85話 アイデンティフィケーションディビジョン

 日課の鍛錬後に昼食を食べていると、お店の改装案が大分まとまった事を母さんに教えて貰った。

 

 ここ数日間で商人ギルドの人と、父さん母さんは仕事の合間を縫って色々と打合せをしていたもんな。

 

 僕は思うところもあって、話し合いには参加しないようにしていたので教えてもらった形になる。

 

 母さん曰く、両隣の敷地と建物を買い取って大きくするらしい。

 

 結構大きな店舗になるのかな?って思ったら、その敷地内にはロトルさんのお店も建てるとのこと、いつの間にか改装話に乗り入れているあたり抜け目無いなって感じ。

 

 両隣は、片方が民家で片方が雑貨で子供の頃から良くして貰っていたから、なんとなく寂しいような申し訳ないような気分だけど円満な話しみたいなので安心。

 

 雑貨屋さんの方はロトルさんのお店に移動するらしい、なんというか合理的な玉突きだ。

 

 ・・・玉突きかぁ、ネクストを考えて撞きなさいってビリヤードの先生に教わった時は面白かったな、と関係ない事を思い出した。

 

 そう教わって玉の動くイメージを先生と相談してから、ちょっとだけ押し玉気味に撞いたらコーナーポケットに入った的玉を追いかけて手玉が入って、二人で笑った記憶。

 

 手玉と的玉とコーナーが一直線じゃないから、押し玉で左側に逃げる感じで出すイメージだったのになぁ。

 

 あのビリヤードの先生おもしろかわいかったよなぁ。

 

 構えた時に揺れるお乳様を思い出して・・・ぎたるね。滾るじゃなくてぎたる笑。

 

 って・・・もうビリヤードは出来ないからいいか笑。

 

 って思わず脱線したけど、そうそう隣だよね。隣。

 

 雑貨屋さんの逆隣にある民家は大きな通り沿いってこともあって、騒々しいのが少し気になっていたらしく渡りに船ってことで、売買した金額で通りから離れた場所に家を買うんだってさ。

 

 最近は、ウチも煩かっただろうしね。ごめんね安眠と平和を妨害しちゃって。

 

 まあ、てな具合に3軒分のスペースを使って2軒の店舗を建てる、もしくは改装するらしいので結構大型のお店になるんだと思う。

 

 旅館とかホテルみたいにして、ロトルさんの店舗はお土産コーナーみたいなロビー内店舗にしちゃえばいいじゃんとか思うけど、将来に渡って僕が住むとこじゃないし、口出しは控えておいた。

 

 やっぱ住んだり働いたりする人が納得しないとね。

 

 後々で不満も募ってくるだろうしね。

 

 そんなこんなで宿屋さん大規模改修の話は大筋でまとまったらしい。

 

 そうなるといよいよ、僕は身の振り方考えないとなぁ、ってことで家を買うことに決めた。

 

 機を見て敏を知る?善は急げ?っていうじゃない?

 

 ・・・仏教だっけか、善を思いついてもすぐ悪に染まる、本能に近い衝動は悪に染まりやすいとか何とかだったかな、まあ知らんけど。

 

 まあ家を買うのが善か?っていわれたら謎だけどね。

 

 お店を改装するにあたって、天使さんズの像を移動したりしなきゃいけなかったし、人の出入りが増えると予期せぬ面倒事が起きそうな気もするので独立した方がいいと思ったのだ。

 

 8才の子が家を買うって訳わからん話しなので、父さんも母さんも渋い顔をしていたけど。

 

 僕が家に居るのを想定して居住エリアを改築するのは無駄が出るだの、僕には秘密が多いだの、やがて家を出ていくのだから、いっそ居ないものと想定したほうが楽だよとか色々説明して納得してもらった。


 ずっと居てもいいのに的な事を言われはしたが、そういう訳にも行かないでしょ。

 

 セレネ姉さんはやがて婿を取って家を継いでいくわけだしね。

 

 長子が資産全取りの文化なら、僕は邪魔になると思うんだよね。

 

 セレネ姉さんには、余計な火種の無い、幸せな家庭を築いていただきたいのですよ。

 

 あとは、ブライアンと話し会いたいんだよね。

 

 ブライアンは王都から帰って来てから、外出してる事が多くなって中々捕まらない。

 

 夜には家に帰って来て寝てるんだけど、 セレネ姉さんと一緒に寝てるし朝早くに出掛けちゃう。

 

 先方さんがつかまらなくてーなんて昭和のダメ営業みたいな事を言いたくなっちゃう。

 

 まあ、そのうちタイミングみて話し会うか。

 

 ってなわけで、家を買うことに決めたんだけど。さてどうしたもんか、まあしばらくはこの街で過ごそうかなと思っては居るけど、何れは世界を歩いてみたいし暫定的なというか8才から15才くらいまで住む家って感じかなぁ。

 

 7年かぁ、まあ結構な期間ではあるね。

 

 セキュリティ高めで家族とも近くてって・・・んー、物件関係は、色々考えてもすべてを満たす事なんて出来ないってのが世の常だよなぁ、緑のアイツもきっといい物件は出せない筈。

 

 まあ、この街の拠点くらいの気持ちで家を買うことにしましょう。

 

 さしあたっては、現金の確保だね。まだ現金はあるけど、お家買う程は無いからマイヤさんところに行って金銀の換金が出来るか相談してみよう。。

 

 後で、我が家に天使像の護衛も兼ねて来てくれているメイドさんに、マイヤさんの都合伺いをお願いしておこう、簡単な要件と急ぎではなくて都合を合せる旨だけ伝えればいいかな。

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