お兄ちゃんたち、お姉ちゃんたち

 抜糸ばっしも済んでプレート除去手術の傷も、ずいぶん目立たなくなりました。


 耳も少し聞こえるようになってきて、ぴいこちゃんはビニール袋のカサカサいう音や足音に反応して、大ジャンプをしたり駆け回ったり、ひとり運動会さえするようになりました。

 緊急手術の直後は右旋回しかできなくて、まっすぐに歩けなかったことが嘘のようです。


 だけど、視力はいまだ戻らず、ぱっちり目が開いているにもかかわらず、何も見えていないようでした。それなのに、走り回って固いものにぶつかったら大変です。

 Oさんは、テーブルや椅子いすの脚に緩衝材かんしょうざい、名付けて『ぴいガード』をつけることにしました。


 頭蓋骨骨折の真下が匂いをつかさど嗅球きゅうきゅうだったせいか、ぴいこちゃんは鼻も利かず、ごはんの匂いにも中々反応しません。

 元気になったとはいえ、ちょっとしたきっかけで痙攣けいれん癲癇てんかんの発作を起こすこともありました。


 発作が起きそうで心配な時は、人間のパパやママ、小学生のおねえちゃんが添い寝をしてあげると、発作の回数も少なくなるようでした。

 おねえちゃんは、ぴいこちゃんと遊んでくれたり、お世話をしてくれたり、猫ベットで一緒に丸くなってお昼寝してくれることもありました。ぴいこちゃんはおねえちゃんが大好きで、おねえちゃんもぴいこちゃんが大好きなのです。


 それは、猫のお兄ちゃんたちお姉ちゃんたちも同じでした。みんな、ぴいこちゃんと同じ保護猫さんです。


 最初にぴいこちゃんのそばにやって来たのは、ぱちおくんです。ぱちおくんは、毛づくろいがあまり上手じょうずではないぴいこちゃんの代わりに、毛づくろいをしてあげます。でも、時にはあまりにも熱心すぎて、ぱちお兄ちゃんは、ぴいこちゃんに怒られることもありました。

 もちろん、ぱちお兄ちゃんだけでなく、ちびた兄ちゃんも、やめぴお姉ちゃんも、ここみお姉ちゃんも、ととこお姉ちゃんも、すぐに、ぴいこちゃんと仲良くなりました。

 みんなで猫団子になって寝ている真ん中で、ぴいこちゃんはスヤスヤおねんねです。夜、お布団を敷いてぴいこちゃんを待っている人間のパパが振られてしまうことだってあるそうですよ。


 きっと、どこかにいるぴいこちゃんの猫のお母さんも「良かったね。いい子にして可愛がってもらうんだよ。幸せにね」と、喜んでいるに違いありません。

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