ガタゴト線路

「うそ。あたしの頭の上に線路なんてないよ」

「うそじゃない。うそだと思うんなら、さわって確かめてごらんなさい」


 仔猫は、恐る恐る自分の頭の上に手を伸ばしました。

 小鳥の言ったとおり、仔猫の大きなお耳とお耳の間には、真新しい線路が一本通っています。


「ほらね。りっぱな線路があるでしょ」

 小鳥はうれしそうに言いました。


 でも、頭の上に線路だなんて、うれしいはずはありません。仔猫は泣きたくなりました。


 そうこうしているうちに、またしても暴走列車がやってきます。



 ガタゴトガタゴト

 ガタゴトガタゴト

 


 仔猫は頭を振って線路から暴走列車を振り落とそうとしましたが、かえってガタゴトガタゴトの音が大きくなって、よけいに頭が痛くなるだけでした。


 列車が行ってしまうと、小鳥が言いました。

「いやがることなんて、ないよ。これは、良い線路なんだから」


 暴走列車の通る線路のどこが、良い線路だというのでしょう。小鳥は頭の上に線路がないからそんなことが言えるんだと、仔猫は腹が立ってきました。


「鳥さん、嫌い! 線路も嫌い! こんな線路、良い線路なわけない! 鳥さんが良い線路って言うんなら、鳥さんにあげる! 鳥さん、線路持って、どっか、行って!!」


 すると、小鳥は不思議そうな顔をしました。

「どうして?」


 どうしても、こうしてもありません。仔猫はプイッと背中を向けました。


「わかった。それなら、行くけど」


「うん、どっか、行って」

 仔猫は背中を向けたまま、答えました。


「本当に、線路、いらないのね?」

「いらない!」

「そう。せっかく、なのに」


 仔猫は驚いて、振り返りました。

「ママって? かあさんのこと?」


 小鳥はうなずきました。でも、かあさん猫が暴走列車の線路なんて付けるはずはありません。

 仔猫はうそつきな小鳥に、ますます腹が立ってきました。


 そこへ、また、ガタゴトガタゴト暴走列車がやってきます。

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