100話 これは良いものだ

 父さん達の各部屋への案内は、メイドさんと得意げにしっぽを左右に振って先導してるブライアン先生にお任せしたでござる。

 

 というか何を言うでもなく「ご案内します」と各グループに一人付く形で分担してくれたのでお願いする暇もなかったんだけどね。

 

 その間はエントランスで雑談して待つことにした。残ったのは数人メイドさんと、マゼッパさん。

  

 その雑談で判明したのだが、マイヤさんの所のメイドさん達は今回のように王都へ行ったりして主人が不在になると、交代で休暇をとったりしているらしい。

 

 だけど、今回はこっちで引っ越しがある為に休暇を返上して応援にきてくれているとの事。

 

 なんだか申し訳ない気がするので、近日中になにかしらのお礼をしておこうと思う。

 

 そんな雑談をしながら待っていると、父さん達やマキスさん達がワイワイにゃーにゃー言いながら階段をおりてきた。とりあえずの荷物を開梱と自分の物かのチェックだけして来たって感じかな。

 

 「おかえりー荷物と部屋割りは大丈夫そう?」

 

 「ええ、大丈夫よ~、しかし沢山のお部屋があるのね」

 「はい、大丈夫ですよっ」

 

 何となく、うちの家族は母さんが代表で冒険娘はマキスさんが代表って感じなのかな。返事の主が2人だねぇ。まあ納得感あるけど。

 

 「あはは、僕も最初はびっくりしたよ、とりあえず生活に困らない程度に建物を案内をしようかなって思うけどいいかな?」

 

 「「はーい」」」「わかりました」「お願いしますっ」「ん、たのむ」「にゃー(にゃー)」

 

 ブライアン雰囲気で返事しただろ。君もう住んでるよね?

 

 「1階はエントランスホールと、さっきまで居た談話室、そして執務室、調理室、食堂、倉庫、書庫、メイドさんの待機室、浴室って感じの作りだね。とりあえず使わないだろう倉庫とかは省いて、共通の設備周りをメインで案内するねー」

 

 「「「はーい」」」

 

 「まずは、ここエントランスだね。ここには神様の像が象徴化されて飾ってあるので、像の下にあるプレートをみて信奉する神様がいたらお祈りをしてもいいかもしれません」

 

 「これは元からあったものじゃないわよねぇ・・・」

 

 「そうだね、引っ越してきてから作ったよ。前に約束もしてたしね」

 

 「そうね、そうよね」

 

 ・・・

 ・・

 ・

 

 エントランスの各所に配置されている像と神様の名前、そして司るものや権能を軽く説明してまわった。

 

 世界にはこの神の他に各属性や種族を司る神様もいるらしいけど、とりあえず自分の知ってる範囲と関わってる神様だけをここに置いてますって感じで軽めに説明しておけばいいよね。

 

 大丈夫だと思うけど粗雑、粗野、粗暴な扱いはしない事だけはお願いしておかないとか。ここでやらかす人は居ないだろうけど、何かあると直結して罰が当たる気がするので一応忘れないようにしよ。

 

 ああ、あとは天使さんズか。今は像のままだね。まあ、あっちで仕事も多分あるだろうしね。

 

 「あとは宿にあった天使像をここに置いているのですが、ここだと自由に受肉出来るみたいなので、たまーにそこらへんを散歩してたりお風呂にいたりしますけど、邸内で会っても驚かないでくださいね」

 

 なんだか駆け足で説明してるけど「はーい」「わかりました」「かしこまりました」等々の各々の返事を貰ったのでよしとしましょ。

 

 「えっと次は、談話室はさっき行ったもんね。ここからだと食堂と調理室か。こっちでーす」

 

 とりあえずエントランスから食堂に向かって移動。この動線は良く使うだろうからね。

 

 「食事はここで取ることになりまーす。椅子とテーブルに関しては、ウチは貴族じゃないので好きな場所に座って良いという事でお願いします。ただ相手が貴族の時は配慮してくださーい」

 

 食堂は、もうただの食堂なので取り立てて説明する事はないので「はーい」と言う返事をもらったら後は物見してる人を待ってあっさりと説明完了。

 

 まあ主が館を案内するって形式が大事ですから、こういうのは多分。

 

 ちなみに母さんとセレネ姉さんが配膳のルートを確認してるのが、さすが?って思った。その胸に宿る給仕魂よ!みたいなもんですかね。

 

 続いては調理室だね。なんというか時代と世界にあわせて言うと厨房でいいのかな。ん?何処の世界でもそうなのか?まあいいか。

 

 「次は、調理室だね。使うのは父さん位かな?まあ誰でも使っていいんだけどね。そして、ここがもしかしたら一番手を入れてる場所かもしれない」

 

 

 おほほほ、お父様を驚かせてみせますわぁああ、てな感じで心に謎のポンコツ令嬢を装備しながら調理室へ移動する。

 

 

 調理場は間取り的には、食堂の隣なんだけど扉の配置がズレているので少しだけ歩く。

 

 「にゃーんにゃ(ここはうまいものがいっぱい置いてあるところにゃ)」

 

 後ろを振り返ると、しっぽを揺らめかせながら得意げに説明してる彼が居た。隊列は僕、ブライアン、セレネ姉さんと冒険娘、父さん達って感じだ。

 

 うん、君けっこうテンション高いね。なにげに嬉しいんか?嬉しいんだろうな。

 

 ・・・ういやつめ。

 

 そんなブライアンを見ながら、歩くこと数分で調理場の扉に着いた。そこで、ずずっと後方から聖剣の名がついた追い込み馬のごとき脚色(あしいろ)で、父さんがいつの間にか僕の隣にたって空いた扉の向こうへと歩き出した。

 

 「で、ここが調理場ですー。普段は自分しか使わないけど、大人数に対応できるようになってるのでご安心くださいー」

 

 「はー」「へぇー」「わぁー」

 

 色々な声が聞こえる。まあこれ家庭科室ってか料理教室の部屋だもんね。超地球的設備アルヨ。

 

 大きなテーブルに専用の水場とコンロの付いた調理台が6台。

 

 それらは、あくまで補助用だったり小規模作成用の台で、メインの調理台は壁に沿うように他の調理台の3倍くらいの大きさで作ってある。

 

 こいつはこだわりましたわ。システムキッチンはミ○ドが最強。と会社が無くなった時も、そして今も思ってる派なので大分真似てますけどね。

 

 ほんとあの人らはいい仕事してたと思うんだけどね。・・・まあ時代の流れってことで。

  

 もちろん、調理時にぶつかったりしないようにある程度のスペースも確保してあるのでかなり調理しやくなってると思う。

 

 そしてパンもピザも肉も焼けるようになってるレンガ作りの釜、何て言うんだピザ釜でいいのかな?まあそんな釜が一基。

 

 そして食材を保存する冷蔵庫と冷凍庫が1基づつ。

 

 でも、電子レンジは無理でした。電子レンジの形は知ってるけど仕組みはうっすら知ってるけど、どうやってマイクロウェーブだせばいいかわかりませんでした笑。

 

 ちなみにどこであきらめたかって言うと、水分子だけ高速振動?何Gだっけ。Wi-Fiの邪魔になるGだって辺りで考えるの止めた。ぼくに科学は向いてない。

 

 つか変なの出したら危ないのでやりません。頭にアルミホイルをジャンクションしないと出来ない作業だと思いますですはい。

 

 「ウェル、これは水場だな。この長い棒はなんだ?」

 

 「ああっ、それは蛇口っていって水が出るとこだね。棒の根元にある星型のツマミを回してみて」

 

 父さんが、おそるおそるまわしたので水がチョロチョロと出た。

 

 「「「「おおぉー」」」

 

 「水汲んできたりするのが面倒で、水が簡単に出るようにしたんだよ。楽でしょ」

 

 そう、蛇口と水道設備。これは一人で料理するようになってから、すぐに作ったものなんだよね。

 

 いちいち桶とか甕に水溜めて料理すんの面倒なので、パパっと適当につくった水道設備。

 

 屋敷の裏にある井戸から、地上にある貯水タンクへ引き上げる所までが自動。

 

 でも満杯になったら停止させるのは目視で手動なんだよね。

 

 満杯で水汲みを止める仕組みが考え付かなかった。満杯時点で浮きみたいなの付けて止水栓が出来ればとか思ったけど、なんかしっくりこなくてもう考えるの面倒だ!手動だ!って感じのこだわりの無いに一品にございます。

 

 屋敷で清掃してくれるメイドさん達には好評なので、これでいいのかなってことで改良してない。

 

 「にゃー(セレそこを空けるにゃ)」

 

 「はーい、ここでいいの?」

 

 「にゃー(そうだにゃ、そこにある魚を出すにゃ)」

 

 ちょっと考え事をしてたら、冷蔵庫から魚を出すように指示してる親分が居た。そこから出しても凍ってるとおもいますよー。

 

 「ぶらいあーん。解凍しないと食べれないよ?」

 

 「にゃーん(ウェルに任せるにゃ)」

 

 「ひゃーつめたーーーい!!」

 

 あぶなっ!素手で冷凍した魚を触ったらダメ。カチコチにしてあるから皮膚くっついちゃうよぅ。

 

 「姉さん大丈夫?手怪我しなかった?」

 

 「大丈夫だよー、これ取ってもいいの?」

 

 「んー、じゃあこれを使って1匹だけお皿にのせてくれる?」

 

 セレネ姉さんに、木で出来たトングと食器棚から出した皿を手渡ししてお願いする事にした。

 

 こういう小さな事だけどお願いするって大事なのだと個人的に思うんだよね。

 

 常識的な頼み事や願い事は信頼の証ってね。

 

 新しい家と見たこと無い設備だから興味もあるだろうし、そしてセレネ姉さんが取るのと僕が取るのでは、心証の差が大きいでしょ。

 

 結構自由に触っていいんだ、と気楽に過ごして欲しいしね。この選択肢は滞在中の気持ちのベースになる気がした。番長が活躍するギャルゲ風仮面のRPGだったら、音符マーク出てピロロロンって音がすると思うナイス選択だったわ。

 

 アホな思考脱線をしつつ、すっかり静かになった父さんに気づいて向き直ると。

 

 鍋やまな板を出して、料理をするシミュレーションらしき事をはじめている?いやこれ料理はじめてんのかな?

 

 「えっと父さん?」

 

 「ん、ああ使い勝手をだな・・・」

 

 父さんはピーラーやスライサー、そして何故かシェーカーとかを出して来て、色んな角度から眺めながら生返事をしていいる。

 

 謎の調理器具、使ってみたいよね。

 

 わかるわかる、でも後でね?とりあえず今は案内が先でお願いします。

 

 なんにせよ、自由に触って良いフラグの回収が早すぎます。姫騎士がオークの群れにつっこむシーン並みに即です。

 

 まあ、そうは言っても後は浴室の説明くらいかな?でも父さんと僕だけが男の宿泊者だから説明しないとね。

 

 「だね、今日から食事のお願いをするしね。後、案内するところは浴室位だから・・「バックスくん、また後でね?」

 

 おおっと母さんのインターセプト―ぉおお、父さんうごけなーーーーい!!

 

 と昭和少年誌のサッカー漫画みたいな実況がついちゃう勢いで母さんが被せて来たので、父さんのお料理頑張るぞ!は終了。

 

 おほほ、お父様を混乱させてしまいましたわってな具合に心に装備したポンコツお嬢様もご満悦。

 

 そして、ちょっとしょんぼりした父さんが調理器具を片付けるまでの間にブライアンにお魚を食べさせてました。

 

 せっかくセレネ姉さんがゲットした魚だからね。

 

 もちろん生ものなので食べ終わったら清浄をかけて口周りを綺麗にしておいた。

 

 過保護と言われようが良いのだ。猫が舐めて来たり近くで欠伸した時に口が臭い事件による被害者は減らすべきなのだ。

 

 そしてブライアン先生からは「にゃーん(親子そっくりにゃ)」との総括もいただけましたので下僕的には満足です。

 

 その後、釜だったり冷凍や冷蔵庫の説明を簡単にして終了。

 

 浴室の説明は蛇口と水道の説明をしてあったので、かけ湯の時にシャワーあるよって位の説明で終わった。ここはあんまり手を入れて無いしね。

 

 お風呂は、お湯が溜まって清潔であればいいのだ。

 

 「おっきー」とか「すてきね」とか聞こえが良い感想をいただいたけど、それはお風呂に対してなので気にしない。

 

 「共通で使う所はこんな感じかなぁ。なにか分からないこととかありましたー?」

 

 一応、まとめとして声をかけてみる。けど実際わからんよね。

 

 「んー、戸惑うことは多いけど実際に生活してみないと分からないわね多分」

 

 あはは、文字面だけ違う言葉を母さんから頂いたわ。親子だね。

 

 「じゃあ、後はいったん解散して自由行動かな。なんか分からない事あったら聞いてね」

 

 そんなこんなで、案内は終了。

 

 各人が談話室へ行ったり、部屋に戻ったりと行動をはじめた。

 

 まあ、ある程度わかってはいたけど。父さんがいままで見たことない位に目を輝かせて、夢中になるをみれたので良しとしましょう。

 

 そして案内が終わった僕は、父さんに拉致られて食事をつくりがてら調理道具や設備の詳細説明を遅くまでするのでしたとさ。

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