147話 歌はいいねぇ

 国内貴族向けの事前説明パーティが終わって数日が過ぎた。

 

 談話室でまったりとお茶を飲みながら、パーティを振り返ってみた。

 

 

 ふむぅ・・・これはきっと僕の悪いとこなんだろうけど、興味が無いとマジで観察眼が落ちる。

 

 偉そうな人や畏まった人の挨拶。

 何を狙ってるのか分からないけど、うちの娘どうでっか?

 なんでリア殿下の婚約者なんだ!?なんだチミは! なんだチミはってか!

 

 ってな具合に色々な思惑が飛び交う場だったけど、僕は結局、場慣れ出来ずにボーっと考え事をしている間に終わった。

 

 へーふーほーん。貴族の公的な集まりってこんなんやなーってな具合だ。

 

 パーティみたいな文化ってのは、せいぜい冠婚葬祭位でしか知らない気がするし、大人たちの序列の感覚ってのもイマイチこうピントこないのである。そこを知らないままで礼儀礼節を持って貴族社会を覗き見るなんてのは中々に難しいしね。

 

 今回は、あれよあれよという間に姫殿下?王女殿下の婚約者になったという事もあって、そういう貴族に関わる事も知らないとダメかな?とも思うのだけど、正直自分が望んだ事じゃあ無いので知ったことでは無いという気持ちが強いのだ(笑)

 

 まあそのうちって事でいいのよね。THE☆無責任。

 

 パーティが終わったと言っても、偉いさんがこんだけ集まってので、機会としては貴重なんだろう、マイヤさんのお家や街にある各貴族さんの別宅で重要そうな会議だったりパーティは連日続いている。

 

 本番?の各国の偉いさんが来るパーティに向けての段取りを頑張ってほしいです。

 

 えへへ。 

 

 僕も関わる事だから参加して欲しいのかもなぁとか思うけど、まぁ難しい事は大人に任せて、僕はとりあえず日常に戻ろうと思う。

 

 とりあえず、家を取り仕切ってくれているマゼッパさんと相談しながら日常に戻っていこう。

 

 てなわけで、マゼッパさんを捕まえて色々と話をしようとしたんだけども、先日の婚約者騒動を受けて、王族の皆さんがマイヤさんの邸宅から我が家へと滞在場所を変えるらしく忙しそうにしているので諦めた。

 

 むぅーん、屋敷の主を抜いて滞在者が決まっているこのスーパーシステムよ(笑)

まあいいんだけどねぇ。

 

 むぅーん。。。「やること無いねぇ、何しますかねぇ」

 

 なんて呟きながら屋敷の中をブラブラし始めたら、中央ホール(エントランス奥)でキョロキョロとしてるセレネ姉さんと会った。今日はお仕事のお手伝いは無いのかな?普段まとめてる髪がストレートにしてある。私服モード?

 

「あっウェル君居たー!何してるのー?」


「んー何もしてないよ?退屈だからどうしようかなーとか思ってたとこー」


「わーい!ねぇねぇ久しぶりに一緒に遊ぼう!」


「うん、いいよ~。にしても姉さんお仕事は?」


「んー?お父さんもお母さんも貴族様のお食事を作る仕事を請け負ったからお店は休みなんだって」


 なるほど、父さんのレシピで作る料理をパーティで初めて食べたの人も居ただろうし、色々と興味持たれちゃった感じなのかな?

 

 まあ父さん達だし、上手くやるでしょ主に母さんが(笑)

 

「じゃあ、なにして遊ぼうか~」


「んとね、お歌聞きたいでしょ?猫さんとも遊びたいでしょ?ウェル君が作ってたキラキラしたのみたいでしょ?あとお見送りしてくれる犬さんのお話でしょ?えっとえっと......」

 

 おっふ!セレネ姉さんが幼児化してる。まだ10歳前後だし子供なんだけど、新しく出来たお店で働く姿は見てないけど、普段の食事でもテキパキと動くしお手伝いも積極的だもんな。そして宿屋の頃も食堂もお客さんは大人ばっかりってね。

 

 宿屋から食メインのお店になったから、時間の自由はおそらく増えただろうけど、お友達と年相応に遊ぶってのは少ないんだろうね。

 

 しかも丁度姉さんが仕事の手伝いに入っちゃったタイミングで、僕はあちこちで騒動?起こしてるもんなぁ。

 

 ・・・そりゃ弟ちゃんともうちょっと絡みたいよねぇ。

 

「慌てなくても大丈夫!一杯あそぼう!!」


「うん!!」


 よし、そーとなったら遊ぼう!うんうん!!

 

「じゃあ一緒にお歌からしよー、姉さん字って読めるよね?」


「読めるよー?宿帳と貴族様のおつけ払いの時に書かないとだもん」

 

「じゃあ、お歌で歌う中身を書くから一緒に歌おう♪談話室で待ってて!用意して来るね」


「はーーい!」

 

 執務室でお仕事をしているマゼッパさんにお願いして、用途を伝えて仕事場から黒板を借りて来て談話室へと思ってマゼッパさんに説明すると、あれよあれよ言う間にメイドさんが増えて用意をしてくれた。

 

 談話室の広めの場所に、黒板があってその黒板に向かって視聴者用の椅子が20脚位、配置されてしまった。

 

 ちゃっかり観客らしき人も数人座ってる。冒険娘達なんとなくおひさです!

 

 結局ぷちコンサートかな?みたいな配置になってきている。見ようによっては青空教室みたいにも見えなくはない、室内だけど。

 

「じゃあ、ここに歌ってる文字を書くから一緒に歌おうね」


「うんっ!」


 はーかわいい、うちのお姉ちゃん超かっわいい。うんって頷くと青いストレートヘアーがふわぁさぁってなってかわいい。セレかわセレかわ~。

 

 とりあえず、簡単な歌からかなぁキラキラ星が光る歌の歌詞を書いていく。

 

 書き終わったら久々の登場のハンドハープ君ことライアーハープの音を確認しながら、ゆっくりと音を出していく。

 

 3拍子でゆっくりでいいかなー。

 この手の歌って初期に習うだけあって名曲だし奥が深いよね。

 

 「この楽器で弾きながら一度歌ってみるね?」

 

 「うん」ぱちぱちぱちー

 

   「ウェル君の歌久しぶり......」

   「私は初めて聞くぞ?」

   「あらっ?狩りの時に歌ってたじゃないっ」

   「しっ静かに聞く」

 

「きぃーらぁーきぃーらぁー♪ひーぃかー......。こんな感じかな?」


「わー!お歌だ」


「うん、これはお空に光るお星様がみんなを見守ってくれてる事に感謝して歌ったお歌だよ。暗い道を照らしてくれてありがとうってね」


「うん!」


「じゃあ、歌詞を見ながら少しずつ歌ってみよう!」


 何気にセレネ姉さんが歌うのを聴くのは初めてだ。可愛い声してるからカワイイんだろうけども!!!


 緊張しながらも出した声は、か細くて綺麗だったので声に重ねるように歌い出したら元気に歌ってくれたのでヨシ!!

 

 そっかカラオケって何気に歌う事への障壁下げてるよね。この世界だと酔っ払いか吟遊詩人位しか歌ってんの見たことないもんなぁ。

 

 パーティのダンス用に音楽流れてんだから、歌う人もアチコチに居そうなもんだけどね。

 

 まあ僕が世間を知らないし見てないから何だろうけどね。たぶん貴族が歌唱団とか楽団とか持ってそうな気がする。

 

 そもそもスキルに歌があるんだし指導者も居る筈。 

 

 その後、セレネ姉さんに歌を教えながら、色んな歌を一緒に楽しく歌った。二人で楽しく歌たいつつも観客(笑)にせがまれてソロでも色々と歌った。せっかくなので聴衆と化してたマキスさんアレサさんレーテーさんを巻き込んで輪唱をしたりして音楽で楽しんだ。

 

 歌はみんなで楽しくってのは、ほんとに思う。音が重なると楽しくなる。

 

 みんなで歌を歌ってると、夕暮れ時で会議だか仕事だかを終えた陛下達が護衛の騎士さん達を先頭にして談話室へとやってきた。

 

一度歌を止めて、セレネ姉さんを連れて挨拶へと伺う。参加していたメイド隊はすでに壁際に控えて、冒険娘達は椅子から降りて片膝を立てて頭を下げている。かしずく?だっけ?なんだっけ。まあ偉い人に洋風にハハーって感じ。

 

「ウェルギリウス殿、今日からしばらく世話になるぞ。それと皆、もっと楽にせい。頭を上げて良いぞ。ここは王宮ではないだぞ」少し笑いながら、全員の頭を上げさせる。


 頭が上がったタイミングで「この家にいる間は傅く事は無くてよいぞ」と声をかけてくれた。

 

 陛下のお声がけをきっかけにしてイルゼ王妃、デトレフ殿下、リア殿下から挨拶を受ける。ん?陛下が殿かぁ・・・前に呼び捨てでお願いしたような?

 

 「陛下、狭い我が家ですがどうぞお寛ぎください。そして私の事はどうぞウェルギリウスとお呼びください」


 そんな王と平民としては気楽な会話と挨拶を交わしていると、歌教室というか歌会の痕跡に気づいた陛下達から色々と質問をされたので、「歌での遊技です」と説明して、セレネ姉さんといっしょに練習したキラキラ星を歌ってみせた。

 

 歌っている最中のセレネ姉さんがガチガチだったけど、声を寄せれば段々と楽しく歌えていたように聞こえたのでいいしょ。

 

 その後は陛下一行に請われるままに歌ってみたり、リア殿下に同じように教えて一緒に歌ってみたりした。

 

 はーへいわ。

 でもセレネ姉さんと遊ぶ時にブライアン居ないのは寂しいかな......

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