124話 間引きの為にギルドに来たヨ

 翌日のお昼過ぎに、冒険者ギルドへ改めて移動してまーす。

 

 今回は移動手段を馬車にして、帯同はティアンヌさんとマキスさんです。あんまし大人数で行っても面倒事を呼びそうだしね。

  

 それで、昨日ティアンヌさんに新装備をお渡ししたのだけど、大剣がやっぱりこう鍛冶屋で鍛えられたものとは違って出来がいまいちだった。

 

 質量で誤魔化せるかな?って思ったんだけどねぇ。あとでヴァルカンさんに相談するってことで武器部分は既存の槍を使う事にしたみたい。

 

 馬車に乗ると冒険者ギルドへはすぐに着いた。

 

 ティアンヌさんは、ここで一旦別行動になる。彼女は窓口に向かって行き、領兵側の対応についてマイヤさんからの伝達事項を伝えに行った。

 

 事前協議はすでに終わってるっぽいから支援物資の搬出入などの細々したところの最終決定だとか、なんとか言ってた。

 まあ大筋決まってたら、第一倉庫に入れようが前線のキャンプに配置しようがって所なんだろうね。現場に出る人や出た事ある人で不便の無いように調整しなさいってのがマイヤさんの指示なんでしょ。と勝手な予測をしておく。

 

 マキスさんは、今回参加する作戦に関しての概要説明を受けるらしい。なにやら参加するパーティはリーダーが出て周知しなきゃいけないらしいです。講義はある程度人が集まったら開催するらしく、あと暫くお待ちくださいと言われていた。

 

 「じゃあ私はちょっと依頼まわりでも見て来るわねっ。ウェル君はどうするぅ?」

 

 「んと、参加可能かどうかって所から知り合いに聞いてきます」

 

 マキスさんが依頼方面を見に行ったのを見送ってから、トコトコと歩いて受付まで行く。

 

 「おねーさん、ベルナウアーさんはお忙しそう?」

 

 「あら、ウェルギリウス君だっけ?お久しぶりねベルさん?ちょっと待ってね」

 

 色々な事情を薄っすらと知ってるベルナウアーさんに対応してもらうのが、面倒が無いとウェルは思うのってな訳で指名です。指名料は後で払っておこ。

 

 受付のお姉さんはカウンターの後ろにある居室スペースに行って勤怠データでも見たのかな?すぐに戻って来た。

 

 「うん居るわよ、呼んでくる?」

 

 「はーい、お願いします」

 

 お姉さんが呼び出してくれる間に、周りをボーッと見渡すと、あちこちの冒険者から手を振られた。やっほーってな感じだ。 なんか好感度あがることしたっけ?まあいいか。やっほー。

 

 なんて手を振り返してると、ちょっとイカツイ男の人が、こちらにやってきた。

 

 「おっおう、ウェルだったか銀色のぉひさしぶりだなぁギルドの仕事か?」

 

 ああ、試験の時にお前は悪く無いぞって言ってくれた人だ。おひさおひさ、その説はどーもです。てか銀色のとか仇名っぽいのかっこいいんですけどですけど!

 

 「今日は間引きの登録?に来ましたー。たまには仕事しないとご飯食べれなくなるしね」

 

 「がっはっは、おまえんとこは両親が儲かってるじゃねぇか。今、店でっかくしてんだろ」

 

 「ですねー、あ・・っと狩り帰りですか?装備ちょっとだけ汚れ落としときましょか」

 

 ぺぺぺっっと本人に清浄lv1と防具類への清掃を意識した魔法を使う。魔力の塊で清掃するって感じかなぁ。

 

 「おっなんだサッパリしたな!ってか防具もかよ。すまねぇなウェル坊」

 

 あれぇ。ウェル坊にランクダウンした。銀色のがよかったのにー。まあいいけど。

 

 「いえいえ、小さな汚れって意外と病気の元ですからねー」

 

 「そうなのか、おりゃ難しい事はわかんねぇが覚えとくわ。あとちょっと待ってろ」

 

 イカツイ男は、併設の酒場へ向かっていった。たしか父さん母さんのファンだったとか言ってたなぁ・・・ふむぅ有名だったんだろうかね。父さんがガード型の前衛で、母さんがアタッカーでロトルさんは何してたんだろ。錬金釜から爆弾でも出してたんだろうか笑。

 

 「おうっお代ってわけでもねぇが、のんどけ」

 

 果実をしぼったジュースっぽいものをくれたので、ありがたくいただくことにする。

 

 「兄さんありがとうー」

 

 「おっう!そんじゃ、もうちょっとギルドにも来てくれよ。いつか一緒に狩りにでもいこうぜ」

 

 なんていいつつ拳を前につきだしてきたので、僕もこぶしを斜め前にだしてコツンと友情ナックルをしておいた。

 

 その後ろにみえる女性冒険者の列は、見ないようにしながら・・・・。

 

 まあ綺麗にすることに関わる女性を無視するとかムリなので、並んでいる女性冒険者の対応をしながら、待っているとベルナウアーさんがやって来た。

 

 「ウェルギリウス君、おまたせし・・てないようね」

 

 「あはは、綺麗である事に越したことはないで、じゃあ今並んでる人で終わりにします。一気にやるよビックリしないでね」

 

 「「はーい」」「むりしないでねー」「了解した」「・・・独占したかった」「うふふふ」

 

 と多用な返事を聞きながら、並んでる7人の女性をまとめて綺麗にしてベルナウアーさんと話すことにした。

 

 一部の人が代金云々をいっていたが、今度何かの機会にご飯でもご馳走してくださいって事で勘弁してもらった。なぜかは知らないけど「・・・それはお礼でなくご褒美」という聞きなれた声が聞こえたけど、声の方向は見ないし聞こえないことにした。

 

 ベルナウアーさんと改めて向き直ると、以前にプレゼントした魂が入ってそうなジェムを胸元にアクセサリとしてつけてくれている。・・・大丈夫濁ってない笑。

 

 「で、今回の間引きに参加したいと思ってるんですけど、何か参加資格とかありますか?」

 

 「ええと、間引きは領主様の兵と合同の行軍になるから、基本的に15歳前のウェル君は見習いという枠なのよね。個人で参加してもらうと後方からの物資の運搬や救護班とかになるわね」

 

 「そっかぁ、そうですよね。まだ小さい子を前線には出しませんよねぇ」

 

 「そうね、こちらとしても十分に強いのは知ってるんだけどね。でも個人ではなくて、どこかのPTのメンバーであればギルド登録してあれば何才でも参加が可能になるわよ。ちなみに10才以下だとPTのリーダーとしてPTを組むことが出来ないので気を付けてね」

 

 むむむ、ソロPTです!って言い分は無理か。10才も8才もかわんなくなーい?・・・変わるか笑。

 

 「わかりました。結論的にはどこかの部隊に参加するならPTに入りなさいよってことですね」

 

 うん、こりゃ結果は一択だね。よし、大事な確認は終わったので撤収だ。

 

 「ベルナウアーさんありがとうございました。それでコチラをどうぞー」

 

 人の死角になってるタイミングでお土産をだす。木の箱に保冷用に内部に鉄板と氷が入った箱、仕組み的には簡易冷蔵庫だねー。

 

 「いいえ、どういたしまして。ってこれはなーに?ちょっと冷たいわね」

 

 「えっと、差し入れの甘いものでーす。今日の休憩時間にでも食べてくださいな」

 

 ミルクがあったら脂肪分を分離して生クリーム作るよね。そしたらケーキ作るに決まってるじゃん。って事で、そん中でも一番お手軽なケーキこと、ミルクレープちゃんがホールで入ってますよっと。クレープを10枚前後焼く、生クリーム塗る、カットフルーツ散りばめる、クレープを重ねる。これだけでいいんだもん。スポンジがいらないケーキってのは楽でいいのだ。

 

 甘い物という言葉で、受け付けカウンタ―からの圧がギュッっと上がった気がしたけど、気にしない。


 「もう、あんまり気を使わないで頂戴ね、今回はありがたく受け取るわ」

 

 言葉はキリッっとしてるんだけどなぁ、頬のゆるみと箱に固定された目線がかわええですねっと。

 

 「はーい、結構なサイズあるので切り分けて楽しんでくださいね。それじゃありがとうございましたー」

 

 「はい、お疲れさまでした」

 

 と、きっとギルドは依頼をする場所だから定番の挨拶であろう、お疲れ様が言い終わると同時に奥に小走りで去っていったベルナウアーさんだった。

 

 転生者定番の甘いもので女子を釣るって事をしながらティアンヌさんとマキスさんを待つ。

 

 ティアンヌさんは定型のやりとりらしく、時間がかからなかったので、2人でヴァルカンさんへ依頼する剣の事を語り合った。僕の知識や記憶の中には両刃の大剣ってのがイマイチなくて、某大作大型MMO両手大剣持ちのキャラのスキルくらいしか役に立ちそうな話は出来なかった。ぶんまわしたり全力の一刀を決めたりって具合だね。

 

 そんな具合に長々と話していると、マキスさんが帰って来たので合流して家路についた。

 

 ギルドを出る際に受付嬢の数が少し減っていて、席についている子も、にこやかに、こちらに笑顔を向けたり、手を振ってくれたのは差し入れ効果なんだろうなー。でへへ。好感度げっと。

 

 

 まあ本題的には、戦いたいなら規則としてPTに入りなさいよ。ってことだけかな。

 

 はみ出して目立つってことは避けるべきだから、まあ収穫っていえば収穫かな。領兵側ってわけにはいかないだろうから、ここはマキスさんとこに混ぜてもらうようにお願いしよーっと。

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