101話 マゼッパさん確定
「ウェルくーん、朝だよー」
カチャリとドアノブが回る音がして、セレネ姉さんが部屋に入って来た。
「おっはよー、もうご飯出来てるよ」
「姉さん、おはよう。身支度して食堂に行くね。起こしてくれてありがとうー」
「はーい、まだみんな集まって無いからゆっくりで大丈夫だよ」
セレネ姉さんは、そのままパタパタと走って部屋を出て行った。同じように朝の挨拶をしてるので寝ている人を起こして歩いてるっぽい。さすが宿屋勢、朝が早いし生活のリズムがしっかりしてる。
せっかく起こしてもらったので、パパっと着替えをして顔洗ってきますかね。
身支度を終えて食堂につくと、母さんとメイドさんが和やかに談笑しながら配膳をしていたので朝の挨拶をしておく。
「おはよーございます」
「ウェル君おはよ」「おはようございます」
「昨日は父さんと調理室にずっといたけど、お風呂とか大丈夫だった?」
「ええ、大丈夫だったわよ。広くて素敵だったわ」
何事もないなら良かった。まあ調理室にいたし、なんかあったら来ただろうしね。じゃあ配膳を手伝いますかね。
「配膳手伝うねー」
「はーい、バックス君が張り切って作ってるからお願い」
「あはは、りょうかーい」
昨日は夜遅くまで、道具や設備の使い方を教えたしね。僕が居ない所で自由に使ってみて、どんな塩梅か確認もしたかったんだろうね。
「父さん、おはよう。出来たのから運んでいいかな?」
「ん、おはよう。いいぞ、この冷蔵庫だったか?にあった食材を勝手に使ったが良かったか?」
「もちろん、父さん達が来るのにあわせて買っておいたものだしね」
「む、すまんな」
「きにしなくていいよー」
なんて軽い会話を交わしながら、出来上がったものからワゴンに乗せていく。父さんの料理を運ぶのも、なんだか久しぶりな気がするなぁ、まあ宿屋はセレネ姉さんが継ぐからって手伝いはしてなかったけどね。
サクサクと配膳して、セレネ姉さんに起こされた組が食堂に来た所で、まだ追加を作ろうとする父さんを「朝食なので程々に」と軽く諫めて食堂に向かった。
そのまま食事を開始して、今日の予定や一晩泊まってみて暮らしづらい所が無いか等をざっくりと聞いてみる事にした。
「一晩泊まってみて、生活しづらそうな所とかありました?」
「私たちは特にないわねー、普段はお世話する側だから快適に過ごせたわよ」
「そうだな、少し豪華な部屋で驚いた位だな」
「夜に寝る用のお酒もあったしね」
「広いお部屋でお姫様だったみたいだよー」
「にゃー(久しぶりにセレネと寝たにゃ)」
我が家のメンバー的には問題なさそうだね。ロトルさんは寝酒派なのか、ウチにはあんまりお酒ないから数揃えてもいいかもね。ブライアンは時々、実家に行ってるじゃん。3日一緒に寝ないと久しぶりとか思うタイプの猫か。
「それなら良かった、何回も言うけど自分の家だと思って寛いでね?お酒は僕が飲めないから、数がないんだ。後で揃えておくねー。とりあえず問題無しでいいのかな?」
「そうね、問題はないわよー」
「そっか、ならよかった。マキスさん達はどうでした?」
「特に生活しづらいっとかは無いんだけどっ本当にお世話になっていいのかしらって思うわ」
「文句のつけようが無い暮らしにはなるんだがな・・・」
「・・・快適。ここにはずっと住みたい」
ん、こっちも問題なさそうだね。ずっと住むのはどうかと思うよ?ここでメイドでもすればいいかもだけど。
「みんな問題無いみたいだね。困ったことは各自の裁量で好きにしていいからね」
「「「はーい」」」「わかりましたっ」「ん、すまんな」「承知した」
その後は、和やかに雑談なんかをしつつ直近の予定なんかを話しながら食事をとっていたんだけど、各種連絡事項があった事を思い出して伝えておくことにした。
「僕から連絡なんだけど、まずは庭のブライアン用につくったお家が今日できあがりますよってのと、数日中にマイヤさんの所に王妃様と王女殿下が休暇を利用して、いらっしゃるみたいです」
「ってことはお隣の領主様のお屋敷に泊まられるのかしら?」
「そうだと思うよ、どうもふたりが学友だったみたいで仲良いみたい」
「そういえば、何年か前にもいらしてたわね」
ふーん、結構きてるのかな?まあ王都で見た時も仲良しだったもんな。
「そなんだ、ここってお隣と庭が繋がってしまっているので失礼の無いように気を付けましょうって感じだね」
後は、なんかあったけかな。まあその都度でいいか。
「後は、問題あったりしたら些細な事でも相談してくださいねー」
全員から了承をもらえた所で食事もおわって、各自で自由行動とした。
僕はどうしようかな、今日は猫別邸が出来上がるので、それの確認かなぁ。
まあすでに出来上がっていて後は清掃と書類まわりの確認と実地確認して引き渡し位なんだけどね。
今は滞在する人が増えた所なので、新しい何かをするのは混乱の元だろうから、のんびりと家で過ごしつつ立ててくれている業者の連絡待ちますかね。
そのまま談話室へ移動して窓越しに、猫別邸の最終チェックらしきしてる業者を眺めながらお茶を飲んでいると、最近秘書よろしく給仕や手伝いをしてくれているマゼッパさんに話しかけられた。
「ウェルギリウス様、少々宜しいでしょうか?」
「はい、なんでしょう?」
「先日お話のあった使用人を手配する話ですが、お屋敷に滞在する方も増えた事ですし、早急に対応したいと思っているのですが」
ああ、そうだね。お世話する人雇わないとね。マゼッパさんは自分でやりたいんだっけか。ここらではっきりしておくかー。
「そうですね、必要な職種と職能と人数ってどれくらいになるのかな?僕としては執事1補佐1メイド6衛兵4料理人2くらいかなって思ってるんだけど、どうかな?」
基本的に偶数にしておけば、交代制でとりまわせるんじゃないかな的な大雑把な感じだけどね。
「はい、お屋敷のサイズを考えると妥当かと思いますが、今後身分が上がり貴族となるのであれば早い段階で、専属の騎士団候補として衛兵を増やすのもありかと思います」
「んんん?貴族にはならないよ。王様にも話してあるしね」
そっか、マゼッパさんの前では明言はしてないのか?した気もするけどね、まあいいか。
「そうなのですか?私はてっきり」
「そんな簡単に成れる物でもないでしょ。それに派閥だ権力闘争だってのも面倒そうだしね、衛兵に関しては、庭がマイヤさんところに繋がってるのもあるし一応ねって感じだよ」
「なるほど、かしこまりました。それではその人員で手配をしようかと思いますが宜しいですか?」
「任せちゃう形になるけどいいかな?それと少し前に、うちの執事になりたいって話しがあったかと思うんだけど、それはどうなったの?」
「はい、今回の手配にあわせて私を任命していただければと思います。マイヤ様からも了承を頂いております」
なるほど、もうすでに調整すんでるのね。ほんじゃいいかな。別に不満ないし。ちょっと過度な信仰があるような気がするけど、気のせいだってことにしておこ。
「わかりました。それではマゼッパさん改めて僕を宜しくね」
「はい、こちらこそ宜しくお願いします」
うん超笑顔だ、初めにあった頃からは想像できませんな。ふひ。まあ喜んで仕事してくれるってことでいいかな。
「じゃあ金庫番含めてお願いしないとって感じかな、何も無いと動かせるものも動かせないよね」
「はい、ある程度ご用意いただければと思います」
アイテムボックスから、雇用にかかる費用と当面の運営資金として手持ちの金銀の棒を数個と各種貨幣を適当に多めに取り出して、管理を任せることにした。
「簡単でかまわないので、月毎に収支をまとめて教えてくれると嬉しいです。まとめ方はお任せします」
「はっはい、かしこまりました」
どもったのは量が多いんだろうな。なんか金庫とかいるのかな?まあ必要だったら頼んでくるでしょ。そこらも含めてお任せじゃい。
「さっきの話じゃないけど、身分がある身じゃないし楽しくお仕事してくれると嬉しいです。雇い主だぞーって威張るつもりもないしね」
「はい、ありがとうございます。それで、さっそくですが使用人は面接なさいますか?」
「いや、いいよ。お任せするよ。悪意のある人はエントランスで弾かれると思うし」
「なるほど・・・」
「世間に影響のある各種秘密があるので、そこだけ守れるような人を難しいかもだけどお願いしますって所かな」
「そうですね、そこはマイヤ様とも事前に相談してありますのでお任せください」
「はーい、よろしくね」
「それでは、さっそくですがとりかかります。この場は失礼します」
「いってらっしゃーい」
マイヤさんが軽快な足取りで談話室を出ていくのを見送ってから、しばらくの間、今後の事や王妃様対応って僕もするのかなぁとかとりとめの無い事を考えながらお茶をしているとメイドさんが来て猫別邸の業者庭先にて待っていると伝えられたので向かうことにした。
庭先に出て猫別邸に歩いていくと、今回の作業に関わった人員が整列しており、親方っぽい人と事務員みたいな人がこちらに来て、今回の工事についての説明と材料工費等々の明細書を渡された。なんだかマイヤさんがお代を持つ的な話もあったので詳細はマゼッパさんに任せよう。
軽くみて検算したけど、大きな違いもなさそうなので受け取って後で連絡をすると伝えた。
そのまま、親方と事務方と僕で出来上がりを確認していき、一部出来てない部分は値引き対象にした。構造はわかるけど技術がついてこなかったらしい。明細にも明記してあったのでよしとした。
とりあえず、これで猫別邸がかんせーーーい。
後の細かい事務的な部分はマゼッパさんへお任せするとしよう。ははは執事になったのだから働いてもらうのだ。
そんな感じで、親方と事務方と作業員にここでの仕事は完了と伝えて解散していただいた。まあアレですお祝いにお酒だしたり食事ふるまったりするつもりは無いのです。あははは。
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