第6話
「両陛下、本日はお話があって王宮へ罷り越したのです」
「あら、何かしら」
優雅に、そして美しい所作で以ってお茶を楽しまれる王妃様。
ごめんなさい。
本当に申し訳御座いません。
お二人方には本当に可愛がって下さったと言うのに、よもやこの様なお話をする事になるとは……。
でも幾ら敬愛する両陛下だからと言ってこのまま貴方とキャサリン王女殿下の件をなかった事にしてしまうのは、私自身と致しましても到底無理なのです。
何も知らなかったままならばいざ知らず、真実を知ってしまった以上貴方とはもう生涯を共にする事は出来ないのです。
#譬__たと__#え王族だからとは言え近親相姦を無視する何て私には出来ないのですから……。
「両陛下にお願い致します。私と王太子殿下との婚約を解消若しくは破棄の何れでも構いません。どうか此度の結婚の儀をなかったものとして頂きたいのです」
この一言でほんわかムードなお茶の時間は一変しました。
まあ仕方ないでしょう。
それも覚悟の上なのです。
あとは出来得る限り穏便に、事を大きくせずにまた野心家の両親を抑えつつ婚約をなかったものにしなければ……。
確かに婚約破棄若しくは解消をしたとしても私は傷物令嬢として将来に期待は出来ないでしょう。
野心家の両親にしてみればお金を湯水の様に使いいらぬ虫が付かない様に最高の商品として育ててきたのですもの。
傷物となればその商品価値はどの様に下がる事でしょうね。
でも私はそれでも構わないのです。
同じ顔の人間を愛する貴方の妻になるくらいならば私は直ぐにでも世を捨て、修道女として生涯を静かに暮らしたいと思うのです。
利用し利用される様な貴族の世界よりもその方が私にしてみればある意味幸せなのでは――――と、両親へ訴えて以来何回となく考えてしまうのですから……。
ですので陛下方もどうか私の切なる願いをどうかお聞き届――――。
「駄目だ!! 婚約をなかった事に等する訳にはいかない!!」
「そうですよリズ、
優しく諭す様に王妃様が語り掛けてくれます。
本当にお優しい王妃様。
あの様な事がなければきっと私は王妃様を義母と、心より呼びたかったでしょう。
しかし知ってしまった以上もう知らない私には戻れないのです。
「申し訳、御座いません……私には、殿下の妃にはなれない……のです」
まだ本当の理由をお話してはいません。
この段階では単なる私個人の我儘でしかないでしょう。
臣下である私の我儘。
貴方にひと時でも恋をしたと思い込んでいた少女の、貴方へ最初で最後の贈り物です。
どうか私を悪者にして婚約を破棄させて下さいませ。
そして貴方とキャサリン王女の件は墓場まで持って参ります。
ですから新たなるご婚約者となられるご令嬢の為にも、キャサリン王女と穏便にお別れして下さいね。
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