93話 いつだって君は自由だ

 家に住みだして数日間は、新しい家での生活のリズムを作るのに費やした。

 

 朝起きて、洗顔をして、鍛錬をして、朝食を作り食べる。

 

 午前中の平凡なルーチンを確立する事にすら結構手間取ってしまった。

 

 朝は屋敷内でメイドさん達が掃除をしてくれる音で目覚めるので問題ないのだけど、当然なんだけど洗顔するにも水だのタオルだのが必要で自分で用意しなければいけない。

 

 ここも大きな家だけあって敷地内に井戸があるのだけど、汲んで用意しなきゃいけなかったり、鍛錬するにも庭が造園の鑑賞がメインとなってて運動できる状態ではなかったりと借りて来た宿みたいに住み心地が良くは無いので、あちこちに細々とした手をいれる必要があったのだ。

 

 まあ、こういうのは実際に暮らしてみないとわかんないよねー。

 

 洗顔に関しては井戸まで行って、桶に水汲んで顔洗えばいいんじゃね?という結果に落ち着いた。

 

 鍛錬スペースに関しては、直前まで他の貴族の管理下にあった屋敷なので、綺麗に手入れされていたこともあって、大幅な改造はしないで剣を振って軽く動ける5m位の範囲だけを確保して良しとした。

 

 朝食に関しては、当たり前だけど材料が家になかったので買い出しに行って備蓄するとこからだった。

 

 お台所に関しては流しと作業テーブルとか棚があるだけなので、とりあえず必要最低限なものは自分で錬金で作ってしまって凌いだ。

 

 うん、こうやって当たり前の事を一個一個並べても、新たに生活基盤を作るって色々必要だよね。

 

 

 とかなんとか考えながら暮らして、屋敷での生活に慣れて来た、ある日の食後にブライアンから相談事をされた。

 

 「にゃー(ウェルお願いがあるにゃ)」

 

 「ん?珍しいね」

 

 「にゃー(この家は広いにゃ。住む家が無い仲間を呼んでもいいかにゃ?)」

 

 「んと、ブライアンの仲間って事は猫でいいんだよね?」

 

 「にゃー(当たり前にゃ)」

 

 「別にいいけど、何匹くらい?」

 

 「にゃー(いっぱいにゃ)」

 

 ブライアン、いっぱいじゃわかんないよ・・・。

 

 数を数えるって概念は無いのかな?

 

 それとも、一つ二ついっぱい!!みたいな、一定数以上は沢山!!みたいな感じなのかね。

 

 「そっか、うーん面倒をみれるならいいよ?」

 

 「にゃうー(だいじょうぶにゃ)」

 

 これさブライアンは適当だから、絶対寝るスペースとかご飯の事とか考えてないぞ。

 

 「じゃあ庭に寝床でも作っておく?」

 

 「にゃーん(まかせるにゃ)」

 

 ほらー笑。まあいいんだけどね、とりあえず寝食と遊び場のある小屋というか猫専用の別邸でも作りますかね。

 

 さすがに屋敷内でトイレとか爪研ぎされたら困るしね。

 

 「じゃあみんなが住めるお家と遊べる場所を用意しておくね」

 

 「にゃー(たすかるにゃ)」

 

 「あと、屋敷内のアチコチでおしっことかしないように教えてあげてね」

 

 「にゃ(そこは大丈夫にゃ)」

 

 即答だ、根拠が無い返事じゃないよね笑。

 

 まあブライアンの縄張りだからスプレーとかしないってことかな?

 

 「わかったよー、庭に専用のお家作るね」

 

 「にゃーん(まかせるにゃ)」

 

 ブライアンは頼むだけ頼んで食堂から出て行った。

 

 うん、なんかこういう上司いたわ。

 

 ガーッとやってーダーッとしたいから、バーッとなってギュとした感じでまとめておいてくんない?よろしくーってやつ。

 

 THEあいまい丸投げ成果だけ俺!って上司。

 

 バブル無能おじと心では呼んでたけどね。

 

 あいつら新入社員の頃から仕事しないで会社から接待受けて金貰って遊んでて、年次だけあがって役職と給料だけ高いっていうバカだからなぁ。

 

 学歴+実務経験でようやく半人前だっていうのに、その半人前にすらなってねぇもんな。

 

 うおっ心がダークサイドに侵されたわ笑。

 

 まあそのなんだ、みんながんばろうぜ!ってことで。

 

 それじゃ、猫別邸でも設計してみますか・・・。

 

 食事の片づけをして、執務室っぽい部屋に移動して書き物をはじめる事にした。

 

 ちなみに、屋敷内のメイドさんは基本はお掃除と建物維持でお願いしますってことで落ち着いた。

 

 その為、メイドさんはウロウロしてるけど、お茶を入れてくれたり世話を焼いたりして貰う事は無いのです。

 

 やっぱこっちのが気が楽だよね。庶民感覚大事。

 

 んでは、手離れが良いように紙に建物の事をまとめますかね。。。。っと。

 

 猫別邸要件定義書

 

 [概要]

 1.目的と背景

 2.建築規模

 3.適用範囲

 4.建築期間

 

 [構造要件]

 1.別邸と猫の関連性

 2.建築構成

 3.利用機材、原料、禁止機材及び原料

 

 [建築要件]

 1.猫が居住可能な匹数

 2.出入口の大きさと同時出入り数

 3.天候及び災害時の安全と耐久性

 

 [設備要件]

 1.睡眠設備に関わる要件

 2.遊戯設備に関わる要件

 3.排泄箇所に関わる要件

 4.出産及び育児に関わる要件

 5.騒音及び発情期における隔離設備に関わる要件

 

 [運用要件]

 1.定期清掃に関わる要件

 2.設備維持及び代替設備に関わる要件

 3.近隣からの苦情に関わる要件

 4.定期保守及び連絡体制に関わる要件

 

 [成果物]

 1.建築されたもの一式

 2.設備要件にて定義された設備

 3.運用時における責任体制図

 4.設計及び建築物に対する守秘及び複製禁止の許諾書

 

 

 

 かきかき・・・・もりもり・・・ねちねち・・・くどくど・・・

 かみかみ・・・・まるまる・・・こねこね・・・わふわふ・・・

 

 というわけで、建物が建てれるように要望を簡単に書き起こした。

 

 文字と図だけじゃ、分かりにくいところもあると思ったので木材と粘土を使って猫別邸や設備の模型も作ってしまった。

 

 いちいち建築業者に張り付いて、あれ作ってくれ、ここはこうしてくれ。

 

 みたいに細かい事をいうのは面倒なのだ。

 

 設備要件にまとめてキャットウォーク、キャットタワー、扉の下の猫通用口、交換式の猫トイレとかを図解して利用手順を書いておいた。

 

 これはなんでさぁ、どうやって使うんでさぁ?こんなんいるんですかい?

 

 みたいなやり取りをイチイチやりたくないのだよ。ワトスォン君。

 

 これ、猫別邸の掃除とかもあるからマイヤさんに声だけかけておくか。

 

 これで庭に建物を建てたいけどいーい?って感じでいいかな?

 

 貴族領主に気安い男ウェル8才。

 

 なんだかんだと書き連ねたり、細かい図を書いたり、模型みたいなものを用意してたら時間がかかってしまった。

 

 これで建てれると思うので、ここまでにしてご飯作って食べますかね。

 

 今日のご飯はなににしよっっかなぁ・・・・。

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