146話 戸惑うパーティたいむ
マゼッパさんの案内でついた席は、王族とかのいるエリアの席だった。
現王の弟とか従妹とかそんな紹介を受けたけど、事前の挨拶や説明が多すぎて名前覚えてないけどね。
ただ王族層は好意的な貴族さんが多かったという印象、たぶん公爵だか侯爵だかだったと思う。言葉で聞いただけだから、どっちかわからんけど。公爵が弟とか近い血縁なんだっけか?
最後入場になっていた僕らが席についた所で、給仕の人が沢山入って来て各テーブルに飲み物が置かれだした。国内偉い人を集めての事前パーティって事だけど、なんというか結婚式の披露宴的な雰囲気だわ。
まあ、こんなもんなんかな?知らんけど。
給仕の人達は見覚えのある顔もチラホラしている。
普段みたいに緩い食事ではないのでキリッと仕事しているのに少しだけ見惚れたというか目を奪われてしまった。
そんな僕を見咎めたのか、隣に座っているリア殿下に小さい声で名前を呼ばれて正面を向きなおした。
はいな、お行儀よくしてまーす。
やがて飲み物が各テーブルに置かれたであろうタイミングでマイヤさんが立ち上がり挨拶を始めた。
「...先にあった神託に伴い、...各国の要人を迎えるにあたって......」
こうやって他の貴族と対面してる姿を初めて見たけど、堂々としていて澱みなくて威厳のある語り口調にマイヤさんも貴族なんだなと改めて思う。
これが貴族言葉っていうのかな?迂遠で難解だ。
すごーく難しくてかたっ苦しい言い回しをしてるけど、ようするに僕を知らない人達、今回顔見せで事前に施設案内とパーティやってんだから、今後やってくる各国の要人対応とか分散して頼みますよ?って事っぽい。
まあ同じ国の貴族としては当然の事なのかもだけど、王都にあるマイヤ邸に居た頃に何かを企んでた教会と繋がりのある貴族も居るっぽい気もするので、釘差しトークも合わせつつって辺りなのかな?
そんな事を考えているうちに、マイヤさんの挨拶も終わり、各テーブルへと食事が運ばれてきた。
各貴族は「これが噂の・・・」「ほぅ・・」等と口にしながら、運ばれる料理を興味深く見ている。
今日の料理はマイヤさん所の料理長と父さんが、メニューを検討してる姿を調理場とかで見かけていたので、まあちょっと気合が入ったものだと思う。
夏休みだかで来ていたから、慣れっこになってるけど王族も居るしね。
地球世界のレシピで作られた料理だからねぇ。あそこは食だけは異様に発達した世界と言っても過言では無いもんな。なんであんなに人類は食に拘ってんだろうね。
こういう場で料理を出していくと面倒も起きそうってのはあるけど、レシピ本を渡した以上は、父さんだったり料理長さんだったりが一人で壁打ちするような真似はさせたくないしね。
うん、料理を出して人に美味しいと言ってもらう、料理人冥利に尽きて欲しい。
そして出てきた料理は貴族階級がざわつく位に、正直この世界のものとはレェエエエベェエエエルが違う。
おもわず雨作りさんっぽく言っちゃう位に差がある。
初めて見る人もいるだろうし、耳の早い貴族やマイヤさんのお茶会に出ている貴族経由で話を聞いてる人も居るんだろうが、みな一様に驚いている様子だ。
これはマイヤさんとしても面目が立つって所なんだろうって思うと、少しだけでも力になれたことを嬉しく思いかけたけど、よく考えたら頑張ったのは料理長さんと父さんだった。
あぶないあぶない、人の手柄奪うマンになりかけたわ(笑)
自分のヤバげな思考に気づいて、自嘲気味に笑顔を浮かべた所でリア殿下に声をかけられた。
「ウェルギリウス様?どうなされました」
「あっああ、なんでもありませんよ」
おおぅ名前の呼び方も話す雰囲気も変わるのね、さすが王族。そういう教育受けてんだろうなぁ。
もう淑女じゃん!淑女!ってかあまりにも大人びてて返事する前に「あっ」とかつけちゃったんじゃん。ちょっとしたコミュ障みたいじゃん。
そのまま他愛のない事を話し合う。リア殿下なりに距離を縮めようと努力しているんだなぁと、どこか客観的に考えながら応対をする。
リア殿下と少し会話をしていると、親し気な姿が都合が良かったのだろうか、王様から全体へ向けて話がされた。
「この度、王家とウェルギリウス殿の合意に至り、わが娘リアとの婚約が成立した事をここに知らしめる・・・」
入場からある程度の予想だったり、事前の調整があったのか知らないけど大きな動揺は会場にはないみたいだ。
ちょっとしたドヨドヨは聞こえるけど(笑)
そのまま、王様より僕の簡略的?な紹介があった。本来であれば王よりも高い地位に居る存在であるとか、豊かな才能にあふれその知識はまさに天から授かりものとか、むっちゃ盛り気味の紹介があった。
……こういう時、どんな顔してたらいいのかわかんない!とりあえずキリッとした顔しておこ。
王様の超盛り盛り紹介の最後に名前を呼ばれたので立ち上がって会釈だけしておいた。
そのまましばらくの時間は歓談という形で食事を進めた。
しかし、王より偉いってなにさ?ここは封建社会ちゃうんかと。
でも神が居る世界だから、神に通じるってのは偉いのか?
わからん、うんわからん......。
そしてリア殿下の婚約者ね。
うーん、別に嫌なわけではないのだけどね、なんというか実感の無いまま話が進んでるなってのが気になってんだろうな僕は。
なんとなく浮ついた気持ちのまま食事を進める。途中でリア殿下と適度な会話をこなしたりしながらも周りの様子をふんわりと確認してみる。
さっきの王様の衝撃?の通達に似た紹介もあって、複雑な視線が飛んできている。
なんだろね、アンタッチャブル?未知への好奇心?金の成る木?婚約者の席を取られた嫉妬?
視線に乗った感情は「ごちゃごちゃしてる」気がするけど、敵意っぽいのは薄いと思う。
まあ、何かあっても僕の体は一つだし、ここに在って、誰にも渡さないので、自己防衛をきちんとしてれば、何をされても思ってもらっても関係ないのだけどね。
んーなんだか思考が拡散する。クインなんちゃらとかいうロボットの拡散メガ粒子砲もびっくりだ。
こういう形式ばったパーティが初めてだし緊張してる?
前世の披露宴とかと比較して異世界感を今更感じてる?
唐突な婚約者という流れに気持ちがついていってない?
うーん、なんだかぐちゃってなってるねぇ。
っていうか、この場を完全に無視して自分の世界に入っちゃってるなぁ。
ひとつひとつを解していってもいいのだろうけど、違和感や問題を解決する為に労を策しても、気持ちの問題なんて実際は解決しないってのはよくある話だしね。解して違和感を強めるとかバカみたいな話が多くなるだけだから踏み込まないで流すべきなんだよね。
そんな虚ろというか、上の空な気持ちのまま考え事が続いて気が付いたらパーティは終わっていた。
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