108話 3人で遊ぼう、その壱
セレネ姉さんが付き合ってくれた神様周回も終わり、談話室に移動してリア殿下が来るのを待とう。
「姉さん、今日はどんな事して遊ぶ?」
「んー、何しようか。でもリア様が来てから決めよー」
「それもそっか、そうしよっか」
「うんうん、その方が楽しいよ」
メイドさんにお茶を出してもらいつつ、リア殿下の準備とやらを待つ事にした。
セレネ姉さんには3人で何するか考えようとか言われたけど、王女として生活していたリア殿下と子供の頃から宿屋の手伝いをしていたセレネ姉さんに遊びを求めるのは、なんとなく無理な気がするので、こちらから提案出来るものを少し考えておくとしますかね。
・・・なんだろ10才くらいの女の子の遊びって、おままごと?編み物?
ほどなくして、近衛さん1名とメイドさん1名を連れてリア殿下が談話室に来た。朝食時とは服装が変わっている、遊ぶという事で少し動きやすいように小さめの膨らみになったスカートに履き替えて来たようだ。まあ、さすがに王女殿下ともなるとパンツルックってわけにはいかないのだろう。
「お待たせしてしまいましたか?」
「だいじょうぶだよー」
「待ってないですよ」
ちなみに王妃様と王女様に対する敬語に関しては、初日の夕食後にメイドや近衛含めた全員を集めて、王妃様より告知というか通告があった「この休暇中と領主邸及びウェルギリウス殿の邸宅においては、敬語及び敬称に関する事柄は不問とする。だがくれぐれも、お互いに敬意と尊重を忘れる事なきように」と王族モードで明言して頂いたので問題は無い事になっている。・・・時々、近衛の人が王妃様のお気楽モードにピクッって反応してるけどご愁傷様です。慣れてくださいって感じ。
リア殿下もソファに座って落ち着いた所で、一緒に何して遊ぼうかって話題になった。
「今日は何をいたしましょうか?」
「うーん、なにしよっかー」
「そうですねぇ、女の子が楽しい遊びですよね。手軽でお家で出来て・・・うーん」
「んー、ウェル君も楽しい事だよ」
おぅ、たしかに3人で遊ぶんだもんね、うちの姉は優しい。セレやさが極まり過ぎだと思います。
「ありがと。それで1つ思いついたのがあるけど、えーっと説明しづらいな。なんて言えばいいんだろう、機織りって言えば伝わるのかな?」
「「はたおり?」存じ上げませんわね」
「えっと、たぶんお洋服屋さんとかにあると思うんだけど、糸を自分で組み合わせて布をつくる機械の事をなんだけど、縦に長い糸に横から糸を通して編みこんでいく感じのやつ」
「織機でしょうか?」
おりき?ああ、機織りの織りか。うん、織機っていうね。うぇーびんぐまっしーん。日本語のはたおりのはたってなんだ?まあいいか。
「そうです!それです。それの小さい奴を作って3人で飲み物を置く布とかを織ったらどうかな?って」
「刺繍を習ったりはしてますけど、布そのものは作った事がありませんね」
「でも、ウェル君。織機って持ってるの?」
「そこはズルして錬金で作っちゃおうかなって、糸を上下に張れて真ん中に通せればいいだけだと思うし」
今から材料用意するのも大変だしね、これくらいの便利使いは良いでしょ。誰に禁止されてるわけでもないしね。
「織機を・・・作るんです?興味が沸いてきました」
「うんうん、やってみよやってみよ」
「はーい、じゃあ織機だけ作っちゃうね。えっと後は糸か、さすがに手持ちは無いなぁ」
これは申し訳ないけど、織機を作ってる間にメイドさんに買って来てもらっちゃおうかな。メイドさんにお買い物を頼むのは、普通だよね?いいんだよね?
「ちょっといいですか?・・・」
扉近くに立っていたメイドさんに声をかけて糸の手配をお願いする。必要な経費等はマゼッパさんへ相談してくださいとお願いした。そして手配に向かったメイドさんを見送りながら織機の構造を考えて頭の中で形にしていく。
単純に考えると上下に糸が張ってあって横から糸を流して編み込むだけだよね。ってことは、縦の糸を釣り上げる機構と横の糸を通した後に編みこむ機構だけあれば成り立つのか。恩返し系の鶴もそんな感じでギーパッタンしてたし。
「またウェル君考え込んでるー」
「あはは、織機の仕組み考えてたんだ。待ってね、ちゃちゃっと作っちゃうね」
アイテムボックスから材料になりそうな金属類を出してウニョウニョと動かしながら作る。直線と直線の結合部分も錬金だと一本になるから楽だなぁ。
大枠を四角くというか長方形に作って、縦の長い部分にスライドする機構をつける。ここは油でもさせるように細い溝でも作っておくか。ってかガイドレール作ってパタンと手前に引く側に球入れてスライドしやすくしとこ。
・・・うにょりうりょり、と金属が動いて子供の手には少し大きめで大人には小さめな織機を作っていく。
「すごーい、なにこれすごーい」
セレネ姉さんが幼児化してしまった。ん、ああそうかぁセレネ姉さんは錬金でこうやって物を作ってる所をみたことが無かったかもしれないね。リア殿下は口元に手をあてたまま固まっている。私驚いてます!というポーズですね。はい、びっくりくりくりっくりってね。
「できたかな?ちょっと確認してみるね」
金属をウネウネしたのに、まったく熱を持ってない謎パワー。とりあえずスライドの機構と上下に糸を張る部分の均等間だったりを目視で確認してみる。んー多分想像通りにできたかな、カチャカチャと動かしてみても違和感がない。後は糸を通せばいけるかな。
「よし、大丈夫みたい。ふたりの分も作っちゃうね」
「はーい、よろしくねー」「おっおねがいします」
ふっふるふる、ふっふふる♪と熟してないバナナを剥い逆さまにしたような鼻歌を歌いながら、セレネ姉さんとリア殿下の分をつくっていく。お揃いがいいかなぁ、うーん色違いのがいいよね。さっきと同じようにアイテムボックスから金属を取り出して作り込んでいく。
・・・うにょりうりょり。うにょりにょり。
「はい、出来たよ。これがリア殿下の分でこっちが姉さんの分」
「すごいすごいキラキラしてる。これもらっていいの?」
「うん、もちろん。結構重いから気を付けてね」
作り込んでる最中から固まりだしたリア殿下を脇に、セレネ姉さんは大興奮である。まあ嬉しそうで何よりです。うんうん自分専用っていいよね。専用機は大事。三倍速くなれるしね。
とかバカな事を考えていると、糸の手配をしてくれていたメイドさんが戻って来た。
「お待たせしました。こちらになります」
「早いですね、屋敷の中にあったのですか?」
「はい、屋敷内の布製品や衣類の修繕用に一通りの糸は揃えてあります」
やけに早いなと思ったら、そっかカーテンやシーツとかの軽微な修繕もするか、そりゃするか。ハウスキープってそういうことだもんな。
「なるほど、わかりました。ありがとうございます」
「はい、また何かありましたらお申しつけください」
メイドさんはススッと扉の方に移動して、安定の見守りポジションに移動した。
ふむ、楽し気にカチャカチャと織機を触ってるセレネ姉さんの側に居るリア殿下が固まってるので、そろそろ再起動を促しておきますか。
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