ガタゴト線路とキラキラ金平糖

ガタゴトガタゴト

 ガタゴトガタゴト

 ガタゴトガタゴト



 真っ暗な夜の中を、耳をつんざくような轟音ごうおんが鳴りひびいています。

 空には、月明かり星明かりひとつありません。ただ、重く真っ黒な暗闇くらやみがあるだけです。


 仔猫は、ひとりぼっちで夜の中に取り残されていました。

 かあさん猫は、どこに行ってしまったのでしょう。きょうだい猫たちは、どこに行ってしまったのでしょう。

「かあさん、かあさん」

 仔猫は、必死にかあさん猫を呼んでいます。



 ガタゴトガタゴト

 ガタゴトガタゴト



 暗闇は容赦ようしゃもなくし掛かり、仔猫の頭を押さえ付けました。



 ガタゴトガタゴト

 ガタゴトガタゴト



 音はどんどん大きくなって、小さな体をグラグラ揺らします。だけど、頭は動かそうにも動きません。



 ガタゴトガタゴト

 ガタゴトガタゴト



 今にも、頭がつぶれて体が引き千切ちぎられてしまいそうで、仔猫は痛くて怖くてたまりません。

「かあさん、かあさん」

 仔猫は、必死にかあさん猫を呼びました。

「あたし、ここ。かあさん、かあさん、あたし、ここにいる」



 ガタゴトガタゴト

 ガタゴトガタゴト



 かあさん猫を呼ぶ仔猫の声は、轟音ごうおんにかき消されるだけでした。

 だけど、仔猫は決してあきらめず、かあさん猫を呼び続けました。かあさん猫はいつだって必ず仔猫の声にこたえてくれたのですから。



 ガタゴトガタゴト

 ガタゴトガタゴト



 仔猫の声はだんだん弱まり、轟音は大きくなる一方です。それでも、仔猫はかあさん猫が来てくれることを信じて呼び続けました。

「かあさん、かあさん、あたし、ここ。あたし、ここにいるよ」と。

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