、ああそれでも結果はきっと変わらないのでしょう。


 全ての真実を私は本当の意味で知ってしまうのですから……。

 そして本当の地獄はこれからなのです。

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