137話 YUNOのような有能なんちて
礼拝堂のお披露目は、大きな話になって来てるっぽ。
なんでも、この国の王様が各国の偉い人をお披露目に参加させたいらしい。マイヤさんとブライアンズメイドさんの定期連絡で礼拝堂のお披露目を知った王様が、この機会に以前より各国から問い合わせされていた「君の国に神の子がいるの?」「啓示が降りてきたけど何が起きてるの?」「教会はどうなってるの?」等々の説明と解決をしたいとの事。
うん、そりゃそうだよね。さすがに子供だしわかんなーいで放置するのも限界あるし、どこかでやらなきゃだよねぇ。
各種族にも当然の様に王族が居て、教会周りの騒動の際に神様から啓示とか出たんだと思うし、この国に至っては僕が生まれる前にリリさんが張り切って出しちゃった啓示から始まってるとすると8年放置だかんね。
うーん、まだふわっとしか考えてないけど世界というか社会との関わり方を、ここいらで一度整理してしまったほうが楽な気もする。
個人的な事情を考えても、父さんたちのお店も大規模化して、この街に大きな家を持って「帰るべき拠点」は安泰してると思うし、家を継ぐわけじゃない僕の今後を考えると、そろそろ本格的に独り立ちする段取りを進めなきゃって思うんだよね。
でも、あらためて各国の偉い人が挨拶とか言うけど、僕個人としては積極的に政治的な事や世の中を変えることをしたいわけじゃないし、変な利用のされ方とは当然嫌だし、ちょっと大仰なのはねぇ?
ほっといてくれてもいいのよー。
とかいう気持ちが無いわけでも無いけど、まあ我儘だよねぇ。
とか、例によってアチコチに思考脱線しながら、お披露目について話を聞いた。簡単にポイントだけ抜くと、概要はこんな感じらしい。
1.各大陸から王族やそれに準ずる貴族の偉いさんが来る。
2.各大陸から来るのでお披露目は3~5か月後になる。
3.この街の貴族エリアに各種族のぷち大使館を置く。
とりあえずは、国が主体となって進めるらしいので、僕としては各国の偉い人を呼んでもいいですよ、ってのに同意をして必要に応じてお手伝いしますよって事にだけ同意をしておいた。
後は、礼拝堂のお披露目に先立って、この国の王子様と王女様であるデトレフ殿下とリア殿下がやって来るとの事。まあ最終的に来るならいつ来るかってだけの話だから、前乗りするんだなーって程度に理解をしておいた。
・・・・
・・・
・・
・
打合せから、ひと月程過ぎたある日の午後。遊戯室にあるビリヤード台で、ゆるーくボーラードをしながら過ごして居るとマゼッパさんに声をかけられた。たしか今日はマイヤさんの所に詳細の打合せに行っていたハズ。
うちの執事さんは働き者なのだ。主人は玉撞きして遊んでるけど!!
「ウェルギリウス様、本日の午後から夕刻の間に、デトレフ殿下ならびにリア殿下がお見えになります」
ほいほい、前乗り組の王子と王女だよね。うちは出迎え対応しないでいいのかな?
「はーい、ありがとう。マイヤさん達が応対するでいいんだよね?」
「はい、基本はそうなります。晩餐は合同となっており、こちらの邸宅にて催される予定です。後は数台の馬車をこちらに入れる予定です」
ほいほい、リア殿下は前回来た時に家での食事気に入ってたしね。馬車はスぺース問題かな?まあいいよね。
「料理は父さんが作るのかな?そこらへんの段取りってすっかりお任せしちゃってるけど」
「本日はお昼までの営業としていただいて、間もなくこちらに帰ってくるかと思います」
うーんすでに段取り済みだった。
些細も大事も、すっかり任せちゃってるのが申し訳ないけど、出来る人が出来る事に従事するのも幸せの一つだよね(ゲス顔)。うううちはブラック企業じゃありませんので給金はすごく弾むけどね、いわば外資的なのだよ。
やがて日も落ちてきて、父さんたちも帰ってきて夜の仕込みが始まった。僕もメニューだったり作成でチョコチョコとお手伝い。
お手伝いをしながらセレネ姉さんが調理してる姿を見ていると凄く上達してる。うちの調理場は僕でも使えるように、あちこちに昇降台がおいてあるのだけど、そこの上に乗って手慣れた感じで包丁を使ったり、ここにしかない前世の調理器具であるスライサーやピーラーを上手に使っている。
僕は家を継がないけど、セレネ姉さんは継いでいくんだもんな。
父さんの技術が継承されているのを感じると、何とも言えない気持ちになる。なんというか羨ましい気持ちもあるし、単に素敵だなぁと思ったりもする。そして大人目線で大きくなったなと思ったりもしちゃう。実際は僕が弟だけど、はっきりとした自我で子供のころから手伝いをしてるセレネ姉さんをみていたからなんだろうなぁ。
もう、ただのセレかわじゃないのだ。
ちなみに母さんはメイド隊と一緒にインテリアの清掃や配置を確認している。席次なんかも決めるって感じなんだろうね。
お手伝いもひと段落したあたりで、屋敷の外から「王子殿下並びに王女殿下の御到着である」と来訪を告げる声が聞こえた。
父さんに断ってお手伝いの手を止めて、マゼッパさんを連れて屋敷外へ出ると、大型の馬車が編隊を組んで到着していた。
騎士団含めた大名行列然りの絵面にちょっと圧倒された。
落ち着いて見ると騎士隊やお世話係の馬車を率いて総勢100人位かな?大所帯だねぇ。前回の王妃様より多い気がする、まあ王族の大事な次世代だからかな?
それにしても、マイヤさんの家も結構大きな屋敷だから可能なんだろうけど、これ2家で入るの?って思いながらマゼッパさんを見ると。
「はい、こちらのお屋敷にも何台か受け入れる程度で問題ありません」
うーん、チラ見しただけで分かってくる有能っぷりよ。
アレだな?女子は男子の視線なんか分かってるんだからね!って奴だ。胸部装甲パーツを気づかれないで見てるつもりだろうがわかってんだぞ?ゴルァのアレ。
「はーい、段取りとかはお任せするね」
「かしこまりました。事前に特殊なものは隠してありますのでご安心ください」
ん?中世の駐車場こと厩舎と馬ちゃん達の個室馬房だよね、なんかあったっけ?
..................あーあーあーね。家の馬車を改造しようとして、ヴァルカンさんと相談して作った「試作型デフ付きの車軸」とか「タイヤもどきの何層にも重ねたゴム車輪」とかだよね。鐙と鞍もこっちには無い形かもしれない。
ガタガタ道が多い世界だから車輪の負担を減らすために回転差の調整とか木じゃない素材に変更とかしたいじゃん?お尻いたーいとか嫌じゃん?
「ありがとう、なにか基本的に采配はお任せするね。何か困ったことがあったら教えてくださいー」
「はい、それでは私はあちらに行ってまいります」
一緒に行かなくていいのかな?と思ったりもしたけど、まあ領主様が対応してるわけだし充分かなと思って家に戻って父さん達の手伝いをすることにした。
我が家の執事マゼッパさんが有能すぎて家主としてのお仕事がにゃい!!!
ふははは、......家主これでいいのかな?まあいいよね、まだ8歳だし。うん。
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