星明かりひとつ

 真っ暗な空に、ぽつんとひとつ、星明かりがともりました。




 暗闇に押さえつけられていた頭が急に軽くなり、仔猫はかあさん猫が助けに来てくれたんだと喜びました。


 ガタゴトガタゴトという音は一向いっこうに鳴り止まず、軽くなったとはいえ相変わらず頭は痛かったのですが、それでも仔猫はかあさん猫が来てくれたので、もう怖くはありません。


 でも、暗闇のどこにもかあさん猫の姿は見えず、さっきまでは無かった星がひとつ、またたいているだけです。


「かあさん、かあさん、どこにいるの」


 仔猫はやっと動かせるようになった頭を動かし、キョロキョロあたりを見回しました。


 ガタゴトガタゴトという音が大きくなり、頭が割れるほど痛くなったので、仔猫は頭を動かすのをやめました。


「かあさぁーん」

 仔猫は、大きな声で叫びました。

「かあさぁーん、どこにいるの。出てきて、かあさぁーん」


 ガタゴトガタゴトという音に負けないよう、ありったけの力をしぼって、仔猫は何度もかあさん猫を呼びました。


 ふいに音は聞こえなくなり、仔猫が「かあさぁーん」と叫ぶ声だけが、暗闇に木霊こだましていきます。

 仔猫は驚きながらも、大きな音が止んでホッとしました。


 しかし、それもつかの間、ガタゴトガタゴトという爆音が再び始まり、あろうことか仔猫の頭の上で音を立てているのです。


 爆音で仔猫の頭はグラグラ揺れます。まるで、何かが頭の上を暴走していくようでした。


 仔猫はまた怖くなって、その場にうずくまってしまいました。



 仔猫が震えていると、誰かがすぐそばに立っている気配がします。

「かあさん?」


「ちがうよ」

 そのだれかは、答えました。

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