113話 白糸の滝にいきましょう2
キジトラの子を抱えてエントランスで待っていると、メイドさんがやって来て父さんが調理場で呼んでると伝えられたので調理場に向かう。
そうだった、食材とお昼を運ぶんだった。
すっかり忘れてたことに気恥ずかしい気持ちになりながら調理場に着くと、料理人さん達にまじって父さんが昼食を作っていた。
「ごめーん、父さん運ぶの忘れてた。どれを運ぶの?」
「ん、そうか。後ろのテーブルに置いてある奴だ」
楽し気に調理してる父さんの後ろ側をみると、籠に入ったパンや生のお肉、そしてカットされた野菜などが置いてあったので、それらをドンドンしまっていくことにする。
ん?飲み物類が無いね。父さんはなんか考えてるかな?
「父さん、飲み物類ってどうしよっか?」
「ああ、忘れていたな。選択は任せる」
「わかったー。今日は大人も居るから少しだけお酒もっていくねー」
「ん、自分たちが飲める物も持っていくんだぞ」
「はーい」
冷蔵庫から、果汁系でつくったジュース、それとお茶なんかを取り出す。結構な人数居るから沢山いるよね。護衛で近衛さんとかも来るだろうし。とりあえず目についた物をドンドンしまう。まっ多い分には問題無いでしょ、嵩張るわけじゃないしね。
今用意出来ている物をしまって、父さんの仕掛かりの料理分の準備を椅子に座って待っていると、マゼッパさんがやって来て馬車台数や護衛体制について相談というか報告を受けた。
大人6名が載れる大型の馬車を1台と4名が乗れる馬車を2台マイヤさんが貸し出してくれるとの話だった。調整ありがとうございますー。貴族の馬車なので大人6名とかいってもゆとりあるだろうし、多分全員を余裕で運べるでしょ。
それからしばらくの間、仕掛かり分の調理を待って。できあがったものをしまって行った。ある程度作った時点で、父さんがこれくらいだろうと言って自分も着替えに行ったのでエントランスに戻ることにした。
エントランスに着くと、おでかけの準備を終えた面々がすでに集まっていたので、近衛の人も呼んで簡単な行程と、今日の趣旨説明をしておこっかな。警備的な問題もあるだろーしね。
「父さんは、お昼の用意も終わったので着替えてすぐ来ると思います。えっとそれじゃ簡単な行程を説明するね」
「「「「「「はーい」」」」」「「「「お願いします」」」」
「今日は、この街を出て右側にある川を川上に向かって歩いて滝まで行きます。川にある大橋まで馬車で移動、そこから徒歩にて山道を歩いて現地着となります。えっとこれは近衛さん向けなのですが、現地の安全については、以前にマイヤさんも訪れてますので、ある程度は安心してもらっていいと思います。現地に着いたら自由行動!!ただし、あんまり遠くに行ったりしない事!危ない事はしない事!そして水場なので濡れてもいい格好と着替えのご用意はお忘れなく!って感じかな?」
「ウェル君、商人さんみたいね。それにしても着替えはあったほうがいいの?」
商人かぁ、そうかツアーコンダクターなんて居るわけないし。そもそも旅行を斡旋する仕事がないのかぁ。あって商人の伝手で街を移動ってことなのかな?まあ、いっか。定番の深く考える所じゃないってやつだ。
「んー、せっかく水場に行くから、ある程度は水と戯れたいなって思うならってとこだね。滝自体は飛沫は少ないから、近づかなければ濡れるって程じゃ無いと思うよ」
「なるほどねっ、じゃあ着替え持ってこうかしらっ」
母さんの質問へ答えたところで、マキスさんが水遊びをすることに決めたらしい。なんつーか楽しむ時に楽しめる人って好感度高いよね。
「うん、現地を整備していいって許可も貰ったし、着替え出来る場所も作っちゃうから、安心して濡れちゃってください笑」
そんな僕の追い打ちが決め手になったのか、皆は濡れても良い服と着替えを用意しに部屋に戻っていった。やっぱ楽しむなら全力だよね。
それから、水遊び用の服と調理服から着替え終わったみんなで、馬車へ乗り込み滝へと出発する。馬車の乗り合い分布は冒険娘+メイド隊+キジトラ、バックス家+リア殿下+ブライアン+近衛、護衛+荷物とか飼い葉と何かあってもいいように戦力を分散している。まあ魔物も街道沿いには来ないけど一応ね。
そして一応といったら語弊があるけど、王族であるリア殿下が居るので馬車は行軍のようにしっかりした陣形を保っている。前と後ろに騎乗した近衛さんが2名づつ配置されて3台の馬車が連なっての進行だ。
キジトラちゃんはブライアンと離れちゃったけど平気かな?って思ったけど、マキスさんの抱っこに大人しくしてなにやら会話してたので大丈夫かな。
ちょっと思い付きの割に大所帯で出かける事になったのでバタバタしたけど、無事に出発した馬車は街を抜けて街道に出て、ガタゴトいいながら進む。
王都に行った時もうっすら思ったけど、いづれかの転生物語みたいに板バネだのショックアブソーバを作ったりしてもいいかもだけど、バネとかガス注入とか超テクがいるものは、あんまり作りたくないのだ。大人になって自分で世界を歩くようになった時に移動手段は作ろうね程度でいいのだ。
「・・ル君!」
「わっ、ごめん考え事してたよ。なになに?」
「もー、聞いてなかったでしょ。猫ちゃん達に名前をつけないの?ってお話しだよ」
「えへへ、ごめん。そうだね、家に居てくれるなら名前つけないとだよね。でもせっかくお話し出来るから当人っていうか当猫?にお話を聞いて見てからがいいかもね。親や地域に付けて貰った名前があるかもだしね」
「んー、そうだね。ブライアンは何か聞いてるのー?」
「にゃー(みんな名前はないにゃ。人間みたいに名前で呼ぶことはないにゃ)」
「そうなんだねー。名前って付けてもいいの?」
「にゃー(だいじょぶにゃ)」
はえー、猫同士では名前で呼ぶこと無いんだ。まあ名前って高度だよね、文字ありきだしさ。にしては自分達が名前で呼ばれると分かるんだよねぇ。言葉を理解してるのか音の連続までを判別してるのか知らないけどね。
「じゃあ、かえったら猫ちゃん達に名前をつけてもいーい?」
「いいよー姉さんに任せるよ。ブライアンの名前は僕が付けたしね」
「わっワタクシも、その名前を付けてもいいのかしら?」
「もっちろんだよー」
「はい、大丈夫だと思いますよ」
そんなワイワイとした子供たちと、その会話を微笑ましそうに眺めている大人達を乗せて馬車は順調に川沿いの橋まで進んだ。
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