暗闇暴走列車

 仔猫が顔を上げると、星明かりと同じ色をした小さな鳥がいます。

 それも、おとなの鳥ではなくて、仔猫と同じ、子どもの鳥です。


 仔猫は目の前にいるのが、かあさん猫ではなくてがっかりしましたが、それでも、暗闇の中、ひとりぼっちではなくなったので嬉しくもありました。


 仔猫は、小鳥にたずねました。

「あたしのかあさん、どこにいるか知らない?」


 小鳥は、首をかしげるだけで何も言いません。 



 ガタゴトガタゴト

 ガタゴトガタゴト



 仔猫の頭の上を、また爆音を立てて何かが走って行きます。

 仔猫は怖くてブルブル震えながら、しゃがみ込みました。


 しばらくすると音はやみ、小鳥が言いました。

「暴走列車、行っちゃったね」


「暴走列車?」

 仔猫はびっくりして、聞き返しました。


 小鳥は答えました。

「今、頭の上を通って行ったでしょ?」


「あのガタゴトガタゴトっていう音?」


「そう。ガタゴトガタゴトっていう音は、暴走列車が立てているの—— あっ、戻ってきた!」

 小鳥が言い終わらないうちに、暴走列車が仔猫の頭の上を猛スピードで走って行きます。

 


 ガタゴトガタゴト

 ガタゴトガタゴト



 仔猫は悲鳴を上げました。

 なぜ、そんな恐ろしいものが爆音を立てて、仔猫の頭の上を走って行くのでしょう。


 暴走列車が行ってしまうと、小鳥は仔猫が思っていることがわかったみたいに言いました。

「それは、頭の上に線路があるからよ」

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