123話 れっつ歩いてギルドへ風味
ティアンヌさんと一緒に冒険者ギルドへと歩いて向かう。
馬車での移動ってのもありかな?って思ったけど、ティアンヌさんについて良く知らない部分もあるのでせっかくの機会だしと、のんびりと二人で歩きながら向かうことにした。
門まで見送りに来たメイドさんに抱かれながら、朝食に出た魚の余韻に浸ってるブライアンに「冒険者ギルドに行くけど、一緒に来る?」って聞いたら「にゃー(めんどうにゃ)」と返された。
でも一応お見送りには出てくれて門前でティアンヌさんに「にゃーん(ウェルは任せたにゃ。おこりんぼだからきをつけるにゃ)」と言っていた。
君は僕の保護者か!!あと、そそんなにおこりんぼじゃねーし。たぶんきっと。
同じようにお見送りに出ていたレーテーさんが、僕達に着いて来ようとしてマキスさんとアレサさんに引きずられていた。
「冒険者ギルドなら私たちが行くべ・・・」
「はいはい、邪魔し無いのっ」「まったく見境いがない」
レーテーさんって、なんというか物語のコントパート担当よね、チョロインぢからの高さといいキャラが強いわ。漫画みたいに足を伸ばしたまま引きずられなくてもいいのに。
そんなこんなでバタバタをしつつも無事に?見送られてティアンヌさんと2人で街中を歩いている。
ティアンヌさんは安全な街中での移動ということで、私服に護身用の武器という格好をお願いしている。なんというか、領兵に支給される防具と槍を持った女性と歩く一般人な子供ってのも変だしね。
別に普段仕事着や制服しか見ない女性の私服を見るのってテンション上がるじゃないですか!!
みたいな、よこしまな想いじゃないったらないのだ。
こっここの街は平和だし?僕も有名らしいし?変な事は起きないだろうけど、いかにも要人です!みたいなのは、変な憶測だったり、変なおじさんだったりを引き寄せちゃうからなのですったらです。
誰に言うでも無い言い訳を心でしつつも、ティアンヌさんとデート気分で冒険者ギルドまで、のんびりと会話しながら移動する。
道中でするティアンヌさんとの会話の主軸は、わりかし武術や戦闘に偏った話になることが多い。朝の鍛錬を一緒にしたり王都の旅で魔物退治を一緒にした経験があるってのも大きいと思う。そして、これは本人の本分というか領分から考えると失礼なんだろうけど、こうやって私服で一緒に歩くと従妹の美人女子大生的な感じがするので、会話内容が武術だったり戦闘に偏ってると違和感がぱない。
まあでも、見た目や性別で在り方を定義するのは、ちょっとクレイジーだと思うので、それはそれってことで。たぶん女性的な美しさが、武術や戦闘で負ってしまう外傷とかで損なわれるのが嫌とかいう僕の傲慢から来る違和感だろう。どっちかいうと違和感を持ってる自分がぱないって感じだ。こういう気持ちや思考の深いというか情緒に関する部分は追わないでおこう、違和感を抱く自分に違和感とか謎ループしそうだしね。
並んで街を歩いていると、王妃様が滞在してた余波なのか、街には活気がある。きっと王妃様の休暇とはいえ、近くに来た以上は挨拶しなきゃで来訪していたであろう近隣の領主だったり、豪商みたいな人達が未だに滞在しているのだろう。やや豪華な馬車や大量の買い付けた荷物を運んでいる荷馬車などが走っている。
王族が移動するって事は、見えないところで経済効果を生んだりするよね。まあ当たり前か。そういう意味だと王妃様休暇特需みたいなのを引き込んでるマイヤさんは有能of有能だ。
王妃様が滞在してる感じを見たところ、そんな打算的な人間関係じゃなくて、ただの友達じゃんってやつだったけど笑。
あいかわらず駄々滑りな思考をしながらティアンヌさんと歩く。あっそうだ装備について話しておかなきゃ。
「そういえばティアンヌさん、以前描かせてもらった絵って覚えてます?」
「はい、今は手元にございませんが大事にしております」
気に入ってくれてて良かった。ん?手元にない?
「あれ?手元に・・・」
「実家に飾らせていただいております。父も母も、私の怪我を憂いておりまして治った事を報告した際に飾らせていただくことにしました。」
会話食い気味に回答してきた。知らぬ間にご両親にも治った報告してたのね、王都随行だったりと色々と忙しいかったと思うんだけどなぁ。まあ近くにご実家があるのかな?
「なんだか照れくさいですね、でも気に入ってもらったなら嬉しいです」
「はい!」
・・・ごっきげんである。ここに更に追加DLCをぶっこむウェル君なのだ。追加コンテンツで稼ぐ方式なのだ。1万円の本体を買って追加コンテンツを全部つけたら5万円になる仕組みや。稼ぐのは好感度的なアレなんだけどね。
「あの絵の装備。作っちゃいました」
「えっ?」
固まったティアンヌさんを見ながら、最近は見る事もなくなったフリーーーズ。ぷちゅん。からのリール逆回転演出、ちゃーんす。ぐへへげへへ。なんてユニバーサルな事を考えて自分の中に出て来た羞恥性の何かを隠してしておこ。
ちょっとつっついても動かないままだったティアンヌさんが、数刻後にようやく動き出した。
「あの絵の姿にですか。わた・・しがですか」
「はい、大剣はどうかな?って思いましたけど勢いで作っちゃいました」
領兵としては槍を多用してたみたいだから、どうかなって思ったけれどもね。でも朝は剣の鍛錬もしてるしー、マッサージした感じの骨格や筋肉量からも持てると思ったしー勢いは大事だしー。
「あっぁつありがとうご・・ざい・・ます!!」
感謝の言葉も最後の方は涙声だ、うーんティアンヌさんにしたら閉ざされた人生が転換したタイミングの絵であり姿だもんな。大げさになるのは恥ずかしいし嫌なので僕は軽い感じで話しているのだけど、これをサラっとすませるのは無理があった笑。
なんと表現したらいいんだろう、この世界の人は感激屋さんが多い。ドラマティックな展開の香りが少しでもすると大事になる気がする。
・・・地球にあった刺激の強い文化に慣れてる僕の方が異端なんだよねこれって。
とりあえず、女性を泣かせたまま連れまわすのはウェル君のダンディズム的な部分にダメなので一度帰る事にしよう。帰る提案で申し訳なさを感じさせるかもだけど仕方なっしん。
「さらりと話す事じゃ無かったね。ごめんね、一度帰って出なおそっか」
「はっはい、いえ申し訳ありません。大丈夫です」
「んー、今回は僕の我儘で帰るってことでー。深く考えないで帰ろ」
「はい、ありがとうございます」
いわゆる武人系というか兵士をやるような人が街中で泣いた姿を晒すのは、色々と違うと思うので強制的に帰るのです。
「はい、手をだしてー」
僕は、ゆっくりと出された手を握り締めて、気持ち大きめに振って楽しさを演出しながら屋敷の方向に向き直って歩き出した。
うん、ギルドへは明日行く事にしよう。
今日はティアンヌさんの日。作った装備を着てもらったり大剣の取り回しを2人でワイワイとやろう、うんそんな感じでいいよね。
一時間程度で戻って来た僕を見たブライアンが呆れた顔で「にゃー」とひと鳴きした。
・・・くっ。なんか負けた気がする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます