星明かりがふたつ。ハートがふたつ。

 ぴいこちゃんが考えている間にも、暴走列車は線路の上を走って行きました。


 でも、前ほど怖くはありません。

 ガタゴトガタゴト相変わらずうるさくて、頭が痛くはなるものの、あんまり怖くもなくなって、ましてや寂しくないのです。

 かあさん猫からはぐれて光と色にあふれた世界から、突然、暗闇の中に放り込まれた時はあんなに心細くて怖くて痛くて苦しかったのに。


 今、ぴいこちゃんの周りにある暗闇は、ほんのり暖かく柔らかで、優しく包んでくれているようでした。

 暗闇といっても、いろんな色の優しさが混じり合っていて、最初のただ重く真っ黒なだけの暗闇とは違いました。

 それはママもパパもおねえちゃんも姿は見えなくても、ちゃんとそばにいてくれるからなんだと、ぴいこちゃんは思いました。




 ぴいこちゃんは、小鳥にたずねました。

「鳥さんの名前は、なんていうの?」


「ぴいちゃん」

「あれっ、あたしとおんなじ名前だ」


 仔猫のぴいこちゃんがうれしくて笑うと、小鳥のぴいちゃんもいっしょなって笑いました。


 ひとつだった星明かりが、いつの間にか、ふたつになっています。


 ぴいこちゃんは、星明かりを見上げて言いました。

「お星様は、ぴいちゃんとおんなじ色をしているねぇ」


 小鳥が、答えます。

「ふたつのお星様は、ぴいこちゃんのハートの模様とおんなじだねぇ」


 ぴいこちゃんには、また、小鳥が言うことがわからなくなりました。

 実は、ぴいこちゃんには尻尾の付け根とお尻のところにハートの模様があって、その数はお空の星明かりと同じだったのです。


 でも、小鳥はそのことをぴいこちゃんに言わず、かわりに歌い出しました。

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