114話 白糸の滝にいきましょう3
川沿いの橋に着いた所で馬車での移動は終わり。
こっから先は馬車で行けないから徒歩ですよっと。
事前の行程説明の時に近衛さんや御者さん達と相談して馬車は、道中にあった休憩所まで戻って馬を休ませてあげる事になっている。こんな道っぺりに停車しておいても食べる草も無いだろうし、かわいそうだしね。
ってなわけで、みんなが降りたタイミングで馬車は休憩所に向かっていった。
ちなみに、連絡網として橋には近衛さんが1人馬付きで残ってくれいる。段取り的には、僕たちが帰るちょっと前に滝に同行している近衛さんが連絡係として橋まで戻って行くという伝言形式になっている。
王族も居る事だし、連絡網はしっかりしないとね。
さて、みんな馬車から降りたしツアーコンダクターとしてはりきって引率しますか。
「ここから川沿いに川上まで登っていきますよー。途中も木々が溢れて綺麗な風景なので、のんびり歩いて行きましょー」
「「「「「「はーい」」」」」」「ん」「わかりましたわ」
全員の元気な返事を貰って歩き出す。ブライアンはセレネ姉さんに抱かれて、キジトラちゃんは冒険娘のアレサさんに抱かれての移動だ。アレサさんが猫と戯れてる姿みたことなかったのでチラ見を二度してしまった。ちょっとはにかんで笑うアレサさんを見た。え?なにそれかわいい。
「しかし、こーんなとこまで来てたのねぇ」
「ん、そうだね。遠くも無いし近くも無いし、ちょうどいい距離だしね。ブライアンに出してる川のお魚は、ここの上流でとったやつだよ」
僕と並ぶように歩いて母さんが話しかけて来る。まあ外に出る許可もらってるとはいえ、子供がどこ行ってるかってのは興味はあるよね。まあ、そんなに出かけて無いけどさ。
「そうそう、ここに来る途中の牧場で飼ってる牧羊犬だと思うんだけど、その子が親切で道中を見守ってくれたりするよ」
「それは、なんというかありがたいわねぇ」
「うん、最初は群れからはぐれた子供かと思って心配されちゃったけどね」
「へー」「そんなこともあるのねっ」「ウェル君は庇護するべき」
「牧羊犬の習性みたいなものなのかも知れないけど、なんかうれしいよね」
「うんうん」
後ろで並んで歩いてる冒険娘さん達も、ちょっと会話に入ってくる。相変わらずレーテーさんはブレない。
そんな感じでゆるーく会話しながら、全員でゆっくりと川沿いを上って歩き、林みたいになってる場所を超えて獣道まで着いた。結構な人数で歩いているから自然を踏み荒らすかな?って思ったけど、まあ通路を作る程度で済んでるみたい。軍隊の行軍じゃないから、簡単には自然破壊にならないか。
「はーい!ちゅうもーくです。ここから先は人の手がほとんど入って無い場所になるので、出来れば手つかずの自然を大事にしつつ、綺麗な景色を眺めながら移動したいとおもいまーす。平和に暮らしてる小鳥やリスさん達を驚かせないようにしましょー」
「「「「はーい」」」」 「ん」「いい事言うわね」「素晴らしい考えですね」
ちょっと良いこと言ってみたい年頃なんです。やめてよ褒めないで照れるじゃん。
「ほんと、静かね。川から聞こえる水の音や、風で揺れる木の葉の音しかしないわ」
「でしょ、街から離れて自然の音だけに囲まれるっていいよね。土と木と水の香りしかしないし」
隣を歩いてる母さんが大きく深呼吸をした。後ろを歩いてる面々も真似をしてる。
「んーほんといい気持ちね」
「ねー、当たり前だけど自然はありがたいよね。石と木と鉄しかない街に居ると忘れちゃうよね」
「・・・ウェルくん、おじさんくさいわ」
「「「「あははは」」」」
8才らしかぬことを言って笑われつつも、獣道を進んで行く。
前回来たのはいつだったっけ、細かい事は気にしないマンなので忘れちゃったけど、その時の足跡や払った枝の跡らしきものは無くなっている。自然の復旧力って結構すごいな。前回はマイヤさんが居たから、結構歩きやすく払った記憶なんだけどな。山って人が入ると結構跡が残ると思ったんだけど違うのかな?まあいいか、いつものまあいいかだ。考えて分からんことは考えない。これストレス溜めない良い方法。
色々考えたり、自然に見とれて足を止めたりしつつも進んでいくと、ほのかに滝の音がして来た。もうすぐ着きそうだ。
「はーい!ちゅーもーくでーす。間もなく滝につきまーす。川や滝から飛び散った水分が足元を濡らしてますので、転ばないように注意してくださいー。大人の人は子供たちをよく見てあげてくださーい」
「「「「はーい」」」」 「ん」「にゃー(ウェルも子供にゃ)」
ブライアンからの的確なツッコミがあったけど、気にしないでおこう。林の獣道から川沿いに寄って行って傾斜を少し下りたら、いつもの滝前の河原だ。さすがに草木では無い場所は歩いたというか整備した跡が残ってる。
「ここを下れば、目的地でーす。滑らないようにね」
まあ、以前にマイヤさん達と来た時に少し整備したから平気だと思うけどね、一応ね。そんな声をかけながら僕も慎重に下りる。ここでこけたらカッコ悪い。
そしてそのまま僕に続いて全員が慎重に傾斜を下って無事に河原についた。
「お疲れ様でしたー。ここが目的地でーす。怪我とか体調不良ありませんかー」
「平気ですっ」「ありがとー、ないでーす」「大丈夫ですわ」「ないよー」「ん、問題ない」
各々のまばらな返事を聞きながら、滝と近辺を見渡す。ん、大きな変化も無いし、近くに大型の動物や魔物も居ないね。よし!安全。
「問題が無いようなのでー。ここからは自由行動です!僕はこれから簡単な設備を作成に入りますので皆さんは各自で好きなようにお過ごしください。釣り竿だったり、網とかの遊び道具はまとめておいておくので好きにつかってくださいー」
いつ作ったのか忘れたけど、釣り竿や木製の円盤やタモというか虫取り網なものをアイテムボックスから、近場にあった平たい石の側にドンドン出していく。
「わー」「これなになに?」「用意が良いわね」「ありがとう」
「木の丸いやつは、投げ合いっこをして遊ぶものだよ。こんな感じ、父さんキャッチよろしく」
円盤を胸の前に巻き込むように溜めて、父さんの居る方向に手首を速めに返して飛ばす。
「ん、おお。なるほど」
横回転しながら、円盤はふんわりとした軌跡を描きながら父さんの胸元に届いた所でキャッチされて、父さんが見様見真似で投げ返す。ちょっと速い。さすが元冒険者っていえば良いのか?器用だ。
「こうやってお互いになげっこする感じだね」
木製の円盤だけ初出だったので、父さんと戯れつつ説明してみた。後はガヤガヤとみんなが手に取っ楽し気に騒いでるので試行錯誤しつつ遊んでもらおう。とりあえず必要な物を作りますか。
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