122話 間引きってなによ

朝起きて、いつものようにエントランス内にある神像にお供えをしている。

 

 このお供えは、屋敷で働く人達にとっても重要度の高い仕事と認識されていて、僕と一緒に神像を巡る相手はマゼッパさんかティアンヌさんになっている。このふたりが居ない時はマイヤさんか、マイヤさんの執事さんが隣からやってきて一緒に巡ってくれている。

 

 お供の序列みたいなもんがある。

 

 ちなみに今日のお供はマゼッパさんです。最近来客が多かったりで、裏方にまわってくれてるけど朝のエントランス巡りは一緒率が高いのです。

 

  お供えする物に関しては、基本的に食べ物とお酒が多いのだけど、出来るだけ世界で育まれた自然の物を出すようにしてるってとこだけど、基本はウェルシェフによる季節のきまぐれコース的な感じかなぁ。

 

 僕のお気持ち的には、世界は健やかに生きています。いただいた恵みを共に喜び合えれば嬉しいです。

 

 みたいな現状の報告と感謝みたいな気持ちってだけで、そこより踏み込んで考えて無いんだけどね。人ごときの過ぎたる考えは邪になりやすいっちゃーなりやすいと思うしね。

 

 おいしくできたよー、いっしょに楽しんでくれると嬉しいな位のが、個人的な想いとしてあればいいのですよ。きっと・・・たぶん。

 

 ちなみに各神像は世界の中心となる神様達だけを象徴化しているので、世界で信仰されている神様すべてを網羅しきってはいない。

 

 例えば、人系の種族毎に存在する神様。

 

 人神、獣人神、エルフ神、ドワーフ神様がそれにあたる。

 

 魔法になってる属性毎に存在する神様。

 

 火の神、土の神、風の神、水の神、癒しの神がそれにあたる。

 

 それぞれに既存の宗教設備や祭壇に祀られているらしい。まあここは又聞きで街にある教会しか見た事ないからわかんないんだけどね、その街の教会も一度しか行ってないしね。

 

 なんでそんなことを考えているかって言うと、王妃様の話にあった各国への神託だ。おそらくここに祀られてない種族毎の神様が出したんだろうなって思うんだよね。

 

 それについて考えると、ここに各種族の神様と属性毎の神様の像も作るべきかな?なんて事を思ったりもするんだよねぇ。

 

 ・・・うーん、エントランスが神像で埋まる気がする。

 

 ここは、申し訳ないけどノータッチでいこう。うん、そうしよう。この世界の神様って数多そうだし、水だけでも海、川、湖を司る神の像をってなったら収拾がつかない気がするもん。

 

 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・

 

 「さて、以上ですね。後はお任せください」

 

 「一緒に運ぶよ」

 

 マゼッパさんと調理場に戻りながら、今日の予定をざっくりと話しながら歩く事にした。

 

 数歩歩いた所で、お供えに使うトレイを全部持たれてしまった。

 

 「ウェルギリウス様、こちらへ」

 

 と手を出されたら仕方ない。過保護というかなんというか、まだ僕が小さいというのもあるのか。


 

 「はい、お任せください。ところで本日のご予定はいかがですか?」

 

 「うーん、特には決めて無いけど、そろそろ冒険者活動もしようかなっては思ってるかなぁ」

 

 「わかりました。そろそろ間引きの時期ですし、ギルドへ顔を出されるのも良いかもしれませんね」

 

 間引きか、噂というか宿でお客さんが話してるのを聞いた事がある気がするけど、詳しく知らない。年に数度街から武装した人が集団で、出ていく姿しか見た事ないなぁ。まあ話の流れ的に冒険者ギルド主体でやってるってことだよね。

 

 「そうなんですね、間引きについてあんまり知らないんですよ」

 

 「ご説明差し上げてもよいのですが、領主であるマイヤ様や滞泊されているマキス様方が詳しいかと存じますよ」

 

 マイヤさんとマキスさん達かぁ、そういえばマキスさん達にはテントとかのグッズも見てもらったなぁ。よしちょっと朝食の時間にでも話してみるかー。

 

 マゼッパさんと軽く予定を話し合った後は、父さんがしている朝食作成のお手伝いをする。基本的にセレネ姉さんがやってるから、僕は配膳くらいなんだけどね。まあタイミングが合わなくて手伝えない事も結構あるし、そこはセレネ姉さんへの料理指導とかもあるだろうし。お任せしときましょうってことで。

 

 今日は王妃様の料理人たちが居なくなった初日なので色々とリズム狂う部分もあるだろうし、お手伝いに参加って感じ。

 

 配膳がおわったタイミングで、ほぼみんなが揃ったので朝食を開始した。僕たちはサンドイッチだったり自由にバケット具を挟む感じのパンが主食で目玉焼きとスープが付いた感じの量を調整できる朝食だ。

 

 朝食には猫も5匹きちんと揃っている。この前、川魚を大量に仕入れたので魚満載の朝食だ。

 

 ブライアンのメイドが各猫の前にだしてる皿には、パンくずと魚の叩きを混ぜ合わせた「練り餌」みたいなものが置かれてる。異世界キャットフードだわわ。

 

 そんな朝食を取りながら、だれに話すわけでも無く全体に向かって会話をしだす。

 

 「今日は冒険者ギルドへ顔出してみようと思いますー。最近全然行ってなかったし、なにやら間引きが近いみたいだし。何かあるかなーって思って」

 

 「あら?間引きに参加するの?うちの兵もでるのでよろしく頼むわね」

 

 マイヤさんとこの兵も出るのか、・・・ってそうか国同士の争い無いって言ってたし、兵の仕事は魔物から領地を守るって事になるもんな。

 

 「うーん、間引き自体を良く知らないんですけどね。なんかあればなーって感じですよ」

 

 なんとなーく、全員が説明は冒険者組の担当と思ったのかマキスさん達に視線が集まる。

 

 「んぐっ間引きねっ。簡単に言うと魔物が大繁殖しないように大勢で森に行って魔物狩りをするってとこかなっ」

 

 「なるほど、それを兵士さん達と合同で一気にやるんですね」

 

 「そうだな、あと街の近くは魔物にとって危険だ。と認識させるという意味合いもあるな」

 

 「ここは人の縄張りだってことですね」

 

 「そうそうっ。街から離れたところで畜産をして生活している人もいるし結構広範囲にやるのよっ」

 「・・・ん。その通り」

 

 「大規模な共同戦線って感じですね。ちなみにもうすぐって話ですけど、いつって決まってるんですか?」

 

 「それは私が答えるわね、ウチからの出兵は3日後から7日間かけて近辺の討伐となってるわね」

 

 ああっ確かに。マイヤさん所の出兵スケジュールでいいのか。

 

 「冒険者は基本的に任意参加だしな。だが討伐に領兵の支援があるから安全なので参加者は多いぞ」

 アレサさんが実態を補足してくれる。なんというか良い先輩感ある人だよね。

  

 「なるほど結構参加するんですね。ちなみに父さん達も以前は参加していたの?」

 

 「ん、そうだな。別の依頼がない時は参加していていたな」

 「そうね、他のパーティだったり、戦闘で同じ役割をする人と一緒に戦うから勉強になったわね」

 

 「そうそうっ攻撃係、守備係、回復係、偵察係、荷物係って具合に部隊をわけて参加するわねっ。具体的には遠距離での攻撃とか細かくわけたりもするけど、そこは集まった人次第かしらね」

 

 「なるほど、説明ありがとうございます。3日後かぁ、参加してみよっかな」

 

 「そうね、私たちも参加する予定よっ」

 「そうだな、強制では無いが街を守る仕事ではあるからな」

 「ウェル君は一緒に参加するべき」

 

 「ふふふ、ティアンヌと一緒に領兵として出ても良いわよ」

 

 ああっそっか、うちに来ちゃったティアンヌさんとも相談しないとなのか。

 

 「あは、後でティアンヌさんと相談してみます。いまは門番してくれてますし」

 

 ちなみにマゼッパさんとティアンヌさんは正式に我が家の使用人っていっていいのかな?専任になってくれている。まあ家が隣同士だし、ズブズブのマイヤさんとウェル君なので仕事の境界は薄いって話だけど、そのおかげで警備周りは交替勤務出来てるしね。

 

 そしてティアンヌさんには専用装備がある。前に絵に書いた大きなツヴァイハンダーを持った姫騎士というTHE・JRPGな恰好だ。こそこそと暇な時に夜なべして作ってるのだ。

 

 でもうちの門番してくれてる間は、着る事も無いだろうって事で渡してない。というか存在すら知らないと思う。ぐへへへ。

 

 ってな感じの軽い悪だくみを考えつつも、朝食を終えた。

 

 そんじゃ、間引きとやらに参加する段取りをはじめますかね。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る