91話 感謝と責任を混同しては・・・

 屋敷内の散策と庭の確認も終わり、各部屋や設備の状況も大分把握できた。

 

 さて、これからどうしましょうかね、とりあえず引き渡してもらったし、形式だけの鍵らしきものも貰った。

 

 鍵が形式だけってのは、そりゃあ元貴族なので門があってエントランスがあるので鍵なんてあって無いようなもんだからである。

 

 それはいいとして、まずは父さんと母さんに報告なのかなぁ。

 

 僕の住んでる所が分からないとかダメよね。街内で失踪事件や、てれれれーてれれれーてーれー。

 

 んで、次に家の事を任せられる人を探したい。

 

 今はマゼッパさんやティアンヌさんをお借りしている状況だと思うので、こっちで信用出来る人を探さないといけないよね。

 

 そこらへんも含めて、父さんと母さんに報告に行きますかね。

 

 屋敷内の散策に付き添ってくれていたマゼッパさんに、一度宿屋に戻って家について報告したい旨を伝えると馬車を手配してくれるとの事なのでお願いしておいた。

 

 馬車の手配が終わるまで、少し時間が出来たので天使像の置き場について考える事にした。

 

 天使像を宿から撤去する時の僕から任されてもいるしね。

 

 天使像の置き場なぁ、、、これは決めの問題かなぁ。

 

 自分の家になった事だし、門から出入りする人も限られたしね。

 

 パッと考え付くのは、エントランスに台座を作って設置する。庭に風雨に耐えれる祠というか神殿っぽいのを作って設置する。

 

 この二つかな、どっちにしようかな。

 

 手間だの何だのは、ぶっちゃけお金と謎の魔法で解決できるし。

 

 もうこれは好みだね、えいやーで決めちゃえばいいか、うん!よしエントランスにしよ。

 

 後は配置だったり飾りだね、ここは気合いれて飾りますか。

 

 前に他の神様の像も作るなんて話しもあったし、エントランスの一角をそういうスペースにしましょ。エントランスも結構な広さがあるので、左右に像を配置するイメージでいいか。

 

 そんなこんなをツラツラと考えていると、マゼッパさんから馬車の手配が終わったとの連絡を受けたので門まで一緒に歩いていくと、門前に停まっていたのはマイヤさんとこの馬車だった。

 

 初見でイタ車かよ、なんて思ったあの豪華な馬車である。

 

 あれ?これ使っての良いの?

 

 「はい、移動の際には気兼ね無く使って下さいとマイヤ様から伝言を承っております」

 

 うーん、まあいいか。必殺深く考えて遠慮していえいえどーぞどーぞこちらこそちらこそループ回避。

 

 「わかりました。利用料とかの細かい話は、また別途にして今回は甘えちゃいますね」

 

 「それでは、こちらへどうぞ」

 

 もう筆頭メイドとしての業務が板についてるマゼッパさんの先導についていき、馬車に乗り込んで我が家まで移動。

 

 ・・・もう我が家じゃないのか。うん、実家まで移動。

 

 街内の馬車での移動は慣れたもので特筆する事は無いのだけど、街の人が領主様ことマイヤさんと間違えて道を優先してくれたり、頭を下げてくるのは少し申し訳ないです。

 

 ごめんね、中の人はウェル君なのだー。と言いたいけど、言ったら言ったでややこしいのでやめとこ。

 

 アホな事を考えている間に馬車が宿屋の前についたので、御者さんにお礼を言って、とりあえず馬車には戻って貰う事にした。父さんと母さんとの話がどれくらいかかるかわかんないしね。

 

 マゼッパさんは一緒に残るみたいだ。もうこれ僕付きのメイドさんってことなのかなぁ。

 

 まあ、細かい事はいいか。・・・なんか最近「まあいいか」が増えた気がする。

 

 気楽に好きなように生きて行こうと思うと、結構拘りを捨てちゃうものなのかもね。

 

 究極いっちゃえば、自身や親しいものに害が無ければいいんだもの。

 

 細かい事に配慮してすべてに手を伸ばして深謀遠慮な真似なんて僕には到底出来そうも無いしね。

 

 さてさて馬車から降りて状況確認がてら、あらためて宿の周りと工事の進捗を見てみる。

 

 宿の両脇の建物はすでに形を失いつつある、解体工事ってゴミや埃が大量に出るから一気に出来るもんでもないのは、この世界でも一緒か。たまに工期がとか言って土日も解体してる業者が居るけど、まじ迷惑。あんたの工期なんかしらん、無計画のツケを近隣の住民の安眠妨害で払うとかわけわからん。

 

 なぞの重みのある愚痴を言ってみた所で、まあ順調っぽいね。後数か月で宿屋側も工事に入るって感じかもね。

 

 改築工事は両隣の建物の解体を先にして、今の宿屋と結合できる建物に建て替える方向で進めているみたいなので、宿屋自体には今の所大きな手入れも無く通常営業をしている。

 

 ちょい前にあった冒険者娘さん達みたいに定宿にしていた人の一部は、これを機会に街中に部屋を借りたり建てたりするらしい。

 

 工事の状況もなんとなくわかったので、宿屋に入って父さんと母さんとお話しでもしますかね。

 

 宿の扉は空いていたので、そのまま中に入ると。あらら人が溢れちゃってる。

 

 宿に来ている人達は街の人やうっすら顔を見たことがある人ばっかりなので、僕がここの子供という事をわかってくれているのだろう。

 

 すんなりと奥のフリースペースへと通してくれた。

 

 うん、フリースペースにはテーブルと机がならべられて、さながら社員食堂や学食のような様相に変わっていた。

 

 もうとっくに昼の時間は過ぎているのだけど、まだまだ捌ききれなくて食事を取っている人がいる。

 配膳してる母さんを見つけたタイミングで母さんがニヤリとあんまりしない顔で笑ってきたので、手を振ってみた。

 

 「ウェルくぅーーーん、おひま?」

 

 甘い声である、ずるかわいいのである。似非エステで若々しいもんだから、何人かの客がデレデレしてますぜ母さん。

 

 「うん、手は空いてるよ。家の話をしようと思ったけど、これそれどころじゃないね」

 

 「マゼッパさん、これ手伝おうと思ってるんですが、マゼッパさんは一度戻ります?」

 

 「いいえ、ウェル様と一緒にお手伝いいたします。私も天使像の護衛で何度かこちらの職務についておりますので大丈夫です」

 

 うっ主従っぽくなったから少し口調硬くなったね。

 

 「母さん、マゼッパさんも含めて落ち着くまで手伝うよ。その後にお家の報告させてね」

 

 「わかったわ、じゃあウェル君はお父さんのお手伝いにいってくれる?マゼッパさんはこっちで」

 

 そこから、怒涛の3時間を過ごしてスープや材料が切れてオーダーストップが出るまで頑張った。

 

 疲れ切って、フリースペースのテーブルに突っ伏してるメンバーにセレネ姉さんがお茶を持って来てくれた。 はぁ・・・セレかわ。セレやさ。セレ天。ん?さいごのだけ天ぷら屋さんにありそうな感じだな。

 

 「セレネねえさんありがとう」

 

 「ウェル君こそありがとー。もっとお手伝いにきてもいいのよー」

 

 おー、なんかちょっと大人なセリフを言うようになったじゃん。接客と人の扱いを覚えた小悪魔ギャルとなったか。

 

 まあ、そんな感じでみんな集まったので家の様子や場所や広さ等を伝えて置いた。

 

 さららさららと言って驚かないようにする電撃作戦。

 

 ・・・案の定、ちょっと間を置いてから。父さんと母さんに色々と質問された。

 

 まあ答えなんてないけど、マイヤさんのご紹介してたくれた案件で、ここに居るマゼッパさんが面倒をみてくれるますよと。

 

 金銭的にも完済済で既存で住んでる人は納得済で別荘を一つ手放した感覚なので問題は起きない事やすでにブライアンが先行で住み着いている事等をつらつらとお伝えした。

 

 そして、ここからが本題なんだけど、、、

 

 「父さんと母さんと姉さんは宿の改修がある間は、どっかの宿にいくんでしょ?いくらここに負担が少ない工事とは言え、改修が入るわけだから仕事にもならないだろうし」

 

 「そうねぇ、基本的には裏の自宅でやすみつつ工事の進捗確認のつもりだったけどね」

 

 「ん、そうだな。宿の仕事はなくなるからな」

 

 「じゃあ、せっかくだからウチに泊まりに来ちゃえばいいんじゃない?どうせいつかは確認に来たかっただろうし」

 

 「んーんぅ?ウェル君の新しいお家が見れるの!いきたーい!」

 

 おおっめずらしくセレネ姉さんがノリノリである。女の子って結構お家すきよね。

 

 「うーん、そうね。そうしようかしら、バックス君はどう?」

 

 「ん、いいと思うぞ」

 

 「僕個人的しては定宿にしていたメンバーで次が決まってない人や一時的な人も受け入れてもいいと思ってるんだけど」

 

 「それに関しては、父さんと母さんに任せていい?正直元貴族家になるから宿代って意味だと格あがるからさ、じっくり検討して使うなら提供は可能だよって覚えておいてね」

 

 「うん、わかったわ。ウェル君ありがとうね」

 「ん、なにからなにまですまんな」

 「ウェル君、ありあとー」どーんと姉さんのハグつきである、ほのかにほのかなほのかがちょっと照れるけど、血縁があるの深入りしないで意味深な言葉で核心には迫りません。

 

 

 その後、ぴょいぴょいと話題を飛ばしながら色々な事を聞いた。

 

 天使さんズの像が無くなって、悲嘆にくれる僕の名前まちがう冒険者さん、ああアミさんに下僕扱いされてたよね。クセになったのかな笑。

 

 冒険3人娘の寡黙っこが元気がない事。うーん好かれているんだろうけど、何ともできないよう。そのうちまた一緒に狩りもするしかないよね。

 

 怪しい目で天使像を見ていた、商人ギルド系の人が来なくなったとか、なーんか聖女一派の流れを汲む話ならティルトウ○イトの刑かなぁ。そうじゃないなら、商売するには通すべき筋あんだろうって話し、初手で筋通しを間違えたので目論見は失敗だよーって感じかな。

 

 ちょっとフラグ色々ありそうだな、けどまあ、なるようになるよね。

 

 とりあえず、ブライアンは屋敷で良くしてくれるメイドさんを見つけたので、そのメイドさんにべったりです。時々こっちに帰って来るそうです。と伝えておいた。


もしかしたら銀猫→ブライアン→面倒みてた猫と引継ぎがあるのかもしれないね。

 

 家での諸々の情報共有がおわったので、夕飯のラッシュが来る前にそろそろ帰る事にする。

 

 もうね、独立したのでここではなく屋敷に帰るのだ。

 

 マゼッパさんが先ほど雑談に移った頃合いを見て馬車を手配してくれていたので、それを待って帰宅した。

 

 とりあえず、屋敷の把握と天使像の配置計画、家族への連絡も済んだので今日はここまで!

 

 はじめてのお風呂!はじめての個室での睡眠!と色々堪能するぞー。おー。

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